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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

寝ずの番

2006年12月27日(Wed) 06:32:11

誰かが夜、訪れている。
寝静まった、わが家の寝室を。
そうして、家族のひとりずつを・・・
寄り添うように、影を重ねていって。
無慈悲な牙を、皮膚ににじませて。
冷酷なほど、たっぷりと。
肌の下をめぐる暖かい血潮を啜り取っている。

妻も。息子も。そして、娘も・・・
みな、気づいていないのか?
うなじに、ふたつ。綺麗に並んだ黒いあざ。
夜の来訪者が残していった、これ見よがしな痕跡。
顔はふだんよりちょっぴり蒼ざめていて。
それでもどこかウキウキと、嬉しそうに声が上ずっている。
夕べの余韻を、やどすように・・・
けれどもみないちように、かぶりを振って。
吸血鬼?まさか・・・お父さんの思い過ごしですよ。
申し合わせたように、おなじことを口にする。

ごとり・・・ごとり・・・
今夜も廊下の向こうから。
異形のものが足音を忍ばせる。
迫りくる影の妖しさを。どれほど訴えても。
体内をめぐる血液を喪うことが、どれほど危険であるかと囁いても。
家族のだれもが、耳を貸さない。
さぁ、お父さん。きっと、疲れているんですよ。もう寝みましょう。
わたしだけを早く、寝巻きに着替えさせて。
ほとんど押しやるようにして、ひとり寝室に閉じ込めてしまう。
いけませんよ。これから始まる宴を、邪魔したりしては。
そう、言わんばかりにして。

寝ないで・・・待つんだ。
そしてやつの正体を、あばいてやるのだ。
家族の生き血を吸われて・・・一家の長が黙っているわけにはいかない。
閉ざされた闇のなか。
目を凝らし、耳をそばだてて。
妖しの影の来訪を、見逃すまい、聞き逃すまいとして。
けれどもすべては、無駄な努力。
寝酒に、眠り薬でも仕込まれているのか。
そう思えるほどに、心地よい眠りに・・・今夜もあえなく屈服してゆく。

あら。お早いのですね。
朝日が斜めに差し込む彼方から。
豊かな黒髪を両肩に流し、清らかな笑みをたたえているのは。
息子の婚約者である美津恵さん。
齢は二十をすこし、過ぎただろうか。
年頃のお嬢さんというのはそういうものなのか、
透き通る肌は日に日にうるおいを増していて。
会うごとに、さわやかな色気を含むようだ。
お見えになっていたのですか?
えぇ・・・
ちょっと俯いたうなじのあたりが目に入って。
ぎくりとした。
彼女も、痕を持っている・・・

お許しを戴きたいのですが。
息子は行儀よく、態度を改めて。
美津恵さん、今夜は泊まっていきたい・・・というのです。
おや。向こうのご両親は、よろしいのかな?
えぇ、了解を戴きました。
あ、もちろん。不埒な下心は、なしですよ。
息子はおどけたように、くすっと笑う。
花嫁を処女のまま迎え入れたい。
昔から、そんなことを言うほどに。
大人になっても、純なものをこめている息子だが。
今夜もはやく、寝んでくださいよ。
美津恵さんに、ヘンなことを聞かせたくありませんからね。
こういときだけは、説教口調にかわっている。
いいのか?おまえの未来の花嫁まで、処女の生き血を啜られてしまうのだぞ・・・?

今夜こそ、寝るまい。今夜こそ・・・
息子の美津恵さんが、泊まっているのだ。
それも、いつの間にかあんな痕を滲ませて。
やつは息子の嫁にまで、毒牙を伸ばしていたのだ。
今夜こそ、化けの皮をはいでやる。
一家を、守るのだ・・・
うとうとと頭を上下させながら。
ガウンを着たまま、椅子のうえ・・・とうとうこらえがたく、眠りに落ちてしまっていた。

我に返って、見回すと。
あたりはいちめんの、闇。
だれが電気を消したのだろう?
塗りつぶしたような、見通しのなさに。
無重力状態におちたような頼りなさを覚える。
喉がからからに、渇いていた。
水・・・とおもい、たちあがる。
いや・・・思い直したのは、なぜだろう?
足を向けたのは、台所とは正反対の、家族の寝室。

むしょうに、ふらふらとしている。制御がまるで、きかなかった。
すこし、飲みすぎたのだろうか?
眩暈が頭の半分をおおい、手探りの闇はいよいよ深い。
目のまえに薄っすら白く浮ぶものがあった。
白いものは、ゆるやかに息づいていた。
ベッドのうえ、優雅に身を横たえているのは。
まっ白に透けるネグリジェに縁どられた、女の胸元。
それと気づくまでに、時を要した。
頭が、くらくらする。喉も・・・からからだ。
あぁ・・・
横たわる白い影に、救われたように、すり寄っていって。
いつか、影を重ねている。
解いた黒髪を、かきのけて。
細い両肩を、つかまえて。
逃げられないように、固定する。
息づく皮膚が昂ぶるように、ひときわその身をのけぞらせたとき。
我を忘れて、唇を添わせていった。
柔らかな皮膚を破る感覚が、どきどきするほど心地よくて。
あふれ出るジューシィなほとびを、夢中になって口にしていた。
それこそ、年頃のお嬢さんのまえでは恥ずかしいほど行儀悪く、
ごくごくと、喉を鳴らして。

