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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

気むずかしい従兄

2006年12月21日(Thu) 07:50:39

このまえの法事でのことだった。
妻も母も、奥まった部屋に誘い込まれて。
黒のストッキングに染めた脚を、畳に伸べて。
影のようなあの男に、のしかかられていった。

儀式から開放されたあとの、うちとけたにぎわいから。
身内同士のささやきが、耳に届いてくる。
  シゲルさんとこの、大奥様と若奥様よ。
  えっ?若奥様まで?
  しーーーっ。
  だいじょうぶ。彼、公認だから。
  案外ねぇ。あのまじめなシゲルさんが。
案外ね。
言葉のなかにこめられた無言の賞賛が、耳の奥と胸の奥とを同時にくすぐる。
独り苦りきっているのは、従兄。
気むずかしいことで有名で。
きょうも独り、杯を口にしている。
「いいのか?あんなことさせておいて」
説教めいたことを言うものだから。
誰もなかなか、彼に近づこうとはしないのだが。
ほんとうは、根はいい男なのだ。
頑ななプライドに塗り固めた硬質な面差しの裡に、気の優しいもろさを隠した男。
「おれだったら、ぶん殴っているぜ」
少し、酔ったね?
囁くわたしに。
まぁ・・・ね。
都会の金融機関で働く、エリートの彼。
悩みもひと一倍、深いのだろう。
・・・と、思っていると。
視界の縁に映ったのは。
ふすまを開けてでてきた妻と、彼の嫁。
都会育ちの洗練された雰囲気を持つ従兄の嫁はまだ若く、ほんのお嬢さんに見える。
妻は内股になった腰を崩すように、畳にじかに黒ストッキングの膝をついて、
従兄の嫁は、隣に寄り添うように、くっついて座る。
顔見合わせて、なにやらひそひそと、内緒話をしているようだ。
従兄は気づかないのか、見ないふりをしているのか。
酒量にまかせて、やたら杯をあおりつづけている。

う・ふ・ふ♪
母と妻。三人連れ立った帰り道。
どお?似合う?
スッと差し出す脚には、黒のストッキング。
お気づきかしら。
破かれちゃったから・・・履き替えたんですよ。
言われなくたって、わかっている。
家を出るときは、艶ひとつないじみな装いだった。
剥ぎ堕とされてしまったあとに、とってかわっているのは。
ぎらりと光る、ひとすじの光沢。
脛からスカートの中にまで、入り込んでいる。
「帰り道に相応しい装いだ」
ぶすっと応えると。
ふふふ・・・とくすぐったそうに笑みを交わし合う、女ふたり。
お父さんも、お喜びになるわぁ。
母まで小娘のように。
嫁とおそろいのテカるストッキングに、足許をウキウキとさせている。
がんらい貞淑な母であり、妻なのだが。
ヤツの手にかかると、こうも人がかわったように。
かんたんに娼婦に堕ちて、はしたなく振る舞ってしまう。
魔法をかけられちゃったみたいだね。
仕方なく、応えるわたし。
お気づきかしら。
妻がもういちど、囁きかける。
絵美さん・・・のこと。
口にしたのは、あの気むずかしい従兄の嫁の名前。
デキちゃってるんだって~。彼と♪
えっ。
吃驚した。本当に。
だって。あたしが部屋から出てきたら。訊かれちゃったの。
今夜、お約束したでしょうって。
真っ昼間に女を襲うと。
余韻を愉しみたいらしくって。
ヤツはたいがい、夜のお誘いも口にする。
行っておいでよ。おれはてきとうにするから。
いつものように、寛大な夫ぶりを示すと。
それはいいんだけど・・・
妻はクスリ、と笑いながら。
今夜はね。あのひとに譲ったの。
だって明日は、東京に帰らなくっちゃいけないんだもの。
ええっ?
あの従兄といっしょにいるのに、か?
貴方はご主人を連れ出して。
妻がそっと囁くと。
そう、そう・・・。
母までもが、面白そうに相槌を打ってくる。

こんなに遅く、飲み足りないのか?
従兄はふしぎそうに、わたしを見る。
ふたり差し向かいになった部屋は。
ほんとうは都会の夫婦の泊まり宿になるはずだった和室。
いつでも敷けるようにたたまれた布団が、
泊り客の不在を告げている。
かみさん同士、いまごろ世間話かな。
そらとぼけるわたしに。
ぜんぶ・・・知っているんだろ?
従兄はいがいなことを口にする。
「プライド高き、マゾヒスト」
ひと事のように、うそぶくと。
どうすればこういう感情が入り込むのか、わからないな。
誰にもいうなよ。
お前みたいにあっけらかんと振る舞うには、まだ修行が足りないんだ。
恥をかきたく、ないんでね。
わたしも、くすっと笑いかける。
わかるよ。そのうち、慣れるから。
そんなものかな。最初はびっくり、したんだぜ。
そりゃそうだろ。よく、許したね。
まるで・・・催眠術にかけられちゃったみたいでね。
素質、あったんだよ。合わないやつには合わないって。ヤツ、よく言っているから。
ふーん。
納得したような彼。
似たもの同士、ってことだね。
女房同士で、スケジュール調整していやがるの。
わかっていたけど、留められない・・・
ははは・・・
従兄ははじめて、あけっぴろげに笑った。
いまごろふたり並べられて・・・
いいさしたあとを、ついでやる。
不貞を重ねているのさ。
そうだね。
愉しい・・・だろう?
お前も、な。
じょじょに口がほぐれてくるのは、酒のせいばかりではないようだ。

腹を灼く 焼酎苦き 夜更けて 誰が腕のなか 妻は恥じらう


あとがき
12月10日付「身内の囁き」のつづきです
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