FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

インモラル・バー ~馴染み客の妻たち~

2016年12月04日(Sun) 07:51:00

カウンターで飲んでいるわたしの後ろを、着物姿の女将がススッと通り抜けていく。
なんでもないすれ違い。
けれどもそこには、背中合わせの意味深なやり取りがある。
女将が向かったのは、地下にある奥座敷。
そこで女将は帯をほどき、襟足をくつろげて。
上客たちのまえ、素肌をさらしてみせるのだ。

上客のメンバーのひとりは、会社重役。
そんないかがわしい会合が、夫の行きつけのバーで交わされている。
ある人からそんなことを知らされた重役夫人は、果敢にもその場に乗り込んでいった。
それが重役夫人にとって向こう見ずな行動だったと本人が知ったときにはもう、手遅れだった。
苦笑いを泛べる重役のまえ。
彼の悪友たちはこぞって鼻息荒く夫人に迫っていって、
彼女が永年守り通してきた品行方正な貞操を、むぞうさに分け取りしてしまったのだから。
それがほんとうは、彼女にとって正しい選択だと本人が知ったのは、だいぶあとになってからだった。
以後重役は、夫人同伴でバーを訪れるようになり、
そういう日に限って、バーは繁盛するのだった。

バーテンは気の良い年配男。
女将が地下の奥座敷に消えるのを見送ると、
お客さんは、よろしいのですか?
と、こちらに誘いをかけてくる。
ああ、もうちょっとしてからね。
わたしがあいまいに応えると、バーテンは黙って、卓上の高級酒のお代わりを注いでくれた。

背後の格子戸が、がらりと開いた。
着飾った女が3人、表情を消して、わたしの背後を通り過ぎてゆく。
格子戸を閉めるとき。
あとを尾(つ)けるものがいないかと後ろを振り返ったのは、見知らぬ人妻。
それ以外の二人は、あとも振り返らずに、取り澄ました顔つきで、
バーテンとわたしが向かい合わせになったカウンターのまえを、通り過ぎていく。

ご紹介がまだでしたね。
バーテンは誇らしげな照れ笑いをしながら、わたしに話しかけた。
ひとりめの女は、うちの女房なんです。
ラメの入ったストッキングの脚が、地下に通じる階段に隠れていった。
自分の妻が店の上客たちを相手に、どういう接待をするのか知っているはずなのに。
彼は穏やかな面差しに感情を隠して、淡々と業務をこなしていく。
そう。
わたしは注がれた高級酒を口に含み、それからいった。
ふたりめの女は、俺の家内だ。

バーテンはにっこり笑い、そしていった。
今夜はもう、看板にしましょう。
お客さんもよかったら、地下へ。

彼は馴染みの客の妻を抱き、
わたしはどこのだれとも知れない人妻を抱き、
妻はわたしの悪友たちの誘惑を受ける。
そんな夜もたまには、いいじゃないか・・・?

最低限の愛情

2016年11月23日(Wed) 22:24:52

妻が吸血鬼に襲われた。
生き血をがつがつと飲まれ、荒々しく強姦までされた。
「ひどいことをする」
白目を剥いて横たわる妻をまえに抗議をするわたしに、吸血鬼はいった。
「だが、わしが本気で奥さんに惚れて、奪われるよりはましだろう」
「それはそうだが・・・せめて敬意をもって接してもらうわけにはいくまいか」
「わかった。こんど襲うときには、最低限の愛情をもって接しよう」
食欲と性欲処理と割り切って妻を襲った吸血鬼は、次からは対応を変えていた。
さりげなく妻の通りかかるのを待ち伏せて、礼儀正しく公園に誘った。
妻も目を伏せながらも、従順にお辞儀をし、彼の誘いに従った。
草の褥のうえ、礼装に身を包んだ妻は、
ブラウスをはだけられ、ブラジャーをはぎ取られ、
スカートをたくし上げられ、ストッキングを引き破られて、
髪振り乱しながら、犯されていった。
脱がす手間を惜しんで交接を遂げるため、ひざ小僧の下までずり降ろされた黒のストッキングが、妻が堕落してしまったことを告げていた。

愛情は終生、あなたのもの。
でも熱情は、時々彼のものになるかも。
そんな私を許して――

目を背けながら囁く妻。
きみを護り切れなかったわたしなのに、彼女は切々と、謝罪をくり返す。
彼女を支配する後ろめたさが、彼と遂げる逢瀬でもたらされた悦楽なのだと気づくのに、時間はかからなかった。

11月15日構想。

寝取らせ話。 ~ホストの彼。~

2016年11月08日(Tue) 07:06:04

同性愛にハマってしまいました。
ふたりでいるときのわたしは、女の姿になっています。
勤め先のベテランOLが着ているようなスーツ姿で男に抱かれ、
スカートの奥が粘液でぬらぬらになるくらい、愛し抜かれているんです。
相手はわたしよりずっと年上の、ベテランのホスト。
パトロンの女性にはこと欠かず、収入はわたしよりもはるかに上。
だから衣装代もクリーニング代も、ホテル代も・・・いっさいが彼持ちです。
女にはこと欠かないけど、女になってくれる同性にはこと欠いている。
“両刀使い”の彼の、口癖なのです。

そんな彼が、ある晩わたしに囁きました。
きみの奥さんを征服したい。
わたしは夢中で、頷いていました。
自分のもので彼の気に入るものならなんでも、歓んで彼に捧げたかったのです。

結婚して二十年ちかくになる妻とは、このごろすっかりご無沙汰でした。
あらいざらい話したわたしに、妻は言いました。「いちどだけよ」
そしてある週末に、わたしたち三人は、彼の家で初めての夜を過ごしたのです。
彼はわたしの服を脱がせると、丁寧な手つきでわたしの手首にロープを巻きつけました。
そして、ロープのもう一端を、ベッドから離れた柱に巻きつけたのです。
これで、ベッドのうえで彼が、わたしの妻にどんな狼藉に及んでも、わたしの手は届きません。
そのうえで、彼は妻のことを、自分のものにしていったのです。

開業医の奥様や社長夫人をつぎつぎとモノにしていった彼のことですから、
ただの素人女に過ぎない妻は、あっけなく陥落していきました。
わたしに接するときとおなじ熱烈さで彼は妻との交接をなん度もくり返し、
すっかり妻を手なずけ、飼い慣らしてしまったのです。
「つぎはいつにする?」
「主人の空いている日なら、いつでもいいわ」
ふたりきりのベッドのなか。
たしかに「いちどだけよ」と約束したはずの妻は、夫婦の約束をあっさりと反故にしていました。

服を脱がされた理由は、再び服を身に着けた妻にロープをほどかれたとき、やっと気がつきました。
激しい射精で、足許までしたたかに濡らしてしまっていることに、やっと気がついたのです。

それからは週末ごとに、三人での逢瀬がつづきました。
わが身をホストの情婦にすり替えた妻は、素人めかしくこぎれいなふだん着やよそ行きのスーツに身を包み、
わたしの目の前で服をはぎ取られ、荒々しく犯されていったのです。
四つん這いの恥ずかしいかっこうで、排泄行為のように露骨なセックスに、妻はすっかりイカされてしまったのでした。
妻のつぎは、わたしです。
妻の目のあることもはばからず、女の姿になったわたしは、無我夢中で彼にしがみつき、
さっき犯した妻に接したときと同じだけの熱量を、全身に感じつづけていったのでした。

妻はわたしに黙って、彼に逢うようになりました。
「家庭はこわさない」という約束を彼は守ってくれましたし、
彼女もまた、「ホストの妻になるつもりはない」と言っていました。
まき散らすほどの金を持った人妻を飽きるほど愛人に抱えている男が、
いまは妻との時間を、もっとも大切にしているようでした。
「あちらは、よそ行きのセックスなんだよ」と、彼はよく言います。
「あちらのセックスが高級レストランのフランス料理なら、
 あんたの奥さんは心づくしの手料理なんだ」とも。
素人妻の素人ぶりが、彼にとってはたまらない魅力だったのです。
そしてさいごに、言うのです。
「素人妻ならどこにでもいるけれど、きみの奥さんだからこそ犯したかった」

妻とのいとなみが少しずつ頻度をあげていったのは、
妻が彼の愛人になってからしばらく経った頃からでした。
わたしも彼とおなじように、両刀使いになり果てていたのです。

寝取らせ話。 ~親友の手引きで妻を襲われた夫と、親友の妻を手引きして襲わせた男~

2016年11月07日(Mon) 06:34:15

夫婦ながら血を吸われました。
さいしょに吸われたのが、わたし。
わたしのほうは、一滴残らず吸い尽されちゃったんです。
どうしてか・・・?って、それはあとになってからわかりました。
やつは、家内のほうがお目当てだったんです。
たまたまわたしの血を吸う前の週、家内の姉の血を吸いまして。
それがどうやら、お口に合っちゃったらしい。
それで家内の血も吸うことになった。いい迷惑ですね。(笑)
で、邪魔な旦那には消えてもらう・・・というようなことだったのでしょう。
わたしのほうはあっけなく、チューチューとひと息に吸い取られちゃいました。
ごく事務的にね、あっけなく。それでもうお陀仏。ジ・エンドです。
家内ほうは、わたしのお通夜の晩に、喪服姿で吸われました。
ええ、衣装のほうも、愉しみだったそうです。
家のなかに入るには、あらかじめ自分も招待されなければ入れないという、厄介なルールがあるそうですが。
そこは、わたしの友人が使われました。
坂谷というその男は長年の友人だったのですが。
彼のところも夫婦ながら吸われちゃっていて、弱みを握られていたんですね。
それでおめおめと、自分の奥さんの仇敵に取り持つために、
未亡人になりたての家内のところに手引きをしたというわけですな。
エエわたしも、ひつぎのなかから内証で引き出されまして、見届けさせられる羽目になりました。
自分で引き込めばよかっただろうって?まだそのときには、そんな気分にはなっていなかったのですよ。
そこは、坂谷にやってもらうことにしました。

吸血鬼を前にした家内は、やはり吸血鬼になりたてのわたしの目にも、とても美味しそうに見えましたね。
ヴェール付きの帽子をかぶった頭から、黒のストッキングのつま先まで、満艦飾の喪服姿。
まだ夏の時分でしたから、黒ずくめの洋装の喪服は重苦しく映りましたが、
ストッキングは薄々で、かっちりとした喪服のスカートによく映えました。
坂谷は、吸血鬼氏をよくたしなめてくれましてね。
発色のよい黒ストッキングになまめかしく染まった家内の足許に生唾を呑み込む吸血鬼に、
「奥さんはあんたをそそるためにあれを穿いているんじゃない、ご主人を弔うためなんですよ」
って、言ってくれていましたが。もちろんやつの耳にまともに入るわけはありません。
やつの不確かな記憶力では、坂谷のやつは、
「たっぷりとした肉づきのおみ脚ですね。ストッキングを穿いたまま辱めてあげると良いですよ」
ってそそのかしたことになってるんです。(苦笑)
どうやら、自分のつごうの良いようにしか、記憶しないことにしているみたいですね・・・

エエ、家内はもう、まな板の上のコイでした。
たちまちつかまえられて、首すじをがぶり!です。
立ち尽くしたままチューチュー血を吸い取られていって、その場で貧血を起こしておひざを突いちゃいました。
おひざを突いて姿勢を崩した・・・ということは、やつにいわせると、
残りの血は好きなように愉しんじゃって構わないという意思表示のあらわれだ、というんです。
勝手な話でしょう?
かわいそうに家内は、四つん這いの姿勢のまま、愉しみ尽くされちゃったんです。
黒のストッキングのふくらはぎに、ぞんぶんに舌をふるいつけられて・・・
足許をガードする淡いナイロン生地が、パチパチとかすかな音をたてて咬み破られていったとき、
家内はあまりの情けなさに歯がみをして、声を忍んですすり泣きをしていました。
エエ、わたしのほうはもう、意思を喪失させられてしまっていて・・・
家内のことを護ってやることもできずに、物陰で立ち尽くしているだけでした。

既婚の婦人を相手にやつが思いを遂げるとき、なにをどうするか?はご存知ですよね?
家内も、例外ではありませんでした。
いちど咬まれてしまうともう、やつの意のままにされちゃって。
わたしの写真のまえで、わたしのことを弔うための装いを、こともなげにむしり取られていったのです。
色白の裸体は黒の着衣によく映えるのだ・・・と、身に沁みて知りましたね。あの晩に・・・

それがやつと家内との、なれ初めでした。
ほどなくわたしは蘇生させられ、いちど死んだことさえうやむやになって、
いまでも彼女の亭主として我が家でふんぞり返っています。
もちろん、やつが訪れる夜は、その地位を譲り渡されてしまうのですが・・・
でもそういうときは、無償で譲り渡すことにしています。
奪ったあとは与えるのが、やつのモットーだそうで。
やつのおかげで、わたしは自分の好みの女を公然と誘惑する権利を得ていました。
もちろん最愛の家内をモノにされてしまった身の上としては、埋め合わせには程遠いのですが・・・
まだしも、多少は溜飲が下がるというものです。
あの坂谷も。
家内のことを手引きしたご縁で――「ご縁」というのも妙ですが――
自分の奥さんのことを、吸血鬼として真っ先に餌食にすることを承諾してくれました。
エエ、正直、美味しかったですね。彼の奥さんはまだ若かったし。
彼の視ている前でやらせてもらったのですが。
その時初めて、亭主のまえで女房の生き血を吸い取ることの痛快さを思い知りました。
いまでは・・・やつに家内を襲わせてやってよかったな、と、思っています。



