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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

だれにも、言っちゃあなんねぇぞ。 ~寝取る男 続編~

2007年01月10日(Wed) 21:16:51

艶笑。
そんな世界がまだ日常に息づいている、名もない村の出来事だった。

女好きなのに。いつまでも独り身なあの男。
どんな女もその気になって、なびくのに。
亀次がつねに狙うのは。
悲しいかな、いつも人妻。
ひとの嫁じゃないと、もえないんよ。
そんなあけすけな言い草に。
亭主どもも苦笑いをして。
じぶんの嫁が火遊びするのを、
あるものは、仕方なさそうに。
あるものは、面白がって。
黙認したり迎え入れたりしてやっている。

「困った、困った」
ふさふさとしていた黒髪は、いまは白髪が混じるようになったのに。
亀次のお盛んな行状は、いつも村人の笑のたね。
あそこの嫁にも、夜這いをかけた。
あちらの家では、祝言の夜に嫁を食われた。
あたかも怪談でもかたるように、ひそひそと。

「亀次さん、なにを困ったの」
一座のなかの頭だった男は、亀次とほとんど同年輩だったけれど。
女房を寝取られつづけて、もうなん年になるのだろう。
「まぁ、まぁ」
奥の台所から出てきた、男のお内儀は。
酔いに任せての放談を、いいかげん聞き飽きたのだろう
お盆の上に乗っているのは、渋茶だった。
「えっ、しょうがねぇな。もっと気のきいたものはないのかい」
「だめ、だめ」
女房は亭主じゃないほうから伸びてきた手をさりげなくどけながら、
ひとつひとつ、渋茶を皆にすすめてゆく。
「亀次さんのは、これね。惚れ薬が入っているだよ」
わははは・・・
なにもかもご存知な一座の笑いに、亀次も、亭主も、しきりに頭を掻いている。

「娘の祝言のことな、お前ぇは反対なんかね」
座がひけて、亀次と夫婦だけになると。
亭主は酔眼を改めた。
「やぁ、めでたいことだからよ、反対、ってわけじゃないんだが」
亀次はまだ、頭を掻いている。
娘のほうまで、手ぇ出すなよ。
村長はそういうと、いつもとはべつの部屋に自分の床をひかせていた。

ひと晩、村長の家にやっかいになると。
亀次が翌晩訪れたのは、幼馴染みの美雄のところ。
亀次が美雄の嫁と契るようになってから、はや二十年ちかくが過ぎていた。
「あら、あら。いらっしゃい」
美雄の嫁の華代がまだまだ若く、どうもすると嫁入り前の生娘のようにみえるという評判だ。
果報ものだね、美雄さんは。
村のものたちはからかうように評するのだが。
そのなかにたくまぬ羨望が混じっているのを、語るものも聞くものもよく心得ている。

美雄はもともと、女と契れぬ体。
それが亀次にそそのかされて、嫁をもらって。
もらった嫁を初夜から寝取られて。
むらむらときたある晩に、まんまとふたりの思惑どおり、
夫としての役目を取り戻していた。
感謝のしるしに、子がふたりさずかると。
美雄は亀次が嫁めあてに通ってくるのをこばまなかった。
それいらい。
女ひでりはいつも、美雄の嫁で充たし続けている。
果報は、亀次にもあるようだ。

「いや、困った、困った」
亀次はここでも、頭を掻いている。
「どうしたんだね」
「村長の娘と、お医者の息子が祝言をあげるだろ」「あぁ、聞いてる」
まずいんだよ・・・
だれにもいうなよ。
いかにも深刻そうに眉を寄せると。亀次の顔はよけいにおかしくなる。
ふふふ。
傍らに控えていた華代さえ、困り果てた顔つきの情夫をみて、笑いをこらえかね、そそくさと座を立っていた。

おなじタネなんだよ。
亀次が、声をひそめて語るには。
村長の嫁と契ったのと。
お医者の奥さんとできたのと。
ほとんど変わらぬ時分のことで。
月を数えると、どうしても。
どちらも亀次の子なのだという。
「どちらの親も、知っているのかね」
「さぁ、どうだか」
亀次は相変わらず困り果てたように、かぶりを振った。
誰が結びつけたわけでもないのだが。
息子と娘は互いに好き合うようになって。
親どうしも、ひどく乗り気なのだという。
「罪作りな、こと。しちまったなぁー」
苦しそうにうなり声をあげる亀次を、美雄はあわてて制している。

血が呼び合ったものかね。
美雄はつぶやいた。
からかいのようすは、すこしもなかった。
そうかも知れねぇな
亀次もいつになく、神妙に頷いている。
だったら、しょうがないだろう?
美雄がまた、ささやいた。
そうかも知れねぇな
亀次も、さっきとおなじに頷いている。
じゃが、だれにも言っちゃあなんねぇぞ。
わかってるって。

男どもは灯を消して、ひとつ部屋で横になった。
ひとりが寝息を立てると、もうひとりは足音を忍ばせて部屋を出て、
この家のお内儀の寝所にもぐり込んだ。
寝息を立てたはずの亭主は、足音が消えるころ。
やはり、そうっと起き出して。
足音を忍ばせて、女房の寝所を覗き込んでいた。

お・・・っと。
女房と契ったすぐあとに。
出会い頭に亭主にあえば。
いくら黙認とはいえ、間男たるものびっくりするのはとうぜんだった。
あたりはまだ、暗い。
しーっ。
美雄はじぶんの唇に人差し指をたてて、亀次をこちらへ・・・といざなった。
途絶えたはずの、秘めやかな声が。
まだどこぞから洩れてくる。
どういうことだい?
亀次はうろうろと、視線を迷わせる。
だれにも、言っちゃあなんねぇぞ。
どこかでおなじ言葉を耳にしたっけ。
亀次はそう思いながら、幼馴染みのささやきに耳を貸していた。
里香ちゃんの部屋じゃねぇか。
口をついて出たのは、美雄のひとり娘の名前。
だれ、忍んできてるだ?
亀次は許せねぇ、と、じぶんが父親であるかのように息巻いた。
もちろん小声で。
だれも、忍んできちゃ、いねぇよ。
えっ。だって・・・
みなまで言わせず、美雄はそうっと亀次の耳もとに口を寄せる。
兄妹で、契っている。
えっ。
里香は、お前ぇのタネだったよな。
うそぶくようなささやきに、亀次はぞうっとしたように頷いて。
それに、息子が惚れた。里香は母親そっくりだからな。
母親とは、寝ちゃなんねぇ。あいつもそう、思ったんだろう。
半分の血が、引き寄せて。
のこり半分が、心のいましめを解いたのさ。
どんな子が生まれるか、知れねぇが。
都会の縁類に、事情を含ませてある。
どうしても、離れたくねぇ、というから。
べつべつに、出してやって。
向こうで、めおとにしてやろうと思うのよ。
ここじゃあ、どうしようもなんねぇからな。
だからお前ぇも、村長とお医者のとこ、祝ってやれ。
なんにも言わねぇで。

初夜をとるのは、気の毒だぞ。
いやぁ・・・
やつは困ったように、あたまをかいて。
じぶんの娘と知りながら・・・だいぶまえに、契っちまった。
村長はいいひとだから。
妻と契りにきても。娘と契りにきても。
おなじように、迎え入れてくれるのだ。
亀次はどうやら、いつもの亀次に戻ったらしい。

あとがき
2月28日付「寝取る男」の続編です。
子孫を残していないはずの亀次は、村のそこかしこにじぶんの子供を残していて。
いけない性癖も、しっかり受け継がれているようです。
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