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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

保険の先生

2006年02月02日(Thu) 07:32:18

保健室の郁子先生は、若くてきれいで、そしていつも優しい。
いつも草色のベストの上から白衣を羽織っていて、
看護婦さんみたいに白のストッキングを履いている。
「まぁ、Kクン、また貧血なの?」
授業中具合が悪くなったボクがたずねてゆくと、
いつも優しい笑顔で振り向いてくれる。
だれもいない廊下を一人で歩く孤独感は、病弱な子供にしかわからない独特の寂しさ。
そんな寂しささえも笑顔ひとつで癒してくれてしまう。

ボクをベッドに寝かせると先生は大きな瞳でのぞきこんできて、
束ねた長い黒髪を背中に追いやるようにしてうなじをあらわにしてくれる。
「午後の授業があるから、少ぅしだけね」
そういいながら、途中で拒まれたことはいちどもない。
先生のうなじは意外なくらい肉厚で、
こぼれてくる血潮の味もしっとりと落ち着いていた。

ピンク色をしたふくらはぎがいっそう際だつ、薄手の白のストッキング。
ボクが唇を吸いつけようとすると、いつも飛び跳ねるようにしてかわされてしまう。
「いやです」ってまじめに見つめられると、どうしても牙をすくませてしまうのだ。
あるとき保健室に行くと、そんな先生が自分のほうから脚を伸べてきてくれた。
体育のT先生との結婚を控えたすこし前のことだった。
肉づきのいいふくらはぎの周りをよぎる薄っすらとした光沢に初めてきがついて、ボクは思わず生唾をのみ込んでいた。
いつもこんなテカテカするの履いていたっけな?
そんなふうに思いつつ吸いつけていった唇に、すべすべとした薄手のナイロンの感覚が痺れるくらいに心地よかった。

ぱりぱり・・・ぱりぱり・・・
他愛なく引き裂いてしまう、白のストッキング。
先生は足許に加えられる狼藉をちょっと悲しそうに見ていたけれど。
「新婚旅行から帰ってきて、味が変わっていたらゴメンネ」
なんて、言ってくれていた。
旅行からもどった先生は、しっとり落ち着いた感じのする黒ストッキングを履いて学校にやってくる。
だれの口の端にものぼらなかったようだけれど。
それからは先生のストッキングはいつも黒だった。

「T先生には絶対ナイショよ」
結婚してからも先生はそういいながら、
血をねだるボクに時々うなじを傾けてくれた。
大人の感じがする黒のストッキングも勢いにまかせて、
時折ぱりりと咬み破って愉しんだ。
困った子ねぇ・・・
先生は苦笑しながら、そんなボクを許してくれている。
先生が学校を辞めると、新居にも時々お邪魔した。
もちろんT先生がいないときだけだった。
T先生には恩もうらみもなかったけれど。
お嫁にもらったばかりの郁子先生をとっちゃって、悪いかなぁ・・・
と、バクゼンと思いながらも通いつづけた。

夫であるT先生の目を盗むようにして。
それでも母親を慕う子供のような気分で足繁く通う先生宅。
たたみに押し倒した先生は、血を吸い取っているあいだじっと身じろぎしないで、
時折慰めるように、背中を撫でてくれた。
「もうそろそろ帰ってくるわ」
そう囁かれて飛び出した、肌寒い屋外。
ふと目に入ったT先生は、電信柱の陰から自分の家の灯りを見あげている。
いつもいからせた目に、涙が浮いていた。
さようなら、郁子先生。
やっぱりボク、来るのやめにするからね。
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