いつもながら強引だなあとは、思ったんです。
なにしろ、ご主人の血を吸い尽しておいて、その血がまだ胃の腑に満ちているはずなのに、
奥さんの喪服姿にそそられた・・・って、言うんですよ。
お前も手伝え、と言われて、いちどはお断りをしたのですが――だって相手は、親友の奥さんでしたから――結局、手引きをさせられるはめになりました。
亭主の血を吸い尽した以上、彼女の血を吸う権利があるっていうんです。
まったく、無茶苦茶な理屈ですよね・・・
もっともうちの場合も、まずわたしが彼に吸われて、それから妻の番でした。
知らないうちに恥をかかせるのは気の毒だから、すじを通してわざわざお前に案内させたのだ・・・と、本人は大きな顔をしていますが。
血を吸われて貧血を起こし、理性を喪わさせられてふらふらになったわたしは、
招待者がいなければお目当ての獲物が住む家に侵入できないという彼のために、
彼を伴って帰宅したのです。
妻はちょうど、よそ行きのスーツ姿でした。
そう、浮気帰りだったんですね・・・いまにして思えば。
玄関から上がり込むなり、やつは妻にむしゃぶりついて、細い首すじに咬みついていったのです。
キャーとひと声悲鳴をあげると、妻は他愛なく、あっけなく、戸惑うわたしの目の前で、チュウチュウと生き血を吸い取られていきました。

妻の身持ちのほどは、いちいち彼が解説してくれました。
「お、お、奥さんほかの男もたっぷり識ってるね?・・・勤め先で二人。ご近所と二人。
なかなかお盛んなようだよ。ま、このルックスなら、モテるよね?
ご主人、どこまで知ってたの?どこまで許してるの?
みんなご主人よりも、だいぶ年上のようだね。・・・
立場を守ってくれる役員さんとかも、いるようだね。・・・
自分の若さを武器に、打算やそろばん勘定で相手を選ぶのは、ちょっと不誠実じゃないかね?・・・
ご主人は生まれの良さと大人しい性格で選んで、相手の男たちは地位とおカネで選んだんだね?・・・
わしもご主人よりはだいぶ年上だし、わしの世界ではそこそこ実力もあるから、愛人の資格ありだね?
勝手なことを言い尽していくうちに、妻は貧血になって、敢え無くその場に昏倒。
あとはもう、吸血鬼のおもちゃです。
舌なめずりをする卑猥な唇を、肌色のストッキングを穿いた脚になすりつけられて、
高価なストッキングに裂け目をいく筋も拡げられながら、咬まれていったのです。
はい、あちらのほうのお愉しみも、とうぜん・・・
わたしは指をくわえて、視ているハメに遭ったのです。

そんな弱みもありましたから、未亡人の喪服姿に目の色を変える彼のために手引きをするくらいは、わけなくやらされてしまったのです。
趣味のわるいことに、彼はあらかじめ親友のことも目を覚まさせておいて、隣室からいちぶしじゅうを見届けさせたりしたものですから、
「やっぱり止しましょう。お気の毒です」
「黒のストッキングは、あなたが咬み破って愉しむために穿いているわけじゃない。ご主人を弔うための装いなんです」
「奥さんにとってあなたは、夫の仇なんですよ。わきまえてください」
思いつく限りの制止をしたのですが、むしろわたしの表現が、彼のことをよけいにそそってしまったようです。
わたしの妻のときと同じように、親友の奥さんもまた、喪服姿のまま他愛なく、彼の餌食になっていったのでした。

今夜は奥さんを、独り占めさせてもらうよ。あんたは・・・坂谷くんのところに泊めてもらうとよい。
坂谷くんの奥さんは、若いぞ。初めて血を吸うにはふさわしい相手だぞ。
おためごかしな彼の言いぐさで、妻の運命も決まりました。
わたしはすべてを諦めて、親友を我が家に誘ったのでした・・・

そこでの惨劇?は、いちいち描くまでもないでしょう。
死んだはずの夫の親友を目のまえに、妻はすべてを察してわたしに言いました。
「きょうはリビングで寝んでください。くれぐれも、こちらのお部屋を覗かないでくださいね」
婦人としての苦情をわたしの胸に突き刺すと、妻は伏し目になってひと言、「どうぞ」というと、
彼のことを夫婦の寝室にいざないました。
「うちの家内も、こんなふうになるのかな」
一瞬夫の顔に戻った親友はそれでも、「悪いがご馳走になるよ」とだけ言い残して、妻と二人、夫婦の寝室に消えました。
それからの懊悩の一夜――わたしはみすみす、妻の浮気相手の一人に、親友を加えてしまったのでした。

エエ、いまではもう、恨みも敵意も貸し借りもありません。
彼が家に帰りはぐれてやってくる夜は、
わたしはひと晩じゅう家の外で煙草をふかすか、リビングのなかをうろうろしながら、妻の肉体を譲る一夜を過ごすのです。


あとがき
しょうしょう、ややこしい設定ですね。
喪服妻を目のまえによだれを垂らす吸血鬼と、その様子を見守るご主人の気持ちを描いてみたいだけだったんですが・・・
(^^ゞ

斡旋。

2016年10月18日(Tue) 07:55:09

わたしは、吸血鬼専用の女の斡旋屋。
手近な女をやつに紹介して血を吸わせ、悩乱するありさまを観て愉しむのが役得。
きょうはだれを、堕とそうか?

向坂くん、ちょっと打ち合わせ室に。
きょうの獲物は、同じ課にいる若いOL・向坂京子。
個室の打ち合わせスペースに呼び出すと、そこには吸血鬼が待ち構えている。
「アッ、あなたは・・・吸血鬼・・・!!」
相手の正体をすぐに察して棒立ちになり、
壁ぎわに追い詰められて悲鳴をあげそうな口許を両手で抑えるスキに、
やつは彼女の足許にかがみ込んで、
肌色のストッキングに縁どられた脚線美を、唇で冒してゆく――
ちゅうっ・・・
口をひん曲げ、白目になって。
向坂クンは、たちまち貧血を起こしその場に倒れ伏す。
「きみ、まだ嫁入り前なのに、いけないお遊びをしているね・・・?」
吸血鬼は彼女の寝顔に悪戯っぽく笑いかけ、ピンクのタイトスカートをまくり上げる。
ぁぁぁぁぁぁ・・・
声にならない声を、半開きになったドアのすき間から窺って、ひたすらたんのうしてしまった。


脇本さんの奥さんですね?
ご主人のことで、折り入ってお話が。個別にお越しくださいませんか?
ひたすら紳士的な丁寧語をあやつって呼び出したのは、同僚の脇本の奥さん。
40代の熟女の血を吸いたい。そんな吸血鬼のねがいをかなえるための処置だった。
脇本さんには、もちろんナイショ。
約束の夜、公園に現れた脇本夫人の目の前を、吸血鬼の黒マントがさえぎった。
「えっ?ええっ!?あなた吸血鬼・・・!?」
両手で口許を抑える脇本夫人に迫ったやつは、彼女の足許にかがみ込んで、
黒のストッキングごし、ふくらはぎに唇を吸いつけて、ヒルのようにしつっこく、ねばりつけてゆく――
ちゅうっ・・・
口許を弛め、白目になって。
脇本夫人はそれでも、傍らの街灯にすがりつづけて、立ったまま血を吸い取られてゆく。
「気の毒だが、エッチの経験のあるご婦人とは、そちらも愉しむことにしているんでね」
貧血を起こして倒れ伏した脇本夫人のスーツ姿に覆いかぶさって、
濃い紫のフレアスカートをたくし上げると、やつはせわしなく、腰を動かしていった。


喉が渇いた。血が欲しい。今夜は熟女がいいな。
血を吸わせる女の心当たりが尽きかけた夜、やつはまたもわたしに、おねだりをくり返す。
ええ、ままよ。仕方がない・・・。
今夜はうちの妻しかいませんが・・・
恐る恐る切り出すと。やつはヌケヌケと、言ったものだ。
「さいしょからそいつが、お目当てだった」
連れて帰った、深夜の自宅。
お客を連れて行くから、ちょっといいかっこして待っていなさい。
そんなわたしの言いぐさに、妻は口を尖らせて、
「なによ、こんな時間にどうしたのよ。着替えるなんてめんどうくさい」
その代わり食べたり飲んだりの用意はいらないから・・・と、なだめすかして納得させる。
それはそうだ。やつの飲み物は他ならぬ、あんたの血なんだからね。
不承不承の顔つきを押し隠して、よそ行きの顔でやつを出迎えた妻は。
玄関先で思わず「きゃー!」
だって、いきなり首すじに咬みつくんだもの・・・
そのままその場でチュウチュウ吸われ、ノックダウン。
お姫様抱っこされて、夫婦の寝室に直行させられてしまった。
肌色のストッキングのふくらはぎに、やつの唇がそれはしっくりと吸いついてゆく。

ああ・・・
やっぱり妻のときが、一番昂奮してしまった。

よそ行きのセックス

2016年09月18日(Sun) 03:38:42

女房を、吸血鬼に寝取られてしまいましてね。

そんな深刻なことを畑中は、こともなげににこやかに告げる。

でも、家庭を壊さないことを条件に、交際を許してやることにしました。
気づいたときにはもう、完全に支配されちゃっていました。
セックスの相性が凄くいい。でも一番愛しているのはあなた。だから、別れたくない・・・
って、言い張るんですよ。
面と向かって「愛している」なんて言われたの、新婚以来じゃないかな。きっと。
それで、彼と逢うときは私が、送り迎えしてやることにしたんです。

いつもね、こぎれいなカッコして、出かけていくんですよ。あいつ。
でも帰りは、みるかげもなくよれよれです。
エエ、だって、相手が吸血鬼でしょ?
血を吸い取られて貧血にはなるし、あっちのほうもしつようならしいんです。
女房のやつ、そこがまたいいとか抜かしやがるから、困ったもんですよ。
よほど、ぞっこんなんでしょうな。
一人で歩いて帰れないから、私が迎えに行かなきゃならないんです。
私にナイショだったころは、彼が家まで送ってくれたらしいんですがね。
吸血鬼がこう、街なかにあふれるようになってからは、やっこさんもお相手が増えたらしくって。
女房の番が終わるとすぐに、べつの女が相手するんです。
ちょうどお互いのつごうが、うまくかみ合ったわけですね。

迎えに行く時はね、部屋のなかのようすを、覗いていいことになってるんです。
よそ行きの服を着てると、気分もひきたつんですかね。
家の布団のうえで義理マンセックスをやるときとは、大ちがいなんです。
私が視てるの知ってるくせに、よけいに燃えやがっていたりして。
でも、それ視て昂奮しちゃう私も私なんですけどね・・・
ともかくね、自分の女房が、まるでAV女優みたいな、よそ行きのセックスをしているんです。
よそ行きの服着てるときは、セックスもよそ行きになるんでしょうかね。
エエ、きょうもこれから、お迎えです。

そういえば、さっきから奥さんの姿をお見かけしませんね。お出かけなんですか?
え、さっき出ていった。行先も言わずに?
奥さん、最近顔色悪くありませんか?
いえね、女房のやつと入れ替わりに来ている女の人って言うのが、なんとなくあなたの奥さんと似てるんですよ。
大きな帽子を目深にかぶって、顔はヴェールで隠してるんで、なんともいえないんですけどね。
女房はそのご婦人とすれ違うたび、言うんですよ。「あの人強敵」って。
どうです?これからごいっしょして、確かめてみませんか?
よけいなお世話でしたら、とりあえず一人で行ってきますけどね。
では・・・のちほどアチラで。^^

悪友の部屋。

2016年08月29日(Mon) 00:09:55

悪友の部屋はいつも、黴(かび)臭いような、精液の匂いに充ちている。
四十過ぎても、まだ独身。そのくせ女にはこと欠かない。
妻子持ちのこちらとしては、うらやましくなるような身分だが。
きょうの悪友は、ただならぬことを口にした

――きょうここに来るの、お宅の奥さんだから。

って。

えっ?えっ?
信じられない。いつからそんなことに??
矢継ぎ早のわたしの問いを、くすぐったそうに受け流しながら。
やつはひと言だけ、応えてくれた。

――でも安心しな。ちゃんと避妊はしてるから。ほら。

たしかに枕元のティッシュの隣に置いてあるのは、数個の避妊具。
一個ではなくて、数個。
あんた、いい奥さんもらったな。
奥さんのときだけは、ほかの女のときよりも多く用意してるんだぜ?
羨ましそうにわたしを見る悪友の視線を、まともに見つめ返すことはできなかった・・・

時ならぬ車のエンジン音に、やつは色めきたつ。
――ほら、ほら。奥方のお出ましだ。さっさと隠れた隠れた。
窓越しに外を見ると、たしかに妻の車。
そして運転席には、ごく見慣れた横顔が、そこにあった。
やつはわたしをせきたてて立たせると、
隣の部屋には覗き穴があって、ここから覗けるようになってるからと、
口早に告げながら、隣室へと促した。

起ちあがりざま、わたしはベッドのうえに手をやって、避妊具一式を取り払う。
――できちゃったらさ、ウチで育てるから。

たいへんなことを口にしてしまったくせに、なぜか声が上ずるのを抑えることができなかった。

あなたも来ない?

