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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

時をへだてて

2005年10月25日(Tue) 20:44:52

お久しぶりね。
なん年ぶりだろう。
彼女が里帰りを果たしたのは。
まゆみは濃い口紅のあいだから歯並びのよい歯をみせて艶然とほほ笑む。
人妻の落ち着きだろうか。
地味めだがお洒落な柄のワンピースが、垢抜けた化粧ともども、しっとりと似合っている。

あのころのまゆみはまだ、
化粧っけのない顔に三つ編みのお下げを揺らせる、セーラー服の女学生だった。
初めて襲ったのは学校の帰り道。
逃げ惑う彼女をゆっくりと追い回し。
怖がる顔色をぞんぶんに愉しんで。
たくみに行く手を遮って。
ひと気のないほうへと追い詰め追い詰めして。
とうとうつかまえた草むらのなか。
背の高い雑草をがさがさ揺らして、
青臭い草いきれのなかで押し倒した制服姿。
濃紺のスカートをまくりあげて。
薄手の黒のストッキングのうえからぞんぶんにいたぶり抜いた、初々しい肌。
少女の脚を薄っすらと彩るストッキングは、頼りないほどさらさらとした舌触りだった。
舌触りを愉しみ抜こうとしてなおもべろをなすりつけていると。
少女のストッキングは自ら恥じるようにして、ぷちちっと破けた。
あっけないほどの儚さで。
膝小僧の周りから、つま先、腰のあたりまで、裂け目はすぐに広がった。
それを見て少女は涙ぐむ。
まるで、自分の気品が散り落とされてしまったみたいに。
そんな想いで。
細い肩を震わせて泣き続けていた。
吸血鬼はそんな少女の嘆きになど目もくれないで、
無情にもふくらはぎに唇をすりつけて血を啜り取っていった。

少女が彼の好意に狎れるのは、ほんとうにすぐのことだった。
姉も、母親も、叔母も。
彼女の家の女たちは誰しもが、彼の牙を経験している。
こういうことはみんな、お嫁入りまえに済ますのだと、
むしろ娘に訓えたのは、母親のほうだった。

それからは週になん回も。
濃紺のプリーツスカートの下に黒のストッキングを身に着けて。
彼を訪ねていった少女。
薄いナイロンになまめかしく染めあげられた初々しいふくらはぎや太ももにいやらしくまとわりついてくる腕を拒もうとはしないで、
飢えた唇に、惜しげもなく黒ストッキングの脚をゆだねていった。

隣町の男との祝言を翌日に控えた涼しい夜。
初めて襲われた草むらで、
彼女は吸血鬼に純潔を捧げた。

あれから二年。
子供のないままに彼女の夫は海外に赴任していった。
いいのよ、前みたいになさっても。
少女だったころよりは輪郭のしっかりとした顔に、
昔とおなじ人懐こい笑みを浮かべて。
彼女は黒ストッキングに彩ったふくらはぎを差し出してきた。
男はまえとおなじようにして、
ヒルのように唇を這わせていった。
彼女のいま身に着けているそれは、サポートタイプのストッキング。
細くて強靭になった糸は鮮やかな発色と色つやを帯びている。
「ウフフ。なかなかすべっこいね・・・」
「やぁだ、くすぐったい」
草むらのなかきゃあきゃあと無邪気に響かせていたかん高い声は、
落ち着いた低いトーンにコーティングされて。
隣家に決して届かない、ひそめた声になっている。
もうあのころの少女はどこにもいない。
かん高い声。なよなよとしてすぐに破れるストッキング。
それらとともに、永遠の記憶のなかに、彼女は消えてしまった。
しなやかなナイロンの表面に舌をすべらせながら、
女の体の隅々に過去を求めようと試みつづけていた。
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