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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

伝えられた血

2007年01月29日(Mon) 21:34:28

その女を初めて襲ったとき。
女はもう三十を過ぎていた。
三十を過ぎていたのに、処女。
汚れのない芳香が、豊かな翳をおびるころ。
女は吸血鬼の児をみごもった。
生まれてきたのは、娘だった。
子どもを育てながら、女は男に血をあてがい、
疲れて眠り込む夜に、飢えを抱えた男がひっそりと出かけてゆくのを。
さびしそうに見送っていた。
やがて女は年老いて、けれども男はもとのままだった。
永遠に生きつづけなければならないのだよ。
さびしそうに笑ったのは、男のほうだった。
わたしがまだ若いうちに、ぜんぶ吸い取ってしまってね。
女はこともなげに、応えていた。
夜を重ねるうちに、女は弱っていって。
けれどもその口許から笑みがたえることはなかった。
男がべつの女と夜を過ごしても。
心はつねに女のもとにあると知っていたから。
やがて、別れが訪れた。
よかったわ。
女はかさかさになった己の肌を、哀れむように見つめながら。つぶやいていた。
あなたに血を吸っていただけて。
美しくないわたしを、べつのかたちで愉しんでいただけて。魅了されてくれて。
でももうおしまい。そろそろ行かなきゃ。
幸せです。わたしの血は、あなたのなかで生きつづけてゆくのだから・・・
女の声は小さくなり、切れ切れになり、やがて途絶えた。
せがまれるまま、女に身を重ね、血を吸いつづけた男は。
なおも深く身を重ね、しずかに啜り泣きを洩らしていた。

女が残した少女は、年頃の娘になっている。
白のセーラー服に、濃紺のネクタイ。
女と瓜二つの、大きな瞳をもっていた。
母親の血を吸い尽くした父を、さしてとがめることもなく。
ひっそりと、淑やかに。
男の傍らにひかえつづけていた。
ある晩のこと。
とっくに寝んでいるはずの娘は、父親の書斎を訪れた。
おやすみになれないの?
無口な少女は、口許から。
音楽的な声を洩らしている。
どうかわたくしの血で・・・お父様の眠りをあがないたい。
さらりとかきのけた黒髪のあいだから、透きとおった首筋がのぞいている。
我知らず、娘に身を近寄せて。
恥を忘れて、影を重ねていった。
真っ白なセーラー服に、ばら色のコサアジュを彩りながら。
少女はいつまでも、瞳をひらきつづけて。
かつておなじようにして父に尽くす母を見下ろしていた天井を、見つめつづけていた。
脚を噛んでたわね?母さんの。
さし寄せられた脚を、薄手のストッキングがなまめかしく染めている。
あ・・・やらしい。
ほんのひと声が。吸血鬼を獣に変えていた。

わたくし、お父様の子どもを生むわ。
その子が女の子だったら。お父様に処女を奪っていただくの。
男の子だったら。好青年に仕立て上げて。
かわいい彼女をつくらせてあげる。
もちろんお父様に、処女の生き血をあげるために。
ずっとずっと。そばにいるわ。
お母さまとわたくしの血が、いつまでもお父様のそばに寄り添うために・・・
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コメント

もしかしたら
柏木様の住まわれる村の最初は、こうして出来たものかもしれませんね。
そして、他の異性に愛する人を委ねる甘い苦痛を最初に耐えていたのも・・・夫ではなく妻だったのかも。
娘にどうして教えたのか、ふと眼にしてしまった夫婦の時間で悟ったのか、半分流れるヴァンパイアの血が彼女に教えたのか。
愛する故のルールを作った二代目をわたくしは賞賛したいと思いますわ。
by 祥子
URL
2007-01-31 水 08:03:55
編集
>祥子様
じぶんで描いたくせに・・・
つい、読み返してしまいました。(^^ゞ

たしかにご指摘のとおり。
アダムとイブの創造神話のような趣がありますね。
いつものパターンとは、男女所を入れ替わったようなお話ですが。
冷静な目の持ち主である少女はきっと、父への愛を、もっともふさわしい形であらわにしたのだと思います。

母なるひとは、どうして三十になっても処女だったのでしょうか?
もしかすると。

優等生なのよ。わたし。

あの声の主なのかもしれませんね。
by 柏木
URL
2007-01-31 水 22:28:36
編集

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