2016年08月08日(Mon) 04:43:41

あなたも来ない?血を吸われるのって、楽しいのよ。
ランチの後そんなふうに気軽に声をかけられて。
どうせいつかは吸われるのだから・・・と、ついていってしまったあの日。

そこには男たちがおおぜい待ち構えていて。
よく見ると、自分を入れた女性の数と、同じ頭数だった。
助かるわ。来てくれて。ひとりあぶれちゃうところだったのよ。
私は数合わせで連れてこられたのか?
そんなことを抗議するゆとりは、すでになかった。
女たちはだれもが、血に飢えた吸血鬼たちに自分から組み敷かれていって。
あれよあれよ・・・という間に、自分も畳のうえに抑えつけられていた。
首すじに走る初めての疼痛は、チクリと胸まで届く鋭い痛み。
それは甘美な痛痒さに変わっていって、いつか夢中になって、血潮を舐め尽されていた。

その場で犯されてしまうのは、この街の主婦のあいだでは常識――
その場に居合わせた女たちは皆、夫の同僚の妻たちだった。
お互いさまね。きょうのことはご主人たちには、内緒、ナイショ・・・
さいしょに声をかけてくれた、夫の上司の奥さんは。
まるで呪文みたいに、そんなことを囁きかけてきて。
ほかのひとたちも皆、その奥さんに同調するように。
申し合せたように、頷きあっているのだった。

それからは、娼婦のような日常――
夫を会社に送り出すと、
だれかれと言いだすまでもなく、いつものランチのお店に集まり合っていて。
だれかれと言いだすまでもなく、あの場所に脚を向けていた。

だれもが申し合せたように、小ぎれいな格好をしていて。
だれもが申し合せたように、真新しいストッキングを脚に通していた。
鼻息荒く迫ってくる男たちに、身に着けたよそ行きのブラウスやワンピースをはぎ取られて。
ストッキングを穿いたまま、ふくらはぎや太ももや、もっと上までも――熱い唇を吸いつけられていった。

それが慈善事業でもあるかのように、
だれもが唯々諾々と、むしろすすんで男どもの相手をしてやっていて。
めくるめく輪姦の場に、身をゆだねていった。
まるで不倫ドラマのヒロインになったように、夢見心地になりながら。

夫がそれを知るのは、時間の問題。
けれども、吸血鬼と人とが共存して暮らすこの街では、それはたいした問題ではない。
慣れていないのは、都会育ちの私たちだけ。
夫は戸惑いながらも状況を受け容れてゆき、黙認することを約束してくれる。
それを良いことに私たちは、夫の勤務中に逢引きを遂げる。
娼婦よろしく、小ぎれいな服を身に着けて。

夫たちが顔つき合わせて
打ち合わせをしたり、
書類を作ったり、
取引先に会ったりしている時に。
私たちは夫たちと同じ顔触れで、
ブラウスをはだけられたり、
スカートをたくし上げられたり、
ストッキングを破かれたりするのだった。

あなたも来ない?血を吸われるのって、とっても楽しいのよ。
吸われ過ぎて具合を悪くしたご夫婦の代わり、新たに赴任してきた人の奥さんを。
きょうは私がそういって、楽しいサークルに引きずり込んでゆく。

或子爵家の崩壊

2016年06月21日(Tue) 06:17:22

大きなボストンバックを両手に抱え、敏江は追われるように家を出た。
きのうまでは平穏に暮らしてきた家。
古風で気位の高い姑の、多少厳格な圧制があるにしても、自分が理屈抜きで折れることで、かろうじて家族の平安を支えることができた家。
そんな家を彼女は失うことになる。

他行先で引き留められて遅くなった帰り道を吸血鬼に襲われて、
生き血を吸いとられたばかりか、あまつさえ凌辱まで受けてしまったことが、敏江の生活を一変させた。
舅や姑の怒りをかい、夫さえかばう側には立ってくれなかった。
それどころか、報せを受けた実家までもが、体面を気にするあまり、彼女の里帰りを拒んだのだ。
帰る家とてない、行き先のない旅路に彼女は就くことを余儀なくされた。

見上げれば、鉛色をした空からは無情の雪。
その雪のなかを行き倒れるまて歩み続けるしかないのか。
悲嘆を通り越して感情をなくした彼女は、見送る人のない門出を独りとぼとぼと歩き始めた。

婚家だった家の門が、時おり振り返る視界から消えたとき。
目の前をひっそりとした人影が遮った。
この感覚――思い出した。彼のおかげで妾はすべてを喪ったのだ。
きっと睨んだ視線を軽く受け流して、男は慇懃に会釈した――奥さま、きょうはどちらまでお出かけかな?

お出かけですって?お出かけですって?
みなまで言えずに敏江は不覚にも嗚咽を洩らした――自分の操を劣情のままに奪い、こんにちの非運を招いた男にれんびんをかけられるなど、恥辱の上塗りに過ぎないはずなのに!
しかし男の態度はどこまでも変わらない。
敏江がこうして住み処を喪うことまでもあらかじめ予期していたかのように。
「奥さまがこうなった理由の大半は私にあるようだ。責任をとらせていただこう。ついていらっしゃい。ほかに行くところもないご様子だから」

あてがわれた一室は広々としていて、家具調度まで行き届いていた。
ボストンバックの中身はあたかも予定されていたかのようにすんなりと、それら調度のなかに吸い込まれていった。
滞在費はいっさい、男がめんどうをみてくれるという。
仇敵同然の男の好意など受けるわけにはいかないと言っても、聞き入れてもらえなかった。
男は言った。
「その代わり、奥さまのお情けをいただきたい」
と。
それがなにを意味しているのか、大人の女性ならわからないわけはなかった。
まして一度は「お情け」を受けてしまった身――
男がわざわざ立場を入れ替えて、献血を求める言い回しをしてきたことが、敏江の自尊心をかろうじて救っていた。
敏江は男に、無言の承諾を与えた。
夫に仕えて二年。親どうしの決めた縁組みで、さして愛情豊かとはいえない夫だった。
それでも一生添い遂げる覚悟で敬意を尽くして仕えつづけ、心の支えとしてきたはずだった。
そんな夫さえ、世間体と実母の機嫌を憚って彼女を見放した。
もはやここで生きていくしか、途はないのだ。

吸血鬼は意外なくらい、敏江に敬意をもって接した。
敏江の部屋に現れると手の甲に接吻をし、それからおもむろに首すじを咬んだ。
初めてのときのような荒々しい振る舞いは見せずに、上質のワインを賞玩するようにして敏江の血を嗜んだ。
敏江が貧血を覚え身体をふらつかせると危なくないようにと支えてくれて――それからやおらベッドに押し倒していった。
そして明け方にいたるまで、敏江を愛しつづけるのだった。

身体の調子が思わしくないときには、あえて敏江を酷使しようとはしなかった。
広い邸内には、敏江と同じような女たちが、なん人も囲われているらしい。
当面の欲求はべつのだれかを相手に選ぶことで、満たしているようだった。
むろん嫉妬など感じなかった。
奴隷ではない代わり、妻や愛人にされた実感も乏しかったから。
恐らく自分は、彼の特殊な嗜好を満足させる対価として、制約はあるものの恵まれたくらしぶりという優遇を受ける関係なのだと、敏江は理解した。

外部への連絡は自由だったし、外出を禁じられた覚えもなかった。
けれども敏江はどこにも連絡を取らなかったし、出かけようとも思わなかった。
婚家からばかりか実家からも縁を切られた女が、今更どこに行くというのだろう?

唯一違和感を覚えるのは、すっかり自らの専有物にしてしまったはずの敏江を、彼がいまだに「奥さま」と呼びつづけていることだった。
それが奇妙な背徳感を敏江に覚えさせた。
自分はまだ婚家の真名川子爵家の人間で、子爵夫人のままこの邸に留め置かれ、生き血を弄ばれ貞操を冒されつづけている――そんなあらぬ錯覚に敏江は戸惑い、そして乱れた。
吸血鬼を自室に迎えると、彼から性急にせがまれる献血行為は受け入れてもそのあとに必ず求められる淫らな振る舞いを、拒み通そうとするのがつねだった。
子爵夫人としての誇りもあらわに、凌辱という不名誉からわが身を守ろうとする――飢えた牙と同じくらい容赦なくつき入れられてくる、あのなにもかも忘れて敏江を夢中にさせてしまう淫らな硬い筋肉の棒を、股間の奥ふかくにまで受け入れてしまうまでは・・・

数ヵ月が過ぎ、敏江は意外な人の訪問を受けた。
かつての夫、真名川子爵だった。
引き合わせてくれたのはほかならね吸血鬼自身だった。
敏江のことが忘れられず、両親との縁を切り家を棄ててきたという。
子爵家は弟が嗣ぐことで決着をつけ、再び二人で暮らしたい――と。
いちでは喪った、平穏で常識的な日常の記憶が、敏江の胸を一息に満たした。
やはり妾が心から望んでいたのは、人並みな暮らしだったのだ。
「あなたのことを奥さまといいつづけた訳がわかったかね?」
吸血鬼は微笑んでいた。
血を吸いつづけていればわかる。どちらの世界が似合いなのかと。あんたはやはり、人の世界に生きるべきなのだ・・・

でもー敏江は反芻する。わたし、元どおりには戻りきれない。
吸血鬼は子爵をみた。あんたはどうなのかね?というように。
「ここの執事をさせていただこうと思うのだよ。ほかに仕事ということをしたことがないのでね。なにもかも、一から教わろうと思っている」
敏江は値踏みをするような目でかつての夫を見、そしてゆっくりと頷いた。
「このかたに召されているときだけは、子爵夫人であることを忘れてもよろしいですか?」
「お前はどこにいてもわたしの妻だ。たとえこの方の腕のなかでも・・・」
熱に浮かされたように不徳を語る夫の首すじに、ひっかき傷のような痕を認めた敏恵は、夫の真意を理解できたような気がした。
同じ痕を持つもの同士の連帯が、夫婦のあいだを初めて行き来する。
夫は話しやめなかった。彼は吸血鬼に言った。妻の生き血を吸い操を汚した、仇敵であるはずの男を相手に。
「妻が貴方のお目に留まったことを誇りに思います。
 このひとの操を初めてむしりとった、貴方の男ぶりにも敬意を表します。
 その証しに、わたしの家の名誉を汚す権利を、子爵夫人の貞操もろとも、謹んで進呈いたします。
 貴方がお望みになるのならいつでも、夫婦のしとねを悦んで明け渡すでしょう。」
世間体のすべてを振り落とすことができた夫を、敏江は眩しげに仰ぐ。
すべては決まった。
かつての夫は再び、敏江の夫としてこの邸に住み込み、自分のすべてを支配する男のために奉仕する。
おそらくは。
夫の前で抱かれる日常が、待ち受けているのだろう。
そのときには誠心誠意、汚される子爵夫人を演じるのだ。
そうすることが吸血鬼に歓びをもたらし、おそらくは夫にも・・・べつの歓びを与えるのだと。
敏江は本能で察していた。

数か月後。
子爵家は投手の不行儀により爵位を剥奪された。
どういうルートを通じてか、現当主が吸血鬼と友好関係を結びその夫人を捧げたといううわさが、上流階級の社交界に広まったのだ。
新当主である夫の弟が、婚約者である華族令嬢を伴って邸を訪れたのは、そうしたころだった。
未来の花嫁の純潔な血を捧げるために。
兄嫁の身体的負担を軽減するために。
まことしやかな文句を口にする子爵の弟の首すじにも、夫や敏江が帯びているのと同じ引っ掻き傷が浮かんでいた。
新当主の婚約者はその夜、羞じらいながらも吸血鬼の腕に抱かれていった。
花婿の面前での破瓜の儀式が厳粛に熱っぽく執り行われたのは、いうまでもない。
そして、その一週間後。
あの厳格な姑までもが、夫に伴われて吸血鬼の軍門に降った。
三人の女たちのなかで、夫のまえでの行為をもっともあらわに羞恥したのは、もっとも年配の姑だった。
すでに吸血鬼の情婦となった嫁たちは、羞じらいに満ちた姑の振る舞いを、嬉し気に見守る。
これからは、妾たちの不義密通も、黙認されるのだ――そんな安心感が、ふしだらに堕ちた女たちを満たしていた。

いま、吸血鬼館は表向き、元子爵家として近隣に通っている。
吸血鬼は家を彼らに譲り、自らはその邸の奥まった離れに棲まいながら、表向きは以前と同じ権勢を帯びた貴族の血すじを、陰で支配している。
おそらくはこれがもっとも平穏なありかたなのだと、邸に棲むだれもが自覚していた。

吸血鬼の部屋から辞去すると、敏江は姑と行き会った。
齢がらには不似合いに派手な柄の着物に袖を通した姑は、ふた回りも若く、嫁の目にも映る。
姑はにこやかに言った。
「わたくし、これからお招(よ)ばれなのですよ。貴女も――そうね、近々ご実家と仲直りできるとよろしいわね。
 その気になればいつでも、仲介の労を取らせていただきますからね。
 なにしろいちばん怒っていたわたくしが、貴女とあるじ様との仲を認めているんですもの。
 仲直りできないわけが、ございませんわ。
 貴女のお母様も、一日でもよりお若いうちに、お血を味わっていただけると、よろしいわね・・・」

不味い。

2016年03月30日(Wed) 07:49:06

不味い。
男の放った第一声は、はなはだ無礼だった。

家のなかにさ迷い込んできたその吸血鬼に、
夫婦ながら首すじを咬まれて。
血を抜かれて身じろぎひとつできなくなった、わたしの前。
抑えつけられた首すじに、やつはがぶり!と食いついて。
ひとしきり妻の生き血を吸い取った挙句、そう言ったのだ。

吸血鬼は人妻の血を吸うと、例外なく犯すという。
夫の目のまえで遂げられた屈辱の儀式を、妻は歯噛みして耐えた。


くやしいったらないわっ。もうっ!
あんなにひとの血を吸い取っておいて、「不味い」だなんて!
妻はプンプン怒って、半裸に剥かれた身を起こし、
身づくろいを、というよりもシャワーを浴びに浴室に駆け込んだ。
犯されたことなど、犬に咬まれたほどでもないらしかった。


それから妻の精進が始まった。
エステサロンに通ったり。
スポーツジムに通ったり。
血が美味しくなる・・・と思われるあらゆることに手を出して。
ある晩勤め先から、嬉々として帰宅してきた。

やったぁ~!美味しいって言わせたっ!
飛び跳ねるばかりにしてはしゃいだ妻の首すじには、新たな咬み痕が。
真っ白なブラウスに、バラ色の血をしたたせたまま。
スケスケのパンストを、ブチブチに咬み破られたまま。
でもそんなことは、惜しくもないらしい。
美味しいって言わせたっ!
美味しいって言わせたっ!
はしゃぐ妻の背後には、あのとき妻をモノにした、あの男が。

もう少し、お邪魔をするよ。夜道を歩く奥さんが、あまりに魅力的だったのでね。
こないだのひと言は、謹んで訂正させていただく。
はい、どうぞ。
妻の名誉回復に機嫌を直したわたしは、つい応じてしまっていた。
なにかがおかしい――そう感じながらも。
じゃあごゆっくり。
わたしはそういって、書斎に戻る。
帰宅そうそうの妻のスーツ姿を土間に抑えつけ、のしかかってゆく吸血鬼に、妻を独り占めにさせてあげるため。

