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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

許された夜

2006年02月06日(Mon) 23:42:50

ひと月にいちどめぐってくる、「許された夜」
その晩、村の男たちはかねて目をつけている女との思いを遂げることが許されている。
亭主とはたいがい、まえの日までに話をつけている。
「おい。明日の晩、お前の女房の美代子さん、貸してくれ」
そんなふうに、堂々と申し込むのだ。
申し込まれたほうも、気心知れた相手ならたいがいいやとはいわない。
「ええよ。その代わり、上の娘さ、抱かせてくれよな」
しょうがねぇな・・・
年頃の娘を望まれた男はそれでも、女房には先客がいるでな、と相槌をうっている。
弟のやつが前から、抱きたがっていやがるんだ。
「じゃあボクは下の貴美香ちゃんをもらおうかな」
横槍を入れてきた青年に、
「貴美香はまだ13だぞ」
そう咎めながらも、先月はその青年の許婚から処女を頂戴したことを忘れかねていたりする。

夜が明けて。
真佐雄が起きあがったのはとある後家さんの家だった。
傍らでは喪服を着崩した女が、まだすやすやと眠りについている。
がらり、と戸をあけて家にむかう。
家からはちょうど、親友のテルヤが出てくるところだった。
ご馳走さん。
奥さん、おれの腕の中で、なんどもイッたぜ。
言葉にすると野卑に流れるほどの露骨なことを、
まるで時候の挨拶のようにさらりと言ってのけるのだ。

おかえりなさい。早くしないと会社、間に合わないわよ。
激しかったであろう情事の名残りを、妻は気ぶりにもみせないで、
いつもとまったく変わらないようすで夫をせきたてる。
階上から娘がどたどたと降りてきた。
なによ、騒々しい。
咎める妻に、だって、腰が痛くて・・・とこたえる娘。
娘も夕べ、男を迎えていたらしい。
おなじ屋根の下の暗闇の中で。
妻も娘も、男を迎えいれて、娼婦のわざを競い合っていたというのか。
そんな娘もそれ以上夕べの出来事を口にしようともせずに、
きょうは試験だから・・・と、食卓で往生際わるくノートを繰っている。
さすがだな・・・
真佐雄は内心舌を巻きながら、自分自身もまた知らず知らず日常の慌しさに引き戻されてゆく。
職場には厳しい上司が、きょうも三十分早く出社しているだろう。
後家さんの家にもぐり込むすこしまえ。
彼の奥さんを仲間うちでまわしてしまったのだ。
奥さんは相手の男たちの素性を知りながら、
いつも主人に困らされているのですね、じゃあ慰労をかねて・・・
と、もの分かりよくノッてくれたのだが。
けれどもそんなことはいっさい、お首に出すこともご法度だ。
男は口許を軽くぬぐうと、いつものように背広に腕を通してゆく。
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