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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

寮母の老婆

2007年04月02日(Mon) 06:15:58

制服規定~生徒手帳に記載の校則より~

男子生徒(冬服)
白のワイシャツ、紺色のネクタイ。
濃紺のブレザーに、同色の半ズボン・ひざ丈のハイソックス。
※寒いときには、ハイソックスの代わりに黒のストッキングを着用してもよい。

女性には、気をつけてね。
学生寮に入るまえの晩。母のミツエは気がかりそうに眉を寄せて。
モトオにそういったけれど。
本人はそんなこと、さらりと聞き流していた。
ほんとうに、うかつにも・・・

寮は、二人部屋だった。
進級すると、一人部屋が与えられるのだが。
寮になじむために、新入生は二人ひと組にわけられていた。
同室になったのは。
サヤトという少年だった。
色白の額には、細いけれども刷いたように鮮やかな眉。
大きな瞳に、生き生きと輝く頬。
紅顔の美少年、といってもさしつかえなかった。
モトオは少し、嫉妬をおぼえた。
かれ自身も、美少年ともてはやされてきたからだった。
早熟だったかれの身体はしなやかな筋肉に鎧(よろ)われはじめていて、
すこし頬骨の張った横顔は、いままでの童顔とは違った精悍さを秘め始めていたのだが。

寮母は、背中の曲がったの老婆だった。
猫ばあさん、とも呼ばれていた。
それくらい背中がまるく、いつもうずくまるような格好で歩いている。
そんなようすから生まれた、陰ながらの呼び名だった。
老婆は歯の抜けた口をあけて、にたにたと笑いながら、同時に寮にあらわれたふたりを出迎えた。
ようこそ。ようこそ。よくお出でになられたな。
古風な口調が、まるで墓場から迷い出てきたかのような印象を与える。
ふたりの少年は顔を見合わせて、肩をすくめ合っていた。

真っ白なワイシャツに、紺色のネクタイ。
濃紺のジャケットに、半ズボン。
やはり濃紺の靴下は、ぐーんと長く、ゆうにひざ丈まであった。
それが、モトオたちが春からまとう制服。
女みたいな制服だよね、
サヤトが呟くように、そういった。
たしかに。
半ズボンがスカートだったら。
完全に、女子高生の制服だった。
おまけに真新しいハイソックスは、
陽の光を浴びるとにわかにツヤツヤとした光沢を、うわぐすりのように帯びるのだった。
夏には薄いのも、穿くみたいだぜ?
女の子のストッキングみたいじゃない。
サヤトの紅い唇は、しだいに自嘲を帯びてゆく。
こいつにいわれたくない。
女みたいな白い顔に、ピンク色の頬っぺをしているくせに・・・
モトオは知らん顔をしていた。
淡い嫉妬が、まだ苦々しく腹のなかによどんでいる。
お望みなら・・・黒のストッキングを履いてもいいようだぜ。
何気なく口にした言葉に、サヤトがびくっとして顔をあげる。
え・・・?
知らないのか?たしかにお前のいうとおりだよ。女みたいだ。
声が皮肉を帯びるのを、どうすることもできない。
恥ずかしい。。。
女の子みたいだ。。。
さいしょはそんなふうにしり込みしているのだが。
上級生にもなると、すこし肌寒い日などは、平気で黒のストッキングを着用して、教室を出入りして。
学校の外をあるくときも、当たり前のように、
半ズボンの下、薄墨色に染まった脛をさらけ出して闊歩するようになるという。
それでいて。
ここの制服は、その実男の子たちのあいだで、口にされることのない憧れをよんでいるのも確かなのだ。

学校の新学期は、あわただしい。
一日に入学式があると、桜が散るのを待たずに本格的な授業が始まり、寮生活が始まる。
新入の寮生は、13人。
真新しい制服に、いちように戸惑いながら。
顔を見合わせては半ズボンの太ももを寒そうにすくめ、紺の長靴下をひざ下まで引っ張りあげていた。
さすがに、黒のストッキングを着けているものは、皆無だった。
見ろよ、あれ。
始業式の朝。
誰言うともなく目を向けた上級生の列には、半分以上の生徒の脚が、薄っすらとした黒のストッキングにおおわれている。
群れ集った太さも長さもとりどりな脚は、ひとしく薄手のナイロンに包まれて。
まるで呪縛にかかったようななまめかしさに、だれもが胸の奥をずきりと疼かせたのだが。
ヘンなの。
だれもがそう、口にしていた。
そう。上級生たちが去年の今ごろ、そうだったように・・・