吸血鬼の屋敷のまえに佇む妻。 娘の身代わり(夫目線編)

2015年12月29日(Tue) 13:32:50

逃げるだけの理性のあるものは、街から逃げた。
逃げることのできないものだけが、あとに残った。
あとに残ったものは、街を支配した吸血鬼たちに、つぎつぎと血を吸い取られていった・・・


その男は、忍田という名前でした。
勤め帰りの夜、とつぜん前に立ちふさがって。
「忍田といいます」
とだけ名乗ると、すぐにすれ違って・・・振り返るともう、姿はありませんでした。
口許についた真っ赤な血のりだけが、記憶に残りました。
家に戻ると、咬まれたばかりの娘が、妻に介抱されていました。
真っ白なハイソックスに、赤黒い斑点が散っていて・・・
男の口許に光る血のりと、すぐに符合しました。

「あなた、優香についていらして下さいな。せめて当校の時だけでも」
妻の希(ねが)いは、残酷なものでした。
血を吸われる習慣を持ってしまった娘のあとを尾(つ)けていって、
近くの公園で首すじやふくらはぎを咬まれるのを見届ける日常。
娘が貧血に耐えて、無事登校するのを見届けてから、わたしは通勤の道に戻るのでした。
あれ以来。
娘が真っ白なハイソックスを履くことはなくなりました。
首すじはもちろん、好んで脚にも咬みつく吸血鬼。
紺のハイソックスにガードされたふくらはぎは、
その発育の良い脚線をなんども侵されて・・・
そんな光景を、さいしょは週一、その後は二日にいちどくらいのペースで見せつけられたわたし。
いつか、不思議な昂ぶりに息をつめて、様子を窺っている自分に気づいていました。
娘は慈善事業のような気分で、うら若い生き血をサーヴィスしているのだ。
時にはほほ笑みさえ泛べながら紺のハイソックスのふくらはぎを咬ませてゆく娘を遠目に見やりながら、ことの真相をかぎ分けてしまっていたのです。

「代わりに、わたしの血を吸ってくれ」
忍田にそう願い出たのは、娘が家を出る間際、貧血を起こしてその場にへたり込んだ日の朝でした。
ところも同じその公園で。
男はわたしの首すじを咬んで、すこしだけ血を吸いました。
けれども男は言いました。
「悪いが、どうしても男の血は受けつけないのだ」と。
そしてもうひと言、わたしに囁いたのです。

あんたの奥さんに、そう伝えてくれ・・・

軽くひと咬み、そしてほんのわずかな血。
それを許してしまったことが、わたしの心の内部を、裏腹に変えてしまいました。

ああ、そう・・・
わたしは虚ろに呟くと、振り向いた視線のかなたに、もう男はいませんでした。
近くの公衆電話から。
わたしはなぜかドキドキしながら、家に電話をしました。
「あなた・・・?」
切迫した妻の声が、なぜか快く耳に響きます。
追い詰めた獲物の息遣い。
どうしてそんなことを、思ってしまったのでしょう?
けれどもわたしは、口を開きました。
自分が従属を誓った獣に、妻の生き血をあてがうために。
「やっぱり、きみが逢ってくれ。あちらのご希望なんだ」

夕刻――
わたしは忍田の屋敷のすぐ前にいました。
ご丁寧にも、勤務先に電話がかかってきて。
(娘から聞いたのでしょうか・・・)
教えてくれたのです。
ご厚意に甘えてご馳走になるから、念のため教えておきます という前置きで。
わたしは会社を早退し、すべてを心得ているらしい上司も、無届の早退を黙認してくれました。

忍田の背中の向こうに、妻がいました。
以前なら、なにをおいても間に割って入るつもりになった、切迫した情景です。
それが今では。
血に飢えた悪しき友人の目のまえに供えられた、美味しい獲物。
妻の怯えさえ、わたしの狂った網膜には、そんなふうに映っていたのでした。
妻は、怯えきった表情をしていましたが、
娘を護るために一歩も退かない母親の決心が彼女を支えているようでした。
忍田にもそれが伝わったのか、すこしきまり悪げに頭を垂れていました。
今朝、わたしの血を吸うようにと請いを入れたときとおなじ態度でした。

みすぼらしい初老の男の前に、花柄のワンピース姿の妻が、輝いて見えたのは、夕陽のせいばかりではなかったはず。
血に飢えたものと、健康な血潮を身体いっぱいに宿したものとの対比が、妻をなおさら眩く見せたのでしょう。
生き血を吸われる側ではなく。
生き血を吸わせる側に立ってしまったわたしには。
妻の怯えさえもが、鳥肌の立つような快感に思えてしまっていたのです。

忍田は妻に言いました。
娘さんは処女だから、手加減をして愉しませてもらっている。
しかし、大人の女には、手加減はしない。
どういう目に遭うのかわかったうえで来ていなさるのか と。
妻は恐怖にこわばった表情から、かろうじて感情を消しながら、言ったのです。
――主人と相談したうえで、伺いました――

「わかった。来なさい」
忍田は引導を渡すように、妻にそう告げました。
妻の運命は決まってしまったのです。


いちど鎖された扉には、鍵がかかっていませんでした。
――娘さんのときのように見届けたいのなら、勝手に上がってもらって構わない。
忍田は電話口でそうわたしに告げましたが、約束を守ってくれたのでした。
敷居をまたぐときの、わずかな床のきしみさえ気にしながら、わたしは男の屋敷に上がり込みました。

半開きになった扉のまえ。
ここから先は、入ってはいけない
扉は開いていながらも、そう告げているようで・・・わたしはなにもかもが終わるまで、そこで佇みつづけたのです。

ベッドの上に腰かけて、床に伸べたふくらはぎを、ストッキングのうえから舌でいたぶられながら、眉を顰める妻。
男はそんな妻の気配を背中で感じているくせに、くくく・・・うひひ・・・と舌なめずりをくり返しながら、ピチャピチャと露骨な音をたてて、淡いナイロン生地を波立てていました。
ストッキングを穿いた脚をくまなくよだれで濡らしてしまうと、
忍田は妻に見えないように、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、牙を突き立てていきます。
こちらからはわざと見えるような角度――これから咬むぞ、と、わたしに告げてきたのです。
じわり。
うそ寒い部屋のなかで佇むわたしは、冷たい汗を噴き出していました。
妻が咬まれて、顔をしかめつづけているあいだじゅう・・・

よそ行きの花柄のワンピースを着たまま、バラの花をしわくちゃにさせながら。
ワンピースのすそをお尻が見えるまでたくし上げられて、犯されてゆくありさまを。
足に根が生えたようになったわたしは、一部始終を見届けていたのです。
妻主演のポルノドラマを、ただの男の目線で愉しんでしまいながら・・・


やつは、妻の生き血を気に入ってくれている。
やつは、妻の身体を気に入ってくれている。
やつは、妻のことを愛してくれている。

妻は、戸惑いながらも、やつのことを受け容れてしまった。
妻は、歯噛みしながらも、やつに凌辱を許してしまった。
妻は、心ならずも、やつの奴隷に堕ちてしまった・・・

いろいろな思いが交錯する中、わたしは玄関へと足を向けていました。
むつみ始めたふたりが、気を散らさないように。
やつが妻のことを、独り占めできるように。
成就された一方的な恋情が、深められてゆくために――


あのかたと、お付き合いさせていただきます。
でも、あなたと別れるつもりは、ありません。
あなたの妻として、あのかたに抱かれたいと思います。

わたしよりも二時間もあとになって帰宅した妻は、
謝罪するように無言で三つ指を突いた後、棒読みするような抑揚のない声色でそう告げました。
そして、わたしの返事もまたずに、台所に起っていって・・・いままでと寸分違わぬ日常が、再開されたのです。


週に二、三回、妻は娘と入れ替わりに、忍田に呼び出されて出かけていきます。
よそ行きのスーツやワンピースに装い、きっちりとメイクをキメて、
いつもより数段見映えのする風情で、不倫の宿へと脚を向けるのです。
破かれると知りながら、真新しいストッキングを通した脚で、大またな歩みを進めて――
あれほど嫌がっていた、足許へのいたぶりも。
あれほどためらっていた、首すじからの吸血も。
あれほど忌んでいた、吸い取られた血潮で装いを濡らされる行為までも。
妻ははしゃぎながら、嬉々として受け入れてゆくのです。
わたしに視られていると知りながら、
あえてわたしに見せつけるようにして・・・


恐怖の面差しのまま、初めて男の屋敷のまえに佇んだ妻の影を。
毒蜘蛛の仲間に堕ちたわたしは、体液を吸い尽されてしまえと願っていました。
あのときから――
わたしとわたしの家族とは、崩壊を免れるのと引き換えに、違う彩りに染められていたのでした。

いやらしいです。迷惑です・・・

2015年12月14日(Mon) 02:29:33

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
スーツ姿の妻は、ふくらはぎを咬まれていった。
穿いていた肌色のストッキングを、むざんにびりびりと、破かれながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
ブラウスのえり首のすき間から、妻は首すじを咬まれていった。
赤黒い血潮をぼとぼとと、真っ白なブラウスに散らされながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
妻は素肌を、吸われていった。
はだけられたスーツの合間から、素肌をチラチラ覗かせながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
妻は下着を、はぎ取られていった。
小娘みたいな恥じらいで、頬を桜色にほてらせながら。

こうなることを、本能で予期していたのか。
生き血を吸われる最初から。
妻は恥じらいつづけていた。
ブチリ、ブチリと、ブラジャーの吊りひもを引きちぎられて。
サリサリ、パリリと、ストッキングを引き裂かれて。
はぁはぁ、セイセイ、あははははぁん・・・っ。
切なげな吐息に、媚びをいっぱいにまみれさせながら。
妻はわたしのまえで、堕ちてゆく――

いやらしいです。迷惑ですよ。
困惑の色をわざとらしく滲ませながら。
わたしは吸血鬼に、抗議をしたけれど。
もうふたりとも、聞いてはいない。
ただひたすらに、乱れ合って――
服従を悦んで受け容れる妻に、征服された妻を視て歓ぶ夫――
わたしたちは互いのまえで、堕ちてゆく――

呼び出された妻のつぶやき。 ~吸血接待業。 3~

2015年12月07日(Mon) 08:14:29

そんな怖いこと止めて・・・って、あたしは言ったんですよ。
いくら多重債務があるからって、吸血鬼の相手をするなんて。
でも支払いが明日に迫った数百万円をどうすることもできないで、主人は出かけていきました。
あくる朝支払いを済ませて主人が家に帰ってくると、久しぶりに抱き合いました。
生きてくれていてよかった って。
身体に無理がないよう、依頼が来るのは多くて週に一度。
それでどうにかやっていけるからって。
主人はあたしまでこの商売に身を浸さないで済むようにと、考えてくれているようでした。
あたしで良かったら、いつでも代わりをするからと。
そうあたしが声をかけたとき。
主人は怖ろしいことを、言いました。
セックス経験のある女性の血を吸うときはね、セックスまで強要されちゃうんだよ。
あたしは、主人しか識りませんでした。

そんな主人から電話がかかってきたのは、アルバイト先から。
「アルバイト」というのは、自分の血を吸わせるという、本業よりも収入の多いあの副業のことを口にするときの、夫婦だけにわかる隠語でした。
そろそろ寝ようという刻限でした。
出てこれないか?着替えの服と、ストッキングの穿き替えをもって。
主人の言わんとしていることは、すぐに察しがつきました。
「気が合えば、奥様を紹介頂ける方ならなお可」という、主人を指名した人の条件を思い出しました。
わるい人ではないのだろう。
主人の声色からそう判断したあたしは、よそ行きのスーツに着替え、地味な肌色のストッキングを脚に通して、家を出ました。

主人の前でしたからね。
独りで待ち合わせるよりも、心強かったです。
初めて首すじを咬まれる時も、主人があたしのことを後ろから抱きとめて、介添えしてくれました。
主人の前でしたからね。
二人きりでお逢いするよりも、昂ってしまいました。
すっかり血を抜かれた主人は、犯されてゆくあたしのことを、どうすることもできないでいるようでした。

あなた、視ないで・・・視ないで・・・っ!って、言いながら。
いちど感じてしまうともう、止め処がなかったんです。
あなた、視て・・・視て・・・御覧になって・・・
あなたの奥さん、牝になっちゃうわっ。

それ以来のことでした。
夫婦そろってアルバイトに行く機会がグッと増えたのは。
お相手があの方に、ほとんど限定されていったのは。

協力の風景。

2015年11月27日(Fri) 08:07:12

「奥さんのパンスト脚を、愉しませてくれないか」
村に赴任して初めて打ち解けたその男は、わたしと同じパンストフェチだった。

わたしは嫌がる妻の両肩を抑えつけて、
男はタイトスカートから覗く、肌色のストッキングを着けた妻の脚を、
隅から隅までくまなく、舐めくりまわしていった。

くしゃくしゃによじれてゆくストッキングの脚に、つい昂奮してしまったわたしは、
同じく昂奮をオーバーランさせた男が妻を犯しにかかったのに、
両肩を抑えつけた掌から、力を抜くのを忘れていた。

二度、三度・・・
くり返される吶喊に、いつか妻の身体も、熱っぽく反応していった・・・

共存の風景。

2015年11月27日(Fri) 08:00:53

「セックスは素晴らしいけど、主人のことを愛しています。離婚までする気はありません」
妻はきっぱりとした口調で、自分のうえにのしかかっている男に、そういった。
男は半裸。
妻ははだけられたブラウス姿。
腰から下は、スカートをはぎ取られた下肢がむき出しになっていて、
びりびりに破かれたストッキングだけを、まだ足許にまといつかせていた。

夫の前での強姦は、夫婦ともにこたえたけれど。
わたしよりもはるかに逞しい身体に圧倒された妻は、
いつの間にか激しく腰を振って応えてしまっていたし、
真っ先に風呂上がりのまま縛られたわたしは、
そんな妻の痴態に昂った証拠を、じゅうたんのうえに粘液として吐き出してしまっている。

「そういうわけですから」
妻はわたしと初めて目を合わせ、少しだけ口ごもる。
「わたし、このひとと時々、お逢いしますから」
「ああ、いいよ。ぼくも歓迎するから」
思わず口にしてしまったひと言に、妻は「うれしい」と口にした。

わたしのまえの一対の男女は、再び無言で、熱いまぐわいに戻っていった。

妻の浮気を許した夜。
それは、結婚記念日のつぎに、夫婦のあいだで記憶される夜となった――

和解の風景。

2015年11月27日(Fri) 07:53:45

妻を隣室に引きずり込んだその男は、
ぴたりと鎖されたドアの向こうで、
ひぃひぃ・・・
はぁはぁ・・・
声だけを熱く洩らして。
一時間後素っ裸の姿で、ひとりで部屋から出てきた。

ストッキング破いちまった。弁償するからね。
男はわたしに、札束の入った封筒を渡した。

これで家内に、あんたの家に伺わせるときのスーツを買わせましょう。
わたしはそういうと、さいごの夫の意地を見せたくなった。
一発だけ、あんたのことを殴ってもいいですか?

