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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ローテーション? 2

2006年01月05日(Thu) 07:33:00

蛭田が逢引をするときに、しばしば好んで安っぽいラブホテルを好むのだと耳にしたのは、ほかならぬ妻の瑞枝からだった。
「蛭田くんてねぇ。いっつも安ホテルなのよぉ。あたしを誘うとき。
あれって軽く見られてるのかなぁ」
吸血儀式の催眠状態に陥っているときの、おぼろげな記憶だったが。
そのときに、妻はたしかにそういった。
―――男として、どう思う?
あのとき。まじめにそう問いかけてくるような瑞枝の頬は冷たいまでに白かった。

―――んー。あのムードって、好きなんだよね。現実から違うところに行くような感じがしてね。 一流ホテル?旅行じゃないんだし。
それとなく訊きただしたときに、ヤツはたしかにそういった。
好みの違い・・・
それだけのこと。ヤツは安宿を。そしてベッドの傍らでいま自分と抱き合っているこの女は一流ホテルを。逢瀬の場として好むだけ。
そういう瑞枝は、こぎれいなシティホテルを好んでいた。
気の利いたインテリアと明るい照明のある真新しい部屋に通されて、得意そうに周囲を見回す瑞枝。
そんな彼女はいまごろ蛭田のために、ばっちりとおめかししているはず。
いつものあの従順な嫁の顔をして。
どんなふうにもっともらしく、姑に言いつくろって家を出たのだろうか。
行き先は・・・自分の好みとちがった、安っぽいラブホテル。

ばか律儀にも、寝物語におしえてやった蛭田の趣味。
―――あいつの好みみたいだぜ?女とはわざわざ安ホテルで遊ぶんだって。
オレの腕の中、妻の瑞枝は白い華奢な身体を寒そうにすくめながら、じいっと黙って話を聞いている。
唐突に切り出したのに。
あのときの答えだと妻ははっきり認識しているようなふうだった。
同期のあいつ。
いつもしんけんなのに恐ろしくぶきっちょで。とんまな失敗ばかり重ねている。
決して莫迦ではない。おまけに気配りや心遣いをするタイプでさえある。
あれこれ苦心して。周りがうまくいくように、場が和むようにとない知恵しぼって。
そのあげく、いつもずっこけた結論ばかりひっかぶっている男。
そんなあいつが憎めなくって。いつか、誰知る人もないほどの心のなかのことまでも話す相手に選ぶようになって。
いまでは最愛の妻さえも、たまに見て見ぬフリをして逢わせてやっている。
虫も殺さないような顔をして、すでにいくたりもの男と結ばれていた妻。
―――お前をくっつけておけば、浮気防止になりそうだな。
揶揄するようなオレの口調に
―――まるで防虫剤じゃん。
と、肩をすぼめたあいつ。
ヤツと奈津子のなかを知りながら、つい魅かれるようにアポイントを取ってしまったのはなぜか気がひける。
お互い様のはずなんだがな。むしろそれ以上か。
オレの場合は、もらったばかりの妻なのだし。
ヤツと奈津子は、どこまでの付き合いか分からないほどの関係なのだし。
そんなはずなのにどうしてオレはこうも、後ろめたい気分になるのだろう。
同僚とつきあっている女を抱いたことくらい、ほかにいくらもあるはずなんだけどな・・・
自分のお人よしを自分で嗤(わら)いながら、間々田はふたたび湧き上がってきた衝動のままに、傍らの女を逞しい猿臂のなかに巻き込んでゆく。

見るからにデラックスな、貴族の臥所のような部屋のなか。
オレは瑞枝に合わせ、瑞枝は蛭田に合わせ、蛭田はこの女に、好みを合わせている。
やっぱりこいつは、女王様なんだな・・・
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