お気づきになってしまったのですね?
傍らにひかえているのは、息子。
だいじょうぶ。この家の人間はみな、お父さんの身内ですから。
どちらが父?どちらが子供?
そんな錯覚をおぼえるほどに、息子は落ち着き払っていて。
親愛なる吸血鬼殿に、あらためてお引き合わせしましょう。
ボクの未来の花嫁です。
純潔な血は、お口に合いますでしょう?
いつもながらの、女の子のように優しい口調が。いつになく、心に沁みる。
脚も、見てやって下さい。お父さんのために彼女、わざわざきれいに透けるやつを脚に通してくれたのですよ。
むぞうさに剥いだ寝具から、豊かな肢体をあらわにしていった。

いがいなくらいの肉づきに。はしたなくもごくり・・・と生唾を呑み込んでいた。
息子はくすくす笑いながらわたしのそうした所作を窺っていて。
さ・・・どうぞ。彼女も、先方のご両親も、心得ていますから。
生硬な肌に、うわぐすりのようにいきわたったうるおいを。
じかに、唇に感じながら。彼女の若さを味わっていた。
太ももの周り、オブラアトのように包む薄手のナイロンを、ぱりぱりと裂き散らしてしまうほど。
ボクのときは、意識がなかったようですね。
揶揄する息子の足許で。男にしては薄すぎる靴下が、縦にあざやかに伝線していた。

だいじょうぶ。つぎは母さんかな?それとも、さおりの番かな?
少しずつなら、身体にさわらないから・・・って。
ふたりとも嬉しそうに、お父さんの訪れを待っているのですよ。
ベッドに横たわっていた眠れる美女は。
長い髪をさらりと流して、優雅な会釈を、ゆったりとかえしてきて。
夢見るようにうっとりとして。
柔らかい指でゆるやかに、うなじのあたりを撫でている。


あとがき
守ろうとしていたはずが。かばわれていた。
そんな御経験、ありませんか・・・? ^^
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コメント

こんにちは。こちらでのコメントは初めてですね。
太陽です。
ちょこちょこ拝見させていただいてたのですが、どこにどうコメント書いてよいやらわからず…。
ただただアップの早さに驚きです!
まだほんの一部しか読んでませんが、吸血鬼とストッキングの話好きです(笑)
by 太陽
URL
2006-12-27 水 13:28:26
編集
>太陽さま
いらっしゃいませ♪
カキコ、とっても嬉しいです♪♪♪
特にこのお話を狙ってくださるとは・・・こういうどんでん返し、好きなのです。
だれが家族の血を吸ってやがるんだと思ったら、じつは自分だった。って。
こんなふうにストーリ-性のあるやつと。感覚おんりぃで書き散らしてあるやつとあるんですが。
どちらがお好きですか?

あっぷは、やたらと多いですね。ここ。^^;
ストレス解消に?ほとんど気分で描いているのです。
ぜんぶ読もうなんて考えると、目が回りますので、
目をつぶって。ぱっと開いて。出てきたお話をさらりとお読みになるのも一興。(かな?)
お忙しい方むけに・・・ってわけじゃないけど、ほとんどすべてが読み切りですので。^^
五分もあれば・・・さっと読めます。(五分はムリかな?)
ふるーいお話にカキコをいただいても・・・こちらからはすぐに拝見できます。
カキコがあると無条件にヨロコブ習性をもっておりますので。
餌はどんどん、与えましょう。^^
by 柏木
URL
2006-12-27 水 23:01:49
編集
どんでん返し系の話好きですね。
実はそうだったのか!とか、やっぱりなぁ~とか。
このお話では息子の冷静な目にくわえ、足下の伝線…というのが面白かったです。(面白くて良いのか?)
by 太陽
URL
2006-12-28 木 13:18:24
編集
>太陽さま
わー!またカキコもらっちゃった♪
>どんでん返し
お話つくるときに、ちょっぴりひねりを加えますので。
適度に時間と心のゆとりがあるときに描くのです。
ちょっと思いついたあたりでは、
昨年9月19日付「教授の婿」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-49.html

ちょっと脱力系ですが昨年9月21日付「物狂いした男の話」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-170.html

あたりがそうかな?^^

>足下の伝線
冷静な対応とふしだらに破けた靴下とのアンバランスな感じが、なかなかいいでしょ?^^
(どういう表現だろう?)
一見頼りないお父さんが主人公なのですが。
舞台回しはあきらかに、息子。
薄手の紳士用ハイソックスについては12月18日付「紳士もののハイソックスについて」を御覧くださいね。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-683.html
by 柏木
URL
2006-12-29 金 10:00:33
編集

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