男はいさぎよく、無言でわたしのまえにスッと立った。
手加減したつもりだったけれど、男はわたしに一発叩かれると、
部屋の隅まで吹っ飛んだ。
だらしなく尻もちをついた男が起ちあがるのに手を貸しながら、
わたしはひと言、「おめでとう」と、いってしまった。
男は悪びれもせず、「ありがとう」と応えた。

部屋からやっと出てきた妻は、スカートだけを着けていて、
自分をモノにした男に向かって、「ふつつかでした」と頭を下げた。
「ごちそうさま。おいしかったですよ」
男はそういうと、妻のお尻をスカートのうえから撫でつけた。
手つきがひどく卑猥だったけれど、わたしは精いっぱいの寛大さを表情にして応えていた。
「お口に合って、なによりでした」

「お茶淹れますね」
むき出しにされたおっぱいを揺らしながら、
打ち解けた男ふたりを背にすると、
妻はいそいそと、台所に立ってゆく。

固めの杯は、妻の淹れた玉露茶だった。



あとがき
コチラのほうがあとから浮かんで、先にかけてしまったのでした。
A^^;
10分くらいで描いたかな?
どこかに似たようなお話が、あるかもしれないですが・・・
^^;

妻と結婚していただけませんか?

2015年11月17日(Tue) 08:02:37

妻と結婚していただけませんか?
青葉さんの申し出は唐突だったが、
置かれた状況を考えると、さほど乱暴なものではないともいえた。
ここは病院の個室。
青葉さんはベッドのうえで、死病を相手に、もうじき決着のついてしまう戦いをつづけていた。

申し出を受けたとき。
奥さんの鵜紀乃さんも同席していた。
思い詰めた大きな瞳が、わたしのことをまっすぐに見つめている。
美人というものは、悲嘆さえも魅力にすり替えてしまうらしい。
看病疲れのやつれさえもが、かえってなまめかしかった。

断ってくれてもいいんですよ。
あなたは信用できる方のようだから申し上げるが、
妻には吸血鬼の愛人がいます。
それは夫のわたしにしか見えないが――
妻と結婚してくださるのなら、彼のことも引き受けていただくことになるのだから。

ほんとうに、よろしいのですか?
思い詰めた大きな瞳は、先刻の病室でと同じくらい、ひたむきにわたしに向けて注がれている。
ここは二人きりのホテルの一室。
ひんやりとした畳の感触が、薄暗い室内のなかで、かえって身体のほてりを伝えてくる。
初婚でいらっしゃるんですよね?
女の口調は念を押すような気づかわしさを漂わせていた。
それはわたしのことを値踏みするとか、
婚前から続いているほかの男との不倫関係を認めてほしいというようなあざとさとかとは、遠いものがあった。
はい、だいじょうぶです。
わたしは彼女の懸念を押しのけるように、自分でもびっくりするほどはっきりとした声で、こたえを返していた。

では・・・
鵜紀乃さんは起ちあがると、ブラウスの胸元に手をやって、ボタンをひとつづつ、はずしてゆく。
それからストッキングを片方脱いで、ショーツをつま先まで滑らせると、丁寧に部屋の隅へと脱ぎ捨てていった。
はずませ合う呼気が、部屋の冷ややかな空気を熱く染めた――

すべてを吐き出して、仰向けに横たわるわたしのかたわらで。
鵜紀乃さんのうえに、影が舞い降りた。
影は鵜紀乃さんを包むように覆いかぶさると、ミイラのように痩せこけた猿臂で、彼女を抱きすくめてゆく。
わたしはどうすることもできなかった。金縛りにあって痺れた身体は、わたしのいうことをきかなかった。
どうすることもできないでいるあいだに、鵜紀乃さんは抱擁を受け入れて、
さっきよりもいっそう熱っぽく、息をはずませ始めた。

はぁ・・・はぁ・・・
ぁう・・・うぅん・・・っ

悩ましい声色にわたしの股間は逆立ち、鎌首をもたげ、畳の上におびただしい粘液をまき散らす。
そのあいだじゅう鵜紀乃さんは、わたしの傍らで乱れ、身に着けたままのスカートの裏側を、わたし以外の男の粘液に染めていった。
影が去ったあと。
しなやかな腕がスッと伸びてきて、鵜紀乃さんはわたしの掌を握りしめた。
わたしも彼女の掌を、ぎゅっと握り返していた。

翌日、ふたりで病室を訪れると。
青葉さんはにこりと笑って、「お似合いですね」とだけ、いった。
少し寂しげな、けれども満足そうな笑みだった。
それからしばらくのあいだ、わたしたちはホテルで密会を続け、その足で鵜紀乃さんの夫の看病に通っていた。
青葉さんは満ち足りた静けさのなかで、永遠に目を瞑った。

鵜紀乃さんとの新婚生活は、幸せそのものだった。
新居の壁のシミが浮き上がるようにして、夜中に彼女の肩をひっそりと抱く影を、
わたしはもう、妨げようとはしなかった。
夫にだけ見える吸血鬼。
そいつは鵜紀乃さんをうっとりとさせ、新調したブラウスを惜しげもなく持ち主の血潮で彩らせてゆき、
わたしの目のまえで、わたしを裏切る淫靡な舞いをくり広げさせてゆく。
そのあいだじゅう。
わたしは股間を逆立てて・・・恥ずかしい熱情を、新居のじゅうたんのうえに吐露していった。
青葉さんもかつては、きっとそんなふうに振る舞っていたのだろう。
重病人の研ぎ澄まされた勘がわたしの本性を見抜き、生前に妻の婚外性交を受け入れてまで、自分のあとがまを確保したのだ。
わたしの妻となった鵜紀乃さんは、満足そうに、淫靡な吐息を吐き散らしながら、
わたしだけに見せる淫蕩な振る舞いを、それは愉し気にくり返していった。


あとがき
重病人の夫の承諾付きで、つぎの夫となる男と性交をくり返す妻。
吸血鬼の愛人がいると知りながら、彼との共存を受け入れて、女を受け入れる夫。
そんなところを描きたかったみたいです。 ^^;

美味しいようなら、それがなにより。

2015年09月09日(Wed) 07:52:46

男の血に目覚めたことなんて、いままでなかったんですがね・・・
彼はそう言いながら、わたしの両肩にしがみついて。
首すじにあてた唇に力を込めて、血を飲み耽ってゆく。

いや、旨い。じつに、旨い。
そんな呟きをうわごとのようにくり返しながら、彼はわたしの肩を放そうとはしなかった。
失血に脳天を痺れさせながら、わたしもうわごとを折り返してゆく。
わたしの血、そんなに美味しいんですか。それはなによりですね・・・
他人事のようにそういってしまうと、いっそ潔い気分になれた。
ほんとうは、家内の生き血がお目当てなんでしょう・・・?
あれほど避けていた話題を、自分のほうから切り出していた。

わたしの血なんかを美味しがってくれる、あなたがいい。
家内の相手は、あなたがいい。
わたしはそういうと、傍らに落ちていた携帯を手に取って、妻のナンバーを指先ではじいていた。
――よそ行きの服に着替えて、待っていなさい。そうそう、ストッキングを穿くのを忘れないように・・・
彼の趣味に合わせて脚に通していた薄々の長靴下は、しゃぶるようにいたぶられてチリチリに咬み破かれていた。


痛ーッ!
首すじに牙を埋め込まれた妻は、
半袖のワンピースの両肩をつかまれたまま、うめき声をあげた。
ワンピースの半袖は、彼の掌の下でくしゃくしゃになっていた。
傾きかけた身を支えようと突っ張っていた、むき出しの二の腕が力を喪って、くたりと折れた。
彼はしんそこ嬉しそうににんまりと笑って、肌色のストッキングを穿いた妻の足許ににじり寄った。
わたしのときよりも、しつように。
妻の穿いている肌色のストッキングはしゃぶるようにいたぶられ、よだれに濡れて、引きずりおろされてゆく。
吸血劇の第二幕は、凌辱――
お手本を見せるために生き血を抜かれた身体は重く、身じろぎひとつできないでいる。
妻を魔手から救い出すどころか、わたしの下半身は、恥ずかしい昂ぶりに染まっていた。
謝罪の一瞥をくれた妻は、わたしのほうから視線をそらし、敗れ堕ちたストッキングを穿いたままの足を、ゆっくりと開いていった・・・

妻の身体、そんなに気に入っていただけましたか。
美味しいようなら、それがなによりですね・・・

結婚式場の控えの間

2015年07月16日(Thu) 07:30:29

ここは、某結婚式場の控えの間。
クリーム色の壁や淡いピンクのじゅうたんは、ほかのフロアと共通のもので、結婚式場らしい華やぎを醸し出してはいるものの、
およそ十畳ばかりの狭い部屋のなかは、テーブルひとつにいすがふたつしつらえてあるだけの、簡素というよりはむしろ殺風景なたたずまい。
そこには一対の男女が、にらみ合うような面相で向き合っていた。
ふたりが夫婦でないのは、間に流れる他人行儀な雰囲気でそれと知れる。
女は真っ赤なスーツに黒のブラウス、足許を染める薄手の黒のストッキングが、肉づきのよいふくらはぎを蒼白く透き通らせていた。
男は漆黒の――時代がかった黒マントまで羽織っている。マントの裏地は、真紅――男が欲する生き血の色だった。

女は妍のある上目づかいで、男を睨み、そして言った。
咬むなら早くしてくださる?主人、私があなたに咬まれていること、まだ知らないんですのよ。
男はククク・・・と、獣じみた嗤いを洩らしただけだった。
けれどもこの化け物にも人間の言葉が通じるのは確かなようで、くぐもるような低くスローモーな声色で、こう言った。
いつも、すまんねぇ。あんたには、迷惑をかける。これでもうひと晩、長生きができるというものだ。
女は毒づいた。
いけすかない。長生きなんかしてもらいたくもない。あんたが長生きしたって、そのぶんこううして迷惑をこうむる女が増えるだけなのよ。
そう言いながらも女は、テーブルの上にお尻を乗せ、片方のいすをハイヒールの脚で自堕落に踏まえていった。
咬むんだったら、早くなさい。あの子のカクテルドレス見たいんだから。
まったくだ――男はほくそ笑んで、女のひざ小僧を抑えると、差しのべられたふくらはぎにかがみ込んでゆく。
ちゅっ。
唾液のはぜるなまなましい音が、狭い空間のなか卑猥に洩れた。
圧しつけられた唇の下。
墨色のストッキングにひとすじ、細い裂け目が白く、ツツーッと伸びた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
女の脚に咬みついた男は、喉を鳴らして血を吸い取ってゆく。
ストッキングの裂け目はじわじわと拡がって、女の脛の白さを露呈させた。
ったく・・・っ。もう・・・っ。
女は忌々しそうに歯噛みをしながら、自分の足許に加えられる恥辱に憤ってみせた。
ひとしきり血を吸うと、男は女の血潮に濡れた唇をもういちど甘えるように、女の脚に擦りつけた。
緊張の緩んだ薄手のナイロン生地が、男の唇の動きに合わせて、ふしだらなしわを寄せた。
破いただけじゃ、気が済まないのね?お行儀悪い。
男が濡れた唇をぬぐったのを見抜いて、すかさず女が悪態をつく。
男は澄ました顔をして、もう片方の脚も頂戴しようか?と、ニヤニヤしながら応じた。

じゅうたんの上は、凌辱の場になった。
新調のスーツを汚すまいと、女は四つん這いになって丈の短いタイトスカートをたくし上げられていった。
ストッキングをひざの下までずり降ろされて、むき出しになった太ももが眩しい。
女のうら若い生気をめでるように、男は女の首すじを吸い、ブラウスに血潮をしたたらせながら、血を啜った。
マントの合間から覗く青白い腰は意外に逞しい筋肉を持っていて、怒張した一物をスカートの奥に忍び込ませると、何度も何度も吶喊をくり返し、礼装の裏地に汚液を吐き散らしてゆく。
そのいくばくかが点々と、ピンクのじゅうたんにシミをつくった。

出てってちょうだい。着替えるんだから。
女はぷんぷん怒って、男を追い出した。
満足しきった男は口許を拭いながら、出がけに鄭重なお辞儀を忘れなかった。
女はそれをわざと無視して、身づくろいにかかった。
破れたストッキングを脱ぐと、しつように咬まれた脚をハンカチで拭い、首周りもおなじようにたんねんに拭った。
拭ったハンカチは丁寧に折りたたんで胸ポケットに差し、傍らの姿見に向かい合って、セットした髪が乱れていないかたんねんに点検した。
ひととおり満足するのに、かなりの時間を費やした。
新郎新婦の入場は、とうに終わったことだろう。
女がバッグを手に部屋をあとにすると、ひと呼吸おいて男がもう一度、部屋を覗き込んだ。
そして、部屋の灯りを消すと、小声で囁いた。