消灯になっても騒いでいるのは、どこの学校の生徒も同じだろう。
けれども。寮母の猫ばあさんが夜まわりにくるときは。
皆布団のなかで、息を潜めて。
ひたひたという足音が通り過ぎるのを、待っていた。
猫ばあさんが手にしているのは、古びた燭台。
しずしずと。大奥の奥女中のように。小高くかざして。
そのときだけはまるで別人のように、背すじをしゃんとさせているのだ。
なによりも。
ゆらゆらとした焔に浮き彫りになった老婆の顔は、まるで鬼婆か化け猫のように不気味なもので、
最初の夜個室に戻ろうとしない新入生たちのいる大部屋を覗き込んだとき、だれもがぎょっとして立ちすくんでしまうほどだった。
早う、寝なされや。
老婆は歯の抜けた口許をもちゃもちゃとさせて。
聞き取りにくいひくい声で、たったひと言そういっただけだったが。
だれもが気おされるように、自室に引きこもってしまったのだ。

不気味なやつだよな。
モトオがいうと、
そうだね。
サヤトが相槌を打つ。
さいしょにいだいた反感は、いまは消えうせて。
ようやくウマの合うようになってきたのだが。
このときだけは、ふたりの意見は食い違っていた。
え?ばあさんのことじゃないのか?
サヤトの口から洩れたのは、ロウという名の同級生のことだった。
13人いる新入生のなかで独りあぶれて、彼だけが個室。
いつも無口で、蒼白い顔でじろじろあたりを伺っている。
陰気なやつだ。
モトオの嫌いなタイプだった。
けれども。不気味・・・とまでは感じていなかった。
かれにとってだれよりも不気味なのは、あの老婆。
うずくまるような猫背は、擬態なのか?
おなじクラブの上級生におそるおそるきいてみても。
あぁ・・・あの婆さん・・・ね。
と。なま返事のようああいまいな応えがかえってきただけだった。
ロウと老婆。
ふたりには、共通点がある。
真夜中、足音を忍ばせて徘徊することだった。
新入生にありがちな夜歩きは、ぱったりと途絶えている。

コツ、コツ・・・
ぎし、ぎし・・・
ふたつの足音が、真っ暗な廊下を今夜も徘徊する。
サヤトがたまりかねたように、布団をはね上げて、
二段ベッドの上段で寝んでいたモトオのところに転がり込んできた。
怖い・・・
いきなり身体を押し付けてきたサヤトは、モトオの胸のうえ、ほんとうにぶるぶると震えている。
おい、おいったら・・・
声を抑えて咎めたけれど、サヤトはとうてい自分のベッドに戻りそうにない。
困ったな・・・
ひんやりとした闇のなか。
当惑を抱えたじぶんの胸に圧しつけられてくるサヤトの胸が妙に暖かだった。
おい・・・
サヤトは腕を伸ばしてきて、わきの下から背中へと回してくる。
怖い・・・
ひたすら怖じてすがりついてくる暖かな身体を、しばしどうすることもできないでいた。

夜が明けた。
寒そうだな。
四月だというのに。
ガラス窓はすりガラスのように曇っている。
びっしりついた水滴ごしに見える外の景色は、霜が降りているかというほどに凍えてみえた。
履いていこうか?黒のストッキング。
え?きょう?
恥ずかしいのか?
うぅん。そんなこともないけど・・・
じゃ、いっしょに履いていこう。
そういえば、隣室の高部と笹原も。
きのうは申し合わせたように、黒ストッキングに脛を染めていた。
どうやって履くか、知らないのかい?
サヤトがからかうように、モトオを見た。
パッケージの封を切ると、ぶきっちょにも、いきなり脚に引き伸ばそうとしたからだ。
いけねぇ。
寮に入る前、母さんに履き方を教わってきたのだ。
二人とも、時おり顔を見合わせながら。
なよなよとした薄手の黒のストッキングのつま先をたぐり寄せ、足首に通し、脛にひき上げてゆく。
夕べ。
なにがあったわけでもない。
小一時間ほどモトオのベッドで震えていたサヤトは、やがて、すまなかったね、と呟いて、じぶんのベッドに降りていった。
あとに、温もりだけが、残った。
その温もりを、抱いたあと。
体温の低そうな薄い白い皮膚に流れている血潮の、思いのほかの熱さを。
知らず知らず、さとっていたのかもしれない。

