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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

巷の灯りに彩られて

2005年10月30日(Sun) 19:50:00

シティホテルから見おろす、都会の巷。
路上にあふれかえる車のヘッドライトが幾重にも重なって、
それは一見幻想的ですらある。
それらひとつひとつのなかに、数個の生命が、そしてそれと同数の人間的な日常が宿っているなどということのほうが、
かえって現実味がないようにすら思える。

しかしそれらの光芒がわずかに照らし出すビルの壁面は暗く冷たく、
やはりそのなかに人間のもつはずの暖かい日常が埋没しているとはなかなか思えない。
まりあの住んでいる街にも、こういうオフィス街はなくもない。
しかし、このような無機質なばかりのコンクリートの塊がこれほど果てしもなくつづくようなことはない。
まさに、コンクリートの檻、といえるこの光景。
東京沙漠。
古ぼけた流行歌のタイトルは、いまだに生命力をなくしていない。

設備の整った、快適なホテルの一室。
しかし、煌々と部屋の隅々にまで行き届くライトの明るさも、いまはそらぞらしいばかりである。
きょうのクライアントもまた、冷静に、的確に、ビジネスの話をすすめていき、
さいごにそらぞらしい儀礼的な挨拶をして、あのビルの巷へと消えていった。
それらのはてのどこかには、暖かい家庭なるものが待っているのだろうか?

ふぅ。
息が詰まるような絶景から、まりあは逃れるように目を逸らす。
かちり。
テレビのスイッチを入れる。
家でいつも目にしているおなじみの番組が、
いつもより色あせて液晶のうえを踊っている。
気乗りのしない展開に耐え切れず、ぱちぃん、とスイッチを切ったとき―――。
同時にすべての灯りが消えていた。

ぶぅん・・・ぱぁん、ぱぁん。
遠鳴りのように聞える都会の喧騒だけに支配された部屋。
しばらくぼう然と佇んだまりあはちょっとだけ、現実に引き戻された。
―――ちょっとぉ、なんなわけ?せっかく奮発していいお部屋とったつもりなのにい!
憤然となって、フロントに苦情のひとつもいってやろうと受話器を取ろうとすると、
コツコツ。
誰かが扉をノックした。
「申し訳ありません。お客様・・・」
おずおずと切り出す男の声は、どうやらホテルの従業員らしい。
「ご迷惑をおかけいたします。停電のようでございます。ちょっと中を点検させていただきたいのですが」
なんの疑念もなくあけた扉の向こう側には―――。
そう、あの黒衣の男がにんまりとした笑みを浮かべていた。
「ルームサービスはいかがかね?お嬢さん」

とっさに両手で口をふさいだまりあ。
「どっ!どうしてここへ?」
そんなまりあの狼狽を完全に無視して、吸血鬼は部屋をいちぶしじゅう、見回している。
「どーやら停電、このお部屋だけのようだね。アンラッキーなまりあちゃん」
ふふん、とそんなふうにうそぶくと、まりあのほうを振り返り、
嘲るように鼻を鳴らして、
「時間と空間の隔たりは、私にはあまり意味のないものなのだよ、まりあくん」
そういって、まだスーツを着替えていないまりあの、頭のてっぺんから足のつま先まで、ちろり、ちろりと目線を這わせてゆく。
そうしてあごに手をやって、ぐいっと顔を持ち上げると。
「まだまだきみは、お勉強不足のようだね」
そういって。
冷たく研ぎ澄まされた牙をむき出すと。
ちくり。
まりあのうなじに突き刺した。
「う、ううんっ・・・」
まりあは甘い微痛に眉を引きつらせて。
それでも自分の体から男の体へと移動してゆく血液の流れをとどめることができずにいた。
ちゅぷっ。
ちょっといやらしい音をたてて。
吸血鬼の牙が、引き抜かれる。
快楽とともに下肢を冒す男性器が抜き取られるときのような快感を伴って、
わずかに散らされた血潮が、白のブラウスにぴゅっと撥ねた。
吸血鬼はまりあの髪の毛をまさぐるようにしてかき上げて。
うなじにつけた傷口に、満足そうに見ほれている。
「よしよし。いい子だ。そのまんま、大人しくしているんだぜ?」
かれはそういうと、いつものように足許にかがみ込んでゆく。
「ま、待って・・・」
まりあはとっさに、部屋のすみへと飛びすさる。
そうすると、おもむろにストッキングを脱ぎ始めた。
「おやおや。覚悟のいいことだ。さっそく、お嫁入りのご用意かね?」
「ひどいこと、いわないで」
まりあはキッとにらみ返して。
こんどは一転、挑発的なポーズを取って、
脱ぎ替えた真新しいストッキングの脚を見せびらかした。
薄闇のなかに射し込んでくる巷の灯りを反射して。
すらりとした脚の輪郭を、濡れるような光沢が際立てていた。
「汚いの、嫌いだったわよね」
そういって、まりあはちょっとだけ怖がるようにいやいやをして。
キュッと目を閉じていた。
月夜の晩の舞姫の舞いに、吸血鬼はとても満足したようだ。

じゅうたんのうえ、押し倒したまりあの足許で。
吸血鬼はイヤらしく、
くちゅっ。
ぬるり。
唾液にたっぷりと濡れたべろをふくらはぎに這わせながら。
―――覚悟のいいのだけは、どうやら当たっているようだね。
静かにそう、呟いていた。
照明の消えたまま。
色とりどりのネオンやライトがオーバーラップするホテルの一室。
都会の装いはもうしどけなく乱されて。
いつも家の近所の草むらのなかでそうされるように、ふしだらに肌を露出させていた。
ふくらはぎの周りを束縛していたストッキングがちりちりほぐれていって、疲れた脚から緊張感が去ってゆく。
まりあは陶然として、傷口のうえを踊る舌と、唇の奏でる絶妙なハーモニーに酔い痴れる。
巷の喧騒は遠かった。
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