ご主人、もう出てきてもいいよ。
女房が襲われているところを覗きたいなんて、あんたいい趣味しているね。
その趣味に、わしはおおいに敬服するよ。
今夜は、ご夫婦で睦みあうがいい。
人妻を独りにしておくには、危ない夜だ。
披露宴の広間は夜中じゅう貸切で、招び出された女どもがわしの仲間の相手をする場になるでの。
もっともわしは、そちらのほうは遠慮するつもりだが。
代わりにあんたのお嬢さんを、いただくことになっているのでね。
きょうのカクテルドレスを取り寄せて、わしのためにわざわざお召くださるそうぢゃ。
お婿さんには、とうに話をつけてある。
お嬢さんは、正真正銘の処女だ。
前もって、生き血の味で確かめておる。
花嫁の処女喪失を覗きたければ、新床の部屋まで来るがいい。
留守ちゅう、新婦の母親が広間に出向いて、招待客の接待をするのを承知の上ならね。
それともご夫婦で、花嫁が一人前になるのを見届けるかね?
わしとしては、気の強い奥方が参戦されないことを希望するがね・・・

イイ気なヤツ・・・

2015年05月07日(Thu) 07:26:38

家の近くを歩いていると、妻の彼氏と行き会った。
「悪りィです。〈^人^) これから奥さんに逢うんですけど、〇ンドーム切らしちゃってて・・・」
ふつうこういうときに、そういうものを、ダンナに買わせるものかいな・・・
家を目指して背を向けるアイツのために。
当時街なかでもひっそりと佇んでいた「明るい家族計画」と銘打たれた自動販売機を前にする。

「悪りィです。(^人^) ガマンできなくなって、先ヤッちゃいました。。。(^^ゞ 」
照れ笑いするアイツに、ふくれ面の妻。
「せっかくですから、これ・・・ダンナさん使うと良いですよ」
そんなよけいなお世話まで、やかれるものかいな・・・
彼氏の代わりに〇ンドームを使いはじめた私。

妻の妊娠が発覚したのは、その数か月後のことだった。
(-_-;)


あとがき
こういうまぬけなお話、時々描いてみたくなるんです・・・

【ニュータウン情報】 花嫁一人に、二人の夫――急増する”重婚式”

2015年04月11日(Sat) 17:41:08

市内最大の結婚式場、「寿ホール」で、新婦1人、新郎2人という、いっぷう変わった結婚式が行われた。
新郎は花田貴之さん(28)と熊石勝平さん(57)、新婦は貴之さんの妻、美穂子さん(26)。
(いずれも仮名)
もともと夫婦であった花田夫妻の家に、熊石さんが同居するという。
「重婚式」とよばれるこうした結婚式は、近年急増しているといわれる。
市には正式なデータは存在しないが、「寿ホール」だけでも、平成××年度以前には平均して2~3件だったものが、一昨年度は8件、昨年度は15件。今年度になってからは早くも、花田夫妻と熊石さんのケースで7件を数えている。

過疎化が進むこの街では、かねてから嫁不足が問題となっている。
特に高齢化の進む職人町では、問題は深刻だ。
「跡取りがいなければ技が絶える」という危機感のもと生まれたのが、この「重婚式」。
もともと夫婦であったカップルの奥さんと独身男性とが性交渉を持つことで、二世の誕生を期待することができるという。
もちろん当初の夫婦と独身男性との間には信頼関係や愛情関係がなければならず、普通の夫婦以上に相互の信頼や愛情が重視されるといわれている。

花田さんは三年前、仕事の関係で都会から美穂子さんを伴って転入。その年に参加した懇親パーティーで熊石さんと出会い意気投合、夫婦での交際はその三か月後にスタートした。
「最初は戸惑ったんですよ。ボクだって妻を奪われたら困りますからね」
いまではにこやかに語る花田さんにも、悩みはあった。毎晩のように繰り返される夜這いに、とうとう美穂子さんが”陥落”。
「最初はすごく強引で、暴力的で・・・ほんとうにどうしよう?って思ったのですが」
と語る美穂子さんはある時、熊石さんにこう訴える。
「主人は弱虫かもしれないですが、私にとって大切な人なんです」
「このひと言が、三人の関係を変えましたね」というのは、熊石さん。「なんとかご主人とも共存できないものか」。
熊石さんの提案した”重婚式”には、むしろ貴之さんのほうが積極的だったという。
「お互い相手を立てるというところで、和解が可能かなって思ったんです」
夫から彼を受け入れるよう説得を受けた美穂子さんも、決心を固めた。翌日の夜熊石さんが現れたとき、貴之さんは目のまえで美穂子さんと愛情行為を交わしてほしいと申し出た。
「一発・・・でしたね。はい、文字通り」美穂子さんはその夜の記憶を、あっけらかんと笑いながら回想する。
「主人、いえ、貴之が昂奮しちゃったんです。熊石もいつも以上に張り切ってくれて・・・これなら三人でやっていけるかなって感じました」
二人が愛し合うところを目の当たりにすることになった貴之さんも、最愛の妻を熊石さんと共有することに同意。
親族の一部には反対するものもあったが、二人は強引に押し切ったという。
「熊石さんが美穂子を押し倒した時の強引さに比べれば、どうということもないんですよ」
重婚式に出席した貴之さんの母美恵子さんもまた、一人息子の嫁が息子以外の男性を受け入れるというこの宴席の席上で、地元の男性に見初められ、いまでは夫の同意を得て、地元の老齢男性の”老いらくの恋”を受け入れているという。
「三人が三様に幸せになる。こういう男女関係のあり方が、もう少し公認されてもいいのではないかと思いますね」

地元でも格式の高い家では、「どちらの男性が父親なのか確定できなければ、うちの後継ぎとは認められない」というところもあるが、「子作りをするセックスをする時期を意識している重婚家族もあり、共存は可能」とする専門家もいる。
そうした家のあるじが重婚を望んだ場合には、最初の結婚で生まれた子供が大きくなった夫婦がターゲットになると言われている。
花田さんの家では、そのあたりはむしろ達観しているという。
「どちらの種だったとしても、美穂子の子供であることには変わりはない。愛情をもって育てます」
貴之さんの返事はきっぱりとしていて、むしろ清々しささえ漂わせる。

二度目の装いとなるウェディングドレス姿の花嫁と両側から支える二人の花婿は、嬉々として家路をたどった。
今は夜這いを受け入れているだけの夫たちもやがて、妻の恋人との共存をこうした形で容認する人々が、今年も多く生まれそうである。

注意:登場人物の氏名は、いずれも仮名です。

愛情。

2015年04月05日(Sun) 06:50:02

ただたんに、「喉が渇いた」と言われただけならば。
きっと断っていただろう。
わたしが彼に妻の生き血を吸うのを許したのは。
「奥さんを愛している」って、言われたからだ。
彼らといえども、愛する人の生命を奪うことはしないだろうから――

渇いた喉を抱えながら、なん人もの愛人をも抱え、かわるがわる訪う男。
最愛の妻を、彼の愛人の一人として捧げたことを。
わたしはたぶん、後悔しない。
今夜も妻は、夜だというのに着飾って。
真夜中のデートに、出かけてゆく。

仇敵にあらず。

2015年03月27日(Fri) 08:18:20

懇意になった吸血鬼に、妻を誘惑してほしいと依頼した時には、声が震えた。
どんなふうにして妻を堕とすか・・・という相談を受けたときにも、震えが止まらなかった。

わたしもすでに、嗜血癖を植えつけられていたから
首すじに咬みつかれて喘ぐ妻を目の当たりにし、
その妻の生き血を美味しそうに吸い上げる吸血鬼を視て、
美味しい血にありつくことができた彼のことを、羨ましいと思った。
妻の生き血を気に入ってもらえてうれしかったし、誇らしかった。
吸わせてあげられてよかった・・・心からそう思った。

襲った女性がセックス経験者の場合、ほぼ例外なく性的関係を結ぶときいていたし、
妻もまた、例外ではあり得なかった。
人並み程度には、魅力的で、女らしかったから・・・
若い日には、彼女の口づけを勝ち得るためだけに、情熱を燃やしたこともあった。
その彼女が羞いらいながら脚をゆっくりと開いてゆくのを、
固唾を呑んで、見守っていた。

夫の仇敵に生き血を吸わせ、身体まで開いていった妻・・・
もはやわたしを裏切ることに、罪悪感はない。
奉仕活動に献身することは、夫の名誉を守ることよりも、彼女のなかでは重要だったから。
そんなふうに踏みにじられてしまうことが、むしろ快感――
夫婦ながら堕落した夜。
わたしは妻と彼とのあいだの、新しい関係を独り祝う。

理恵子の血を吸わせてあげることができて、よかった。

2015年03月26日(Thu) 08:08:48

幼いころからの悪友が。
吸血鬼に襲われて、吸血鬼になってしまった――
蒼い顔をして、わたしのまえに現れたとき。
わたしは躊躇なく自分の血を吸わせ、そして妻の理恵子を差し出していた・・・

理恵子の血を吸わせてあげることができて、よかった。
わたしはしんそこ、そう感じている。

吸血鬼があふれるようになった、この街で。
生命を落とす危険と裏腹な日常で、暮らしていて。
けれどもやつが独身を通したのは。
ほんとうは、理恵子が好きだったから。
好きな女を吸血相手に選んだのなら。
相手を死なせることは決してするまい・・・そんなふうに考えたのだ。

わたしの姑息なかけ引きは、どうやら間違いではなかったらしい。
やつはわたしの血を全部吸い尽して、わたしを墓場送りにし、
そして理恵子の夫におさまった。
旨そうだな。嬉しそうだな。
窓の外からふたりを覗き込んでいる、わたし――

けれどもそんなわたしも、孤独感は感じていない。
弟が、もらったばかりの嫁を紹介してくれたのは、吸血鬼になって間もなくのことだった。

義妹と元妻とは、かわりばんこにわたしのまえに現れて。
肌色のストッキングに彩った、自慢の脚線美をさらしてゆく――
悪友は、もともとあんたの女房だからと、わたしの夜這いを大目に見るし
弟は兄譲りの性癖まる出しにして、情事に耽る新妻に見とれていた。


あとがき
完全に奪ってしまうお話は、ここではマレなような気がしています。。

赦すけど、忘れない・・・

2015年03月26日(Thu) 07:24:12

赦すけど、忘れないです。
謝罪をする男に、わたしはそういった。
それは、忘れられないですよ・・・
目のまえで妻を、犯されてしまったんですからね。

赦すけど、忘れないです。
謝罪をする男に、理恵子も同じことをこたえていた。
それは、忘れられないわ・・・
激しすぎるんだもの。
理恵子が口にした「忘れない」の内容は、わたしとはすこしトーンが違っていた。

いや、俺も奥さんのことは忘れられないです。
男も同じようなことを、呟いた。
ほんとうに、いい身体してますよね。ご主人が羨ましいです。
男の目の色あいに、嘲りも蔑みも浮かんでいないのを観てとると。
わたしは思わず、口にしてしまっていた――

たまにだったら、いいですよ・・・

語尾の震えに、いびつな昂ぶりが込められていることを。
ふたりはきっと、気づいている。
男はすみません、と、頭をさげて。
理恵子はありがとう、って、心からの感謝のまなざしを投げてくる。

あ~ん、お洋服、台無し・・・
和解が成立すると、理恵子はふつうの主婦の顔に戻っていた。
こんど弁償しますから、という男に。
高級ブティックに連れてって、家内の好みの服を買ってやってください。
わたしもそんなことを、口にしてしまっている。
俺好みの服を着せて、街を歩いてもいいですか?という男に
あんまりおおっぴらにされるのは・・・照れますねぇ、と、つい本音を漏らしてしまって。
そんな男どうしのやり取りを、「やらしいわね」って、妻も、笑いながら受け流している。

このワンピース、わたしの見立てなんですよ、というわたしに。
ご主人センスいいですねえと男は呟いて、
奥さんをデートに誘うとき、ご主人のセンスの服っていうのも、いいですよね・・・なんて言い出した。
わたし好みの服を着た理恵子が、服を破かれながらモノにされてゆく――
そんな光景が、わたしをふたたび、昂ぶらせた――

このひとの妻のまま、貴男に抱かれるわ。
そう宣言する妻に。
奪うのはよくないからね。夫婦関係はだいじにしてくださいね。
男のほうもまた、そんなふうに包みかけてくる。
じゃあわたしはせいぜい、家内の着る服代を工面するために、稼ぐかな。
というわたしに、
ご主人マゾですね・・・
男はにやりと笑って、そういった。

赦すけど、忘れない。
忘れられない。
妻を犯される体験は、それくらいに深く、夫婦の間柄を塗り替えていた。

目のまえで。

2015年03月20日(Fri) 08:47:03

【妻の独白】
愉しんじゃっていた。夫のまえで。
強引に迫ってきたのは、ここに赴任してからずっと相談相手になってくれていた、年配の男。
縛られた夫を見せられ、ブラウスを破かれた私は――本能的に従順になっていた。
夫から目をそむけながら。視ないで・・・視ないで・・・と、くり返しながら。
それでもからみついてくる、しつような熱い視線に、身を晒しながら。
あたしは髪振り乱し、股間に激しく突き刺さってくる一物に、腰を揺すりつづけていた。

視ないで・・・視ないで・・・の懇願は。
離れないで・・・離れないで・・・に変わっていって。
もっとあからさまに。
もっとして・・・主人のより、大きいッ!
って、エスカレートしていった。
あたしがうめくたび、夫は激しい射精をくり返していた。

目のまえで。支配されてしまうということが。これほど快感だったとは・・・
塗り替えられた日常に、いまは気分が浮きたつ想いです・・・

【夫の独白】
見せつけられてしまうということが、これほど快感だったとは・・・
視ないで・・・視ないで・・・が。
もっとして・・・もっとして・・・に、塗り替わっていって。
反射的に反応しているだけだった腰の動きが、別種の熱を帯びていって。
妻が恥ずかしい言葉を口走るたび、不覚にも射精をくり返してしまっていた。
男ふたりで交わりをしていた布団のうえで、夫しか識らない身体が汚されてゆくのを。
むしろウキウキとしながら、見守りつづけてしまっていた。

