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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

博愛。2

2017年05月26日(Fri) 07:54:40

血を抜き取られた若い身体と心とは、心地よい空っぽ状態。
タカシは床に尻もちを突いたまま、窓の向こうの青空を見あげる。
背後のドアの向こうで行われている行為から、ひたすら注意をそらすために。

かな子と2人連れだってやって来た、吸血鬼の館。
クラスの男女が1人ずつ、当番で行われる献血行為は、すでになん回になったことだろう?
「博愛の献血行為、なんですよね?」
両家の育ちで人の汚れなどこれっぽっちも意識にないらしい連れの少女は、
制服姿の肩を並べてここを訪れるたび、確かめるように彼に訊いた。
温かな人柄をたたえた柔らかなまなざしがひどく眩しくて、少年はそのたびごとに無口になる。

彼女とつきあうようになったのは、この訪問がきっかけだった。
もしかすると感謝をしなければいけない相手だったが、
さっきまでタカシの血をしつように吸い取った吸血鬼に対して、少年は複雑な思いを抱いている。
たんなる栄養摂取にしては、男が少女の素肌に執着するようすは、明らかに不自然だったから。

それでも少女は博愛の行為をやめようとはしなかった。
男のあらぬ想いを薄々察しながらも、賢明にもそれに気づかないふりをして、応接をくり返す。
連れの少年が心に秘めた複雑な思いに対しても、きっと同じように察しながらも、気づかないふりをしているのだろう。
ドアの向こうで、制服姿を凌辱されている少女はそれでも、礼節を尽くして男と接し続けているに違いない。

男とふたりだけのとき、彼は少年に囁いた。
――身をもってわしのことを救ってくださるのじゃ。あのひとの名誉はなんとしても、わしが守る。
同じように。
僕は彼女の名誉を守ることができるのだろうか?
タカシがそんな想いを胸にふたたび青空に目をやったとき、
あぁ・・・
少女が不覚にも洩らした声が、ドアの向こうから洩れてきた。

博愛。

2017年05月26日(Fri) 07:40:27

「献血に伺いました」
制服姿の少女は、おっとりとほほ笑んで、礼儀正しく一礼する。
相手は醜悪な、老年の吸血鬼。
けれども少女は、博愛を旨とする学園の優等生らしく、ひたすら礼節正しく相手に接しつづけていた。
その身に宿す若い血潮が、この老人の損なわれた心身を癒すことを、信じて疑わなかったのだ。

「ストッキング、今日も破かれてしまうのですか?」
その問いを発したときだけ彼女は、ちょっとだけ眉を顰めた。
処女らしい羞じらいと潔癖な嫌悪感が、彼女の意思を裏切ってその整った目鼻立ちをよぎる。
応えない相手の態度に、自らの質問のはしたなさを感じてか、少女は顔を赤らめながら、ベッドのうえにうつ伏せになっていった。
制服のプリーツスカートの下、黒のストッキングの薄い生地越しに、大人びた白い脛がなまめかしく映える。
吸血鬼は目の色を変えて少女の足許にかがみ込んで、好色な唇を吸いつけていった。

自らの行動が博愛の精神に通じると、信じて疑わない少女。
相手の純真を知りながらも、己の劣情を抑えかねる老吸血鬼。
小父様、お行儀よくないわ――
そう言いたいのをこらえて歯がみをする少女の脚を抑えつけて、
チュウチュウと音をたてて少女のふくらはぎを吸いつづける吸血鬼は、
薄手のナイロン生地に淫らな唾液をヌルヌルと、しみ込ませていった。

相姦家族

2017年05月25日(Thu) 07:44:29

啓一郎が勤めから戻ってくると、娘の華菜が制服姿のままリビングで頬杖をついて、父親の帰りを待っていた。
「父さんお帰りぃ」
華菜はいつもの自堕落な口調で、父親の帰りを迎えると、両親の寝室のほうをあごでふり返って、いった。
「母さんは今、熱烈浮気中だよぉ」
啓一郎もさるもの、「あ、そう」と軽く受け流して、妻の作った晩御飯をレンジに持っていく。
「長次郎のやつ来てるんだ」
ちゃんと浮気相手のことも、よくわかっているのである。
長次郎とは幼なじみの仲で、若いころから嫁を交換したりするほど親しかった。
「ちょっとー、だらしないじゃん~。奥さんに浮気され放題なんてー」
華菜は頬杖を突いたまま、からかい口調で父親をなじる。
啓一郎はそんな娘をふり返りもせずに、「仲いいんだったら、いいんじゃないの」と、取り合わない。
両親の愛情が冷めきっているわけではなくて、父が母とのセックスを毎晩のように欠かさないことも、娘はしっかり把握していた。
「お2人、今夜はアツアツだったよ~。今夜はあたしが、母さんの代わりに相手してあげようか」
娘はどきりとするようなことを、父親にいった。
啓一郎はさすがにあわてた。
「ば、バカ。いくらなんでも父娘でそんなことできるかよ!」
華菜は格好の良い脚をぶらぶらさせながら、しゃあしゃあと応えた。
「だってー。父さんがしてくれなかったらあたし、このあと長次郎小父さんに姦(や)られることになってんだもん」
初めてはやっぱり、父さんがいいな・・・と、華菜は笑った。
男をいちころにするような、あどけない媚び笑いで。