おや。おそろいだね。
先生はにやにやとして、ふたりの足許を無遠慮にじろじろと眺め回したけれど。
それ以上、なにもいわないで、授業をはじめた。
十三番目の席だけが、空席だった。
ロウは風邪らしいぜ。
どこから聞いてきたのか、誰かがそっけなく、そう教えてくれた。
授業中。
まとわりつくようにぴったりと密着してくる黒のストッキングが。
なぜかひどく、心地よかった。
ほどよい密着感がそらぞらしい外気をさえぎっていて、心地よく露出させていた。
涼やかな翳を帯びた脚を、見せびらかすように伸ばしてみる。
しばらく会わない母親か、誰か優しい女のひとが寄り添ってくれているような感覚が、
授業をうわのそらにさせている。

ああ。やっぱり・・・
呪わしいうめき声を、あげながら。
闇に包まれたベッドのうえ、モトオは身じろぎひとつならないで、
上からのしかかってくる影法師に身を巻かれていた。
旨い。旨いね・・・
影法師の正体は、ロウだった。
窓の外から滲んでくるわずかな街灯の明かりが、陰気なほほ笑みを照らし出す。
口許に散っているのは、モトオじしんの血・・・
ロウはなおも、ぬくもりを求めるように。
うなじにつけた傷口に舌先を這わせて、滲んだ血潮をぴちゃぴちゃと舐め取ってゆく。
助けを呼ぶことは、難しかった。
下の段のベッドでは。
うずくまる影の下、サヤトがウットリとなって、世迷言を呟いている。
お婆さま・・・もっと血を吸って・・・と。
あの、暖かい体温を。薄い皮膚から奪い取られてゆくというのか。
競い合うように抜き去られてゆく、ふた色の若い血が。
暗闇を深紅に染めている。

母のミツエが寮を訪ねてきたのは、翌週のこと。
父兄面談のかえりに、ちょっと立ち寄ったのだ。
折あしく、まだ授業がつづいているらしい。
人けのない古びた寮は、まるで廃墟のようだった。
ごめんください。
白のパンプスが踏み入れた玄関は、ひどく埃っぽいかんじがする。
どなた・・・?
ぎい・・・と、扉が開いたとき。
ミツエはすこし、ぎょっとした。
木乃伊のように痩せこけた老婆が、背すじをぴんとさせて、睨むようにこちらを見据えている。
あの・・・○○の母ですが。いつも息子がお世話になっております。
ほほぅ・・・モトオさんの、お母さん。
息子のことを、親しげに名前で呼ばれて。
ミツエはすこし、ホッとする。
さ、おいでなされ。
老婆はにたにたとほくそ笑むようにして。
ミツエを手招きした。
パンプスを脱いだ肌色のストッキングの脚がスリッパをつっかけて、ひやりとした廊下に踏み入れた。

ここが息子の部屋ですの?
見覚えのある筆箱や、見慣れた筆跡でなぐり書きされたノートが数冊、机のうえに散らばっている。
外には洗濯物がぶらさがっているのが、ふだん家で洗濯などしたことのない息子を思うともの珍しい。
さっそく履いているのらしい黒のストッキングが長々となん足か、萎えたようにぶら下がっていた。
こちらへ・・・
老婆に促されるまま、つぎに母親が通りかかったのは、階上へとつづく階段の踊り場だった。
お隠れなされ。
老婆はしわがれた頬には不似合いにイタズラっぽく笑うと
ミツエの腕をとって、ぐい、と引き寄せた。

老婆とは思えないほどの力だった。
背中越しに腕を回された肩先を、痛いほどギュッとつかまれて。
まるで羽交い絞めにされるようにして、階上の廊下を見あげると。
蒼白い顔をしたひとりの少年が、ぽつねんと立ち止まっているのが見えた。
跳び箱の台が一段だけ、廊下にしつらえられていて。
少年はそのうえに片脚を載せていた。
台をはさんだ真向かいには、もうひとり。
やはり陰気に蒼白い横顔の、同年代の少年が面を伏せてうずくまっている。
わるいね、サヤト。
うつむいて表情のみえない口許から洩れたのは、クラスメイトの名前だろう。
サヤト・・・聞き覚えがある。息子と同室の少年だ。
でも・・・紅顔の美少年といわれた彼は、あんなに顔色がわるくなかったはずだ。
サヤトと呼ばれた少年は、薄っすらとほほ笑んだ。
どこか力の抜けて、少年ばなれした虚無的なうすら哂い。
ほっそりとした指が、すこしたるんだ濃紺のハイソックスをひき上げていって。
いいんだよ。ロウ。
うずくまる少年の名前を口にすると。
お前も、好きだな・・・
苦笑いしながらも。
陰気な友人がハイソックスのふくらはぎに唇を這わせてくるのを、くすぐったそうに見つめている。
かりり・・・
遠目でよくわからなかったけれど。ふくらはぎを噛んでいるみたいにみえた。
見間違いではなかった。
なんどか、しつように押しつけられた唇のあとに、かすかな破れ目が白い肌を滲ませている。
もうすこし暖かくなったら。薄いやつも吸わせてやるよ。
うふふ・・・
ロウと呼ばれたうずくまっていた少年のほうも。
やっと打ち解けたように、ひくい笑い声をあわせていった。
モトオは?
ああ、今ね・・・
唐突に出た息子の名前に、ミツエはぎくりとした。
息子も、あんな顔色にされているのだろうか?
教室の扉が、重たい音を立てて開かれた。