愉しんでしまっていた。妻の目のまえで。
男の一物をしゃぶることに、目覚めてしまったわたし――
きょうの味は、格別だった。
目のまえに迫らせられた一物は、ついさっき、妻を犯し抜いたものだったから。

根元まで、口に含んで。
どろどろとした粘液を、喉を鳴らしてのみ込んでゆく。
妻を犯したペ〇スを咥える・・・という行為は。
完全な服従を誓ったしるし。

妻の目のまえで、支配を受け容れてしまうということが、これほど快感だったとは・・・
塗り替えられた日常は、恥まみれのわたしにはひどく居心地のよいところだった。

火事場から救い出す

2015年03月20日(Fri) 08:10:30

1.
うそ。死んじゃうかも・・・
気がついたときには、あたりには煙が充満していた。
昏倒していたのは、ほんのわずかな時間だったはず。
見回しても、出口は一か所。そして煙はその方角から、流れ込んでくる。
涼子は首すじにつけられた傷に、触れてみた。
ヒリヒリする。ジンジンする。
咬まれて血を吸われた・・・?
微かに残る、異様な感覚。
そのあと気を失って倒れて・・・いま気がついたけれど、着衣が乱れていた。
股間にはありありと、恥ずかしい衝撃の余韻すら残っていた。
そのまま置き捨てられて・・・置き捨てられた場所が、火事場になっていた。
もう、このまま死んじゃおうか?
そんな想いもチラリとよぎったけれど。
夫の顔が思い浮かんだとき、そんな衝動は意識的に掻き消していた。

どうやら起ちあがることはできた。
眩暈がするのは、煙のせい?それとも、失血のせい?
たとえ逃げ道があったとしても、満足に逃げられるような状態ではない。
もう選択の余地はないのか?
意識が死ぬ方へと転化しかかったそのとき――
「こっちだ!」
叫ぶ声がして、声の方角から伸びてきた力強い腕が、涼子を強引に引っ張っていた。

「ありがとうございます。おかげで家内が助かりました」
現場まで駈けつけてくれていた夫は、服を焦がした涼子を両腕で抱き留めながら、涼子を救った男にお礼を叫んでいた。
「いやいや、なによりでしたね」
男はおだやかにそう言い残して、「お名前を・・・」といいかけた夫を振り切って、人ごみのなかに身を隠していった。
夫の腕に抱かれながら涼子は、自分の生命の恩人はつい今しがた、彼女の血を吸って犯した男と同一人物だということを、はっきりと感じていた。


2.
吸血鬼がこの街に入り込んでいます。
知っているだけでも数人、犠牲者が出ています。
犠牲者が既婚の婦人の場合には、必ずと言っていいほど性的暴行まで受けています。
幸い死亡者はまだ確認されておりませんが、街としてはゆゆしい事態です。
当局への相談も含めて、早期に対処するべきです。

夫は町内会長に、性急な声色でまくしたて、決断を迫った。
そうですねえ・・・たしかに深刻な問題ではありますねえ・・・早急に、対応しましょう。
さいしょはなぜかひとごとのような態度だった年配の町内会長は、いい加減な態度では相手が立ち去らないであろう様子を感じ取ると、締めくくりの言葉だけを確約にすり替えていた。
しっかり頼みますね、と、夫は念を押すように言い、涼子を促して公民館の打ち合わせテーブルの席から起ちあがった。
夫の同僚二人が、吸血鬼に襲われたのだという。
そんな夫も――妻の首すじに着けられた咬み痕には、まだ気がついていないらしい。
涼子は咬まれた痕を、髪の毛の下に入念に隠していた。

じゃああたし、ちょっと用事あるから・・・
あ、そう。帰りは何時ころ?
そうね、夕方までには。晩ご飯作る時間までには、戻ってくるね。
小手をかざしてバイバイをして、
夫がなんの疑いも示さずにきびすを返すのを確かめると。
涼子は安堵に肩を落とした。
膚の奥深く、血管のなかから声がする・・・そんな気がしていた。
声は涼子に命じていた。午後に時間を空けて、公民館に戻るように――と。


3.
さいしょの一回は強いられたものだったけれど。
二度目の逢う瀬は、自分から応じたものだった。
男は息荒く涼子に迫り、着衣のまま求めてきた。
性急な欲求のせいばかりではない。
服を着た女性を襲うのが好みなのだ。
ブラウスの襟首を汚さないよう、用心深く咬み入れられてくる牙に、涼子は首すじを伸べて応じていった。
血を吸った相手の女性を気遣って、わざわざ現場に舞い戻り、火事から救ってくれた男。
そのお礼を、したかっただけ――
お礼をしたい気持ちだけは、夫も同じなはず――
でもまさか、こんな形での恩恵を妻が相手に施しているとは、夫はまだ夢にも知らない。

男は、脚にも咬みついてきた。
派手に破けた肌色のストッキングの裂け目がじりじりと拡がってゆくのを、
老け顔の目じりをしわくちゃに歪ませて、目を細めて愉しんでいる。
ほんとうは、服を破いたり汚したりするのも、好きなのだろう。
変態――毒づこうとしながらも涼子は、相手の言いなりになっていく自分を、どうすることもできずにいた。
ストッキング越しに圧しつけられた唇が、ぬるぬるとうねり、薄いナイロン生地に唾液をたっぷりとしみ込ませてきたときに。
男が自分の脛を吸いやすいようにと、脚をくねらせて応えてしまっていた。
ストッキングの脚をくまなく愉しんだすえ、男は牙を突き立てて、薄手のナイロン生地をぱちぱちと音を立てて咬み破っていった。


4.
家に戻ったのは、昏くなってからだった。
無言で唇を引き結んだ涼子の後ろには、涼子が自分で選んだ浮気相手が、ひっそりと佇んでいた。
驚く夫が犠牲者の仲間に加わるのに、ものの数分と要しなかった。
涼子の血で力を得た吸血鬼は、自分より20歳は若い夫をやすやすと組み伏せると、
涼子のときと同じ経緯で、夫の首すじを咬んでいた。

いったいこんなことを、予想することができただろうか?
夫の前で、ほかの男に犯されるなんて――
けれどもそれは、現実のものになっていた。
夫はぐるぐる巻きに縛られて、猿ぐつわまでされている。
そのまえで、わざわざ見せつけるように――男は涼子のブラウスを剥ぎ取っていった。

ほんとうは、あの場でこんなふうにしたかったんだ。
襟首汚しちまったし、クリーニングにも出せないだろう?
男はそう言いながら、にまにまとした笑みを泛べて、涼子のブラウスを引き裂いてゆく。
むしり取られたブラジャーの吊り紐がはじけて、あらわな肩先を鞭のように打った。
へへへ・・・だんなさん、悪いね。ちぃとばかし、愉しませていただくでの。
男は舌なめずりをしながら涼子に迫って、乳首を含んでゆく。
「あぁあ・・・っ」
静止を求める夫の叫び声は、猿ぐつわに阻まれて、くぐもった呻きにしかならなかった。

ノーストッキングに引き剥かれた脚を大の字にしたまま、
のしかかってくる男を相手に、涼子は夫婦でしかしたことのない行為に、耽っていった――


5.
いけない・・・いけない・・・
でもあたし、愉しんじゃってる。

髪をユサユサと、揺らしながら。
客をとる娼婦のように、腰を振りながら。
喘ぎ声をあらわに、洩らしながら。

あたしは主人の前での行為に、いつしか熱中してしまっている。
かまわないでしょう?
男同士がキスを交わし、肌を合わせ、股間まで交わらせていくのを。
完全に相手のペースとはいえ、主人がそれを受け入れてしまったのを。
あたしはどちらに手を貸すでもなく、茫然と佇みながら、いちぶしじゅうを見守っていた。
主人は唯々諾々と男に縛られていって、
「奥さん借りるね。すまないね。でもよかったら、だんなさんも愉しんでね」
そんな相手の囁きに、どんよりとだが頷き返してしまっていた。


涼子をあんたから奪うつもりはない。
だから時々、逢いに来るのを許してほしい。
見て見ぬふりをするのでも、かまわないから。

まじめな交際を希望してます。
奥さんくらいの年代の女が、好みなんです。
身体つきもいいし、血も美味い。わしにとっては、好い女です。
なに、ご夫婦でいままでどおり、ふつうに暮らしておればエエんです。

たまにわしが、忍んでいったら。
だんなさんはそんなとき、さりげなく座を外してもらってもいいし、
きょうみたいな感じでも愉しめるというなら、荒縄持参でうかがいますよ。
わしと仲良くしたいというなら、奥さん抜きで逢ってもいいです。
奥さんも、だんな抜きで逢いたくなったら、連絡待ってます。
秘密は厳守する・・・っていいたいのですが。この街では無理だな。
あんたが町内会長に言ってたみたいに、犠牲者のことってどういうわけか、すぐ広まっちゃうんだよね。
町内会長が奥さんと娘を、わしらの仲間に喰われちゃってるの、まだあんたは知らなかったかね。
まあこんなふうに、犠牲者同士は分かり合っちゃうことになるのでね・・・
その内輪のなかでの、秘密厳守ということで。

男がいいように申し渡しをしていると。
猿ぐつわを外された主人が、おずおずと口を開いた。
「涼子は、どうなんだ・・・?」
あたし?あたしはもちろん、このひとにぞっこんよ。
だって、上手なんだもの。あなたとは最近、なんにもないし。
だから首すじの傷のことも、気がつかなかったんでしょう?
そんな想いを凝縮させて、あたしはたったひと言、応えていた。
「あたし、このひととおつきあいします。よろこんで・・・」
そうか、と夫は、一瞬寂しそうに目を伏せる。
ちょっとかわいそうだったかな・・・さすがにあたしはそう思ったけど。
つぎの夫のひと言が、あたしを安堵させ、そして満足させた――
「せめて、俺から交際をお願いしたってことに、してもらえないかな」
嬉しいねえ・・・あたしの思惑など眼中にないその男は、夫の提案を即座に受け入れていた。


6.
血を吸った相手の女性が火事に巻き込まれたとみてとって、躊躇なく引き返して火の中から相手を救い出す。
そこまでやる吸血鬼など、きいたこともなかった。
けれどもあのひとは、そこまでのことをしてくれた。
涼子に対する愛情を、夫であるわたしですら、感じざるを得なかった。
「涼子への愛情と、あんたへの誠意を示したかっただけ」
そんなあのひとの言葉も、嬉しく響いた。
わたしが火事場に飛んでいったのも、ぐうぜんではない。
そこで涼子が襲われるであろうことを、まえもって告げられていたから。
けれども火事までは、予想外だった。
ばちが当たったんだ、と思った。とっさに火の中に駈けこもうと思った。けれども不覚にも、躊躇してしまった。
いつの間にかわたしの傍らに立ったあのひとは、わたしを制すると、自分から日の中に駈けこんでいった。

恥ずべきなのは、日常的に浮気に耽るようになった妻ではない。
妻をすすんで吸血鬼に引き合わせた、わたしのほうだった。
勤務中に血を吸われたわたしは、男同士の関係を迫られて――不覚にも受け入れて、目覚めさせられていた。
たいがいのことは、目ざめさせちまうことができるんだ。わし。
そういいながらキスをねだるあのひとに、わたしは自然な態度で、応じてしまっていた。
三十代の人妻の生き血をご馳走したい。貞操をプレゼントしたい。
そんなわたしの申し出を、あのひとはくすぐったそうに受け止めてくれて。
雑居ビルの一隅にわたしが呼び出した涼子を、気に入りのワンピースもろとも汚していった。
手慣れたようすで、むぞうさに――
涼子を征服した男は、余勢をおさめるためにわたしとの関係を望んで、向かいにあるラブホテルで刻を過ごした。
涼子のいたビルの火災を知ったのは、そのときのことだった。

きょうも涼子は、休みの日のわたしを置いて、あのひとに逢いに出かけて――
ホテルから戻ってくるのに、三時間は経っていた。
羞ずかしそうに、誇らしそうに。
ドアをひっそりとあけて、舞い戻ってくる。
はずれかかったブラジャーがはみ出たえり首には、血のりが沁みて。
きちんとセットしていた栗色の髪はぼさぼさに乱れて。
脚に通していった真新しいストッキングは、見るかげもなく咬み剥がれて。
わたしは自分の妻を迎え入れると、キスをしてやる。妻もわたしに、応じ返してくる。
途絶えていた夫婦関係は、みごとに復活していた。


涼子をあんたから、奪うつもりはない。
けれども奥さんは、わしの気に入りの女の一人に加えさせていただく。
あんたはいままでどおり、ご夫婦仲良く暮らせばいい。
涼子の服代を稼ぐために、あんたは働く。
女房が浮気で使うホテル代を稼ぐために、あんたは働く。
お仕事もそのほうが、張り合いが持てるだろう?