やがて奥の寝室から、長次郎が頭を掻き掻き出てきた。
「悪りぃ、悪りぃ、今夜は帰り、早かったんだな」
啓一郎は咎めもせずに、いつから来てるの?と訊いた。お昼過ぎからと答えがかえってくるとさすがに、「よくがんばるなあ」と感心している。
妻の浮気相手は娘を指さして、啓一郎にいった。
「華菜ちゃん、どっちが先に女にする?」
長次郎はちょっとだけしんけんな顔になっていた。
啓一郎が華菜の手を邪慳に引っ張ると、「それがええ、それがええ」と、納得したようにうなづいている。
どうやら、華菜の処女にはそんなに、執着していないらしい。

妻と浮気相手、父親と娘がそれぞれ別の部屋で戯れ終わると、どちらからともなくリビングに戻ってきた。
夫婦はそこで初めて、顔を合わせる。
「おかえりなさい、早かったわねえ」
妻がなにごともなかったかのように夫をねぎらうと、
「んー、今夜はみんな早上がりだったんだよな」
と、夫もふだんと変わらない口調で、妻に応えた。
妻の華子は娘の華菜に、そのときだけは母親らしい気づかわし気な顔になって、「痛かった?」と訊き、
「んー、けっこうキモチよかった」と娘がしゃあしゃあと応えると、「この子ったら、まあ」と、ちょっとだけ口を尖らせた。


翌晩啓一郎が家に戻ってくると、妻の華子がリビングで頬杖をついて、夫の帰りを待っていた。
「おや、華菜は?」
夕食時に姿を見せない娘を父親が気づかうと、華子はいった。
「長次郎さんと仲良くしてる」
夕べあのあと相手を取り替え合ってセックスに耽ったが、どうやら長次郎は娘のことも気に入ったらしかった。
「ふた晩続けておんなじ人とだなんて、あのひとにしては珍しいね」
華子はぼそりとそういった。

やがて華菜の勉強部屋から、長次郎が頭を掻き掻き出てきた。
「ロリコン男~」
啓一郎が長次郎をそういってからかうと、あとから出てきた華菜が「父さんだっていっしょじゃん」と、やりかえした。
「相談があるんだけどさ」
ひとの家の娘を犯しておいて、長次郎は啓一郎の真横に座るとずばりと切り出した。
「華菜ちゃん、うちの誠太の嫁にくれないかな」
啓ちゃんとの仲はそのままでいいから・・・と、長次郎は寛大なところをみせてくる。
「いちおう父親として味見をしたけど、華菜ちゃんいい身体しているワ。こんな子がウチの嫁になってくれたらエエなあって夕べ思ったんよ」
息子の誠太にも、ぜんぶ話してあるという。
「父ちゃんが未来の嫁の味見をしたことまでか?」
さすがに啓一郎が訊き返すと、「もちろんね」と、長次郎とこたえた。
家族の間で秘密はなしってことにしてるから――と、真面目な口調になっている。
誠太が初めて識った女が実の母親だということも、啓一郎は長次郎からきいて知っていた。
「あいつは優しい子だからな、華菜ちゃんがお嫁に来てくれるなら、父さんも時々抱いてもかまわないよって言ってくれたよ」
娘の新婚家庭はいったいどういうことになるのだろう?と、啓一郎はおもった。
「あいつ、俺の子じゃないことも、ちゃんと知ってるんだ」
長次郎はまたしても、どきりとするようなことを言った。


もともと啓一郎のところは、ごく普通の真面目な家庭だった。
しかし長次郎の家は、母子や父娘のセックスを、ふつうに交わす家だった。
生まれ育った家の習慣をむしろ誇りに思っている長次郎は、「そのほうが楽しいぜ?」と、啓一郎をそそのかした。
十代のころは同性愛の経験もある幼なじみに誘われるまま、啓一郎は妻の華子を誘惑するチャンスを与えてやり、
長次郎はまんまと、幼なじみの愛妻をたらし込んでしまっていた。
「おれだけいい想いしたら悪りぃから」と、長次郎は義理堅いところをみせ、啓一郎には自分の嫁を紹介していた。
長次郎の嫁の雅江もまた、義父に抱かれることで目ざめてしまっていて、
ふた組の若夫婦はしばしば嫁を取り替え合って夜を過ごしてきた。


長次郎が息子の誠太を啓一郎の家に連れてきたのは、その次の日のことだった。
誠太と華菜とは、知らない仲ではない。
けれども、電車で2時間かけて都会の名門校に通うようになった華菜を目にするのは、久しぶりのことだったに違いない。
このかいわいで着ている子も少ない名門校の制服を着た華菜のことを、誠太は眩しそうに見つめた。
「ほんとにいいの?あたし、こっちの父さんとも、うちの父さんともご縁のある子になっちゃったんだよ」
自分の素性