ぬっと突き出された、カモシカのような脚。
ぴちっと張り詰めた濃紺の長靴下が、射し込んで来る陽の光をうけて、さえざえとした輝きを帯びている。
逆行になって、顔色は良くわからなかったが。
目のまえでどうやら血を吸われたらしい色白の少年ほど、肌を透き通らせている様子はない。
サヤトがロウに、耳打ちした。
こいつのお袋さん、学校に来ているらしいぜ?
ミツエがはっとするまでもなく。
老婆は肩をつかんで、離さない。

手加減しようか?
気遣う友人に、かぶりを振って。
おんなじくらい、吸ってくれよ。
モトオがハイソックスを履いたまま、ロウの唇にふくらはぎをあてがおうとすると。
待って。
にじり寄ってきたサヤトが、引き剥がすようにして、ハイソックスをずり降ろしていた。
なにするんだよ・・・
きみの母さんに、ばれないようにさ。
しょうがないね・・・
モトオはそれ以上さからわずに、むき出しになったふくらはぎを、ロウに差し出していった。
熱っぽく這わされた唇の痕から。
赤黒いものがじわりと滲むのを・・・ミツエは見た。
ああっ。
こらえ切れずにあげた声が、命取りだった。
「おのれ・・・」
ひくく唸るような、ただならぬ声に振り向くと。
傍らで彼女をグッと抑えつけていた老婆が。にわかに歯をむき出して、迫ってくる。
歯の切っ先は、映画で見た吸血鬼のように硬く尖っていた。

莫迦だね。母さんも・・・
目が覚めたのは、息子の部屋。
ふたりの少年の姿は見えなかったが。
ぎしぎしと音をきしませる二段ベッドの上段には、ふたつの身体が戯れあっている。
血を吸っているのか。愛撫をしているというのか。
おなじ部屋の男同士で仲良くなっちゃうとね。
黒のストッキング、いっしょに履いて行くんだよ。
窓辺の物干しには、洗いあげたストッキングが何足も、折からの風にあおられていた。
母さんのストッキングも、ここで干すことになっちゃうね。
足許に、なま温かいものを感じる。
それが老婆の舌で、さっきからストッキングを破ろうとウズウズしているのを。
ミツエは肌で感じている。
さすがは、モトオの母ごじゃ。ええお味の血だぞい。
老婆のほめ言葉に、くすぐったそうに応えながら。
モトオもまた、けだるそうにじぶんの足許を撫でつけている。
半ズボンの下、脛を薄墨色に染めあげた薄手のナイロンは、
薄っすらとひとすじ、裂け目を滲ませていた。
母さんのストッキング、いい舐め心地だろう?
フフッ・・・と笑んだ息子の横顔が、ひどく大人びて映ったが。
ちくり―――と刺し込まれた鋭利な感触が、彼女の理性を一瞬で奪った。
ああ、息子とおなじようにされてしまう。
太もものまわり、薄手のナイロンのゆるやかな束縛がちりちりとほぐれてゆくのが、妖しい安堵感となって女の胸を浸してゆく。


あとがき
中身のない割りに、長くなっちゃいました。(^^ゞ
やはりこの分野、そんなに得意ではないですワ。
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学生寮にて 同室の男の子
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男子生徒の制服

コメント

(⌒▽⌒) ケラケラ
 せっかく男の子二人が盛り上がりかけたのに
唐突にお婆さんとロウへ「あげて」しまうからですよー(笑)
当分、二人だけで、いちゃいちゃさせときたかったのに。
でも、あっという間にお母さんも
引き込んじゃうのが柏木テイスト?
by さやか
URL
2007-04-04 水 14:50:53
編集
>さやか様
いやはや。
たしかに男の子ふたりがベッド・インしたあたりから、本当はヤマ場にするのがお約束なんでしょうねぇ。
そこでいっぱいいっぱいになっちゃうのが、柏木の限界なのですな。--;
それにしても。
もうちょっと、たっぷりとしたお話しにすべきだったかな?
ご賢察どおり、結末はいかにも柏木テイストで〆ちゃいました。^^
by 柏木
URL
2007-04-05 木 21:20:28
編集

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