見て見ぬふりをするのなら、ご好意に甘えよう。
覗いて愉しめるなら、見せつけてあげよう。
たまにはあんたのことも、ホテルに誘ってやるよ・・・

あのひとの囁きは甘い毒を含んでいる。
囁かれるままに頷いてしまったわたしに
フフフ・・・と笑う妻。
そんなときの妻のほほ笑みにも、甘い毒が含まれている。
塗り替えられた日常――
わたしはひどく、満足をしている。

和解・・・

2015年03月07日(Sat) 10:50:05

妻の憤慨のしかたは、ハンパじゃなかった。
いや、もちろん親父のやり方が、よくないのだが。
親父とは。
俺が当地に赴任してきて、真っ先に知り合いになった・・・吸血鬼だ。

女房の血を吸わせる約束をしてしまって。
なにも知らない女房を、土地の顔役の息子の結婚式に同伴して。
親父は俺たち夫婦の席のあるテーブルの下に、もぐり込んで。
女房の脚をいきなり、咬んだのだ。

「ちょっとっ!でていらっしゃいッ!」
おろしたてのパンストを破かれた女房のやつ、烈火のごとく怒りまくって。
きまり悪げにテーブルクロスの下から顔を出した親父を罵っていた。
いきなりなんてことをするの?ヘンタイ!ひきょう者!スケベ親父!
ふくらはぎから血を流しながらも、女房は相手を口汚く罵っていた。
そうしているあいだにも親父の咬み入れた牙からしみ込まされた毒液が、身体じゅうにまわっていって・・・
自分がどういうことをされたのが、無言でわかってしまったはずなのに。
それにしても。
テーブルクロスの下から顔だけ出して、自分がいま血を吸った女が毒づくのをぼう然と聞いていた親父の顔は、見ものだった。
ヘンタイでひきょう者でスケベ親父なのは、掛け値なしに正しかったので、反論のしようもない。
親父としてはただ、だまって聞いているしかなかったのだが。
やつだってなかなか、したたかなものだ。
ヘンタイでひきょう者でスケベ親父だと認めてくれたのだから、これからは時で行きゃエエんぢゃな。
翌朝いっしょに風呂を浴びながら、そんなことをのたまわったものだった。


わかった。わかった・・・
わしゃ、わびる。
あんたをここに連れて来てくれただんなのことは、かねがね尊敬している。
喉がカラカラなわしに血を恵んでくれたあんたには、感謝している。
これからもだんなを尊敬するし、あんたには感謝しつづける。
けっして、おろそかには心得ない。
ぢゃから、ぢゃからのお・・・

性懲りもなくにじり寄ってくる親父をまえに、女房は口をへの字に曲げて、悔しそうに睨みつけている。
ふたりのためにしつらえられたこの畳部屋からは、一歩も出ようがないのだ。
なにしろここに連れてこられてから、改めて首すじを咬まれてたっぷりと血を吸われ、
そのうえブラウスを破かれて、俺の前で犯されちまったのだから。

だんなのまえで、というのが、基本らしい。
そうすることで、相手の夫婦は劇的に気分を変えるのだから・・・という。
いや、ここで不覚にも、ゾクゾクと興奮を覚えてしまった俺は・・・
たしかにうちの会社の恥部と言われるこの片田舎の事務所に赴任させられる適性をもっていたのだろうけれど。

あなた、ブラウスとってきて。お願い。
命令口調の女房に、もちろんそうするさ、と答える俺。
けれども、俺がホテルの寝室からブラウスを取ってくるまでに。
お前、なん回射精されちまうんだ?

つぎの日になっても、女房の御機嫌はうるわしくなかった。
見栄っ張りなんだよ。あいつ。結婚式で恥かかされたって、気にしてやがるんだ
いきなりあんたも、ひどいな。
おおぜいの前でスーツ破かれて犯されたりしたら、そりゃあ立ち直れないだろ・・・

俺はいかにもお手上げ、というていで、親父を睨む。

すまん、すまん、以後気を付けるで・・・
親父は片手をあげて降参、といったが、なにどうして、決して参った景色はさらさらない。

しつらえられた畳部屋は、人妻と彼女を狙う吸血鬼の、お見合いの場。
仲良くなるまでここで対面しつづけることになるのだが。
仲良くなってからも密会の場として使用するカップルも、少なくないらしい。
さて、うちの女房殿の場合には、どんなことに相成るやら・・・

千鳥格子のスーツに、肌色のストッキング。
だんなの俺が見てもゾクッとするイデタチに、親父はさっきから魔羅をおっ勃たてているのがありありとわかる。

すまん、すまん。
だんなのことは、尊敬している。これからも、尊敬しつづける。
あんたに対しても、感謝している。これからも、感謝しつづける。
ご夫婦には絶対、恥などかかせない。秘密は厳守する。
ぢゃから、わしの渇きを救うてくれい。わしの恥ずかしい本能を、許してくれい。

ごま塩頭を振り振り、親父は壮絶?な謝罪をくり返す。
いっぽう、身体じゅうに毒の回った女房殿は・・・

ほんとうに、反省してる?
ほんとうに、感謝してる?
ほんとうに、だんなのこと尊敬する?
ほんとうに、秘密守れるの?

ぽつりぽつりと、妙なことを言い出して。
そのうち、おずおずと――
肌色のパンストを穿いた脚を、親父のほうへと伸べていった。

ちゃんと約束できるなら、少しなら咬んでもいい。


ふ、ふ、ふ、ふ・・・


親父がいつもこういう手で人妻を堕とすのを、赴任してからなん度見てきたことだろう?
キュッとしまった足首を抑えつけると。やつはふっくらと柔らかそうな女房のふくらはぎに、そろそろと唇を近寄せて――咬んでしまった。

ちゅうっ。

あ・・・

女房の横顔が、はっとこわばる。
けれどももう、問答無用というものだろう?

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・

吸血の音は狭い室内に蔓延して、
気丈に背すじをピンとさせていた千鳥格子のスーツ姿は、じょじょに、ゆっくりと、傾いていった・・・

畳の上に仰向けに倒れたのと。
男がのしかかって、スーツのジャケットの前を拡げるのとが、同時だった。
ぶちぶちっ。
やおらブラウスを剥ぎ取ると。
がぶり。
首すじに咬みついた。
びゅっ。
赤黒い血のりが、あたりにばらばらと散らばった。
男は顔をあげ、血のりにまみれた口許を、女に見せつけた。
それから剥き出しになった肩先に張り詰める、ブラジャーの吊り紐をつかまえて。
ぶちぶちっ。
はじけた吊り紐がムチのように、白い膚を直撃した。
にゅるん。
分厚く赤黒い唇が、妻の乳首を飲み込んでいく。
右、左、右、左、右、左・・・
交互にかわるがわる、熱っぽく吸われる乳首を振り立てながら、
女房はもう、無言になって相手を始めている。

女は発情させちまや、ただの娼婦になり下がるのさ。
なん度も親父が呟いていた呪文。
それがうちの女房の身にも、ふりかかっていった。

伝線の走ったパンストを片方だけ穿いたまま。
女房はなん度も、犯されてゆく。
千鳥格子のスカートのすそを、ぬらぬらとした半透明の粘液に浸しながら。
おなじ粘液を、きちんとセットした黒髪に、なすりつけられながら。
おなじ粘液を、口に突っ込まれた逸物から、びゅうびゅうと注がれながら。

どういうわけか。
女房の喘ぎ声も。
主人のより大きいわあとかいう、叫び声よりも。
さいしょは見ないで見ないでって言っていたのが、あなた視て視てっ!と態度を180度変更したことよりも。
突っ張ったふくらはぎに走るストッキングの伝線のほうが。
俺の記憶にはまざまざと、残っていた。

大雪で半休

2015年03月07日(Sat) 10:14:56

1.

事務所の外は、真っ白だった。
大粒のボタ雪が、ガラスにまだらになって貼りついている。
季節外れの大雪に、そのガラス窓の向こうに切れ切れに覗く街なみも、雪に埋もれたかのようだった。

これでは、仕事にならんな。
窓の向こうをいっしんに見つめていた営業所長が、分厚い眼鏡の奥から目を光らせた。
はい、一同集合。
軽くあげた両手に動きを合わせるようにして。
わたしたちは全員、所長のまえで起立した。

きょうは大雪で、仕事になりません。帰り道も危ないので、所長の判断により半日休業とします。
なるべく早く帰宅して、家の雪おろしなどに精出すように。

営業所長は簡潔にそういうと、自分も帰り支度を始めていた。
そのまえに、電話を一本、かけていたっけ。
相手はどうやら、この街の顔役の一人のところのようだった。

あ~、もしもし、〇〇物産ですが。ええ、はい。はい。きょうはこの大雪でしょう・・・それで、半日休業させてもらいますので。

どこの会社でもありがちな、ごあいさつ。
しかしそのあとのひと言だけは、よその会社とは決定的に違っていた。

はい、はい・・・人の生き血をご希望のかたは、社員の自宅にご照会ください。個別に対応いたしますので・・・


2.

人はいろいろな理由で、それまで自分が日常を過ごしてきた世界から、逃れざるを得ない立場に追い込まれる。
そうした人たちが口コミを頼りに、集まる会社。
そうはいっても、「社長がひと目で見抜く」という奇妙な適性検査の合格者でなければ、入社することはできなかった。
たしかに、適性のあるなしは、うちで勤めるにはかなり重要な要素のはずだ。
業務らしい業務は、なにひとつない。おまけに高給。
ただし、ここは吸血鬼と共存する街。
訪ねてきた吸血鬼に求められたら、血液を提供しなければならない。それも妻子もろともに――
この地に赴任してくるものはだれもが、50前後までの夫人か30前の娘か息子の嫁を、帯同してきていた。


3.

会社が半休になるという現象は、どうしてこうも勤め人という人種をウキウキとさせてしまうのだろう?
わたしはそそくさと会社を出ると、雪だまりを避けながら、足早に家路をたどる。
あたりはいちめんの、白、白、白。
路上も、屋根の上も、電信柱の半分も。
なにもかもが、白にうずもれている。
寒さに身を縮こまらせながらたどり着いた我が家の玄関先は、すでに雪かきが行き届いていた。


4.

ただいまあ。
ドアを開けると、むっとするほどの暖気にくるまれた。
寒い外から帰宅して、暖気に迎えられるというほど、安堵を誘うものはない。
はぁい・・・
妻の友里恵の声が、遠くからした。
わたしはコートを脱ぎ捨て、マフラーを取り去ると、まっすぐ茶の間に向かう。
こたつには、もうすっかりなじみになってしまった初老のごま塩頭。
よお、お帰りんさい。
顔をもたげてこちらを振り向いたのは。
農作業で夏場にたっぷりと陽灼けした赤ら顔――
わたしも妻も、彼のことを名前では呼ばず、「おっさん」とか「おじ様」とか呼んでいた。

ちょうどお茶が入ったとこだよ。
どてらを羽織ったおっさんは準備が良くて、
急須を取り上げると、わたしの分まで用意していた湯呑みになみなみとお茶をそそいだ。
ほれ、干し柿喰うかい?わしんとこで取れたやつ。
ぽんとほうられた干し柿を片手で受け取ると、もう片方の手にとっていた湯呑みに口をつけ、
それから干し柿をひと口かじる。
素朴な濃い味が、口のなかに広がった。

おっさんは飾り気なしに、思い切りストレートに本題に入った。
喉渇いたで、あんたらの血を飲ませてくれんかの?


5.

えっ?わたしの血もですか?
戸惑うわたしににじり寄って、おっさんは首すじに生臭い吐息を吹きかけてくる。
あ~、わりいの。
今朝はの、朝っぱらから魔羅が勃ってしょうがないで、友里恵さんさ抱きに来たで。
んだがおなごの身体さ愉しむ前にゃ、精をつけねばの、そんで、あんたの帰りさ待ち焦がれとったで・・・
化け猫みたいな息吹きはわたしの理性を痺れさせて。
わたしはいつもの癖で、つい小首を傾げてしまっている。彼が咬みやすいようにと。


6.

ちゅー。こっくん、こっくん・・・
男同士で抱き合って、なにしてんのよ。
友里恵は苦笑いしながらも、洗濯物を畳む手を休めようとしない。
痺れた首のつけ根から、生温かい血をぞんぶんに引き抜かれるのをありありと感じながら、
わたしはどうすることもできなくなって、おっさんに身体を預け切ってしまっていた。

ふー。

お互い同時にひと息ついて。
ぷははははっ。
おっさんはあっけらかんと、笑っていた。
眩暈が、ひどい。
事務所にやって来る吸血鬼のうち、もっとも多くの量を吸われるのがわたしだと、職場ではもっぱら評判になっていた。
さして若いわけでもないというのに、時には翌日休まなければならないほどに、わたしは多くの量を吸われていた。

風見さんの血は、きっと美味いんですよ。
後輩の重瀬が、もの分かりよさそうにそういった。
まんざらでもなかったのは・・・いったいどういう心理なのだろう?

わたしがこたつに脚を突っ込んだままぶっ倒れたのと。
友里恵が洗濯物をたたみ終わったのと。
ほぼ同時だった。

風見さん、悪りぃね。奥さんいただくよ。
あんたもう、わしの相手はようし切らんじゃろ?
おっさんは行儀悪くズボンの股ぐらを抑えながら、友里恵のほうへと迫っていった。

逞しいむき出しの腕を背中に廻されながら、友里恵がいった。
あっちでしてくるからね。
両手を合わせてごめんなさいポーズを取りながら、苦笑いをしていた。
気になったら、覗いてもいいからね。
羽交い絞めされて隣の寝室に引きずり込まれながら。
友里恵はこちらを振り向き、イタズラっぽく片目をつぶってみせていた。

ああッ・・・ずたん。ばたん・・・っ。

始まった。ああ、始まった。
妻がヒロイン演じる、真っ昼間のポルノビデオが。
そう、人妻の生き血を愉しむときは、性欲処理もしてしまうのが、彼らの礼儀とされていた。
あ~、たまらんな・・・
わたしも股間の疼きをこらえきれなくなって。
さっきまで貧血を起こしていたくせに、頭にムラムラと血をのぼせてしまって。
こたつから起ちあがり、夫婦の寝室を――四つん這いになって、覗き込んでいる。

汚されて、染められる。

2015年03月03日(Tue) 08:15:15

初めて吸血鬼の棲む邸に伴った妻は、純白のスーツ姿。
結婚記念日に新調したスーツを、初めて生き血を吸われ犯されるその日の衣装に選んだ妻は。
クリーム色のタイつきブラウスを惜しげもなく真っ赤に染めながら。
生き血を吸われ、犯されていった。

それからひと月かけて。
妻の持っているよそ行きの服は、一着また一着と、真紅に染められていって。
入れ替わりに、男の選んだ服を、身にまとうようになった。

ふた月後。
傍らに寄り添う妻が身にまとうのは、きんきらきんのミニのワンピース。
そのまえは、真っ赤なミニスカートだったっけ。
汚された妻は。衣装もろとも塗り替えられて。
男の色に、染められていた・・・