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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

早朝の喫茶店

2005年06月12日(Sun) 07:42:47

「帰ろうか」という私に
「お茶でも、してかない?」と、妻。
ブラウスの襟首に、かなりべっとりと血がしたたっていたけれど、気にならない様子だった。
「いいね・・・」
気づいているのか、わざと見せつけているのか。
歩みを進めはじめた脚に、ストッキングの伝線がぴちーっとつま先まで走らせている。

駅前のカフェテラスは、マスターがいつも早起きで、こんな時間でも開いている。
お客は私たち夫婦だけ。
「よぅ、やられてきたねぇ」
白髭をたくわえたマスターは、気軽に声をかけてきた。
「あぁ、またハデにやられちゃったさ」
「お若いね。うらやましいよ」
まるで、スポーツクラブの帰りのような、さりげないやり取り。
「ご夫婦で?」
「いや、家内のほうだけ。女の血のほうが旨いっていうからね」
「そいつはけしからん。妬けるねぇ」
マスターも奥さんを寝取られているので、同病相憐れむ、という関係だ。
「うちのは今夜だ」
「もうやられて帰ってきたよ」
「そいつはご愁傷様」
「だいぶ腹空かせてるみたいだぜ。気をつけな」
幾度となくしてきた、そんなやり取り。お互い嫉妬のほろ苦さをほどほどに愉しみながら。
ウェイトレスあがりの奥さんはきれいだったので、かっこうのエジキだった。
血を吸われすぎて、お店を休んだこともある。
そうすると、わけ知りの常連客のあいだでは、奥さんの話でもちきりになる。
くすぐったそうに受け答えするマスター。
孫ができた今でもたまに、お邸に呼ばれているらしい。

「そんなに物珍しい?」
妻はイタズラっぽく、私の顔をのぞき込む。
ほかの男のものになったあと、ついしげしげと観察してしまう。もう長い間の癖だった。
「物珍しいのはオレのほうだろうね」
正直にそういった。たしかに、寝取られた女房を男の家まで迎えにいくダンナなど、そうそういるものではない。
「着替え、持ってったときあったよね。結構愉しいんだよ。あれはアレで」
「あなたのそういうところ、大好きよ」
妻は少女のように無邪気に笑った。
夕べの執拗な吸血。
皮膚はかさかさになり、顔にも十歳くらい老け込んだようなしわをうかべながら、それでも妻は少女のようにさざめいて、周りの空気をはずませる。
彼女が私をいまだに好いてくれているのは、確かだと思う。
いかに彼とのセックスの回数が私よりも多くても、彼のモノが私のそれよりも大きくても。
だから、笑って妻と彼との関係を許し続けていられるのだろう。
「柏木夫人のまま、犯し続けてあげるよ」
最初に妻を抱いたとき、彼はにんまり笑ってそう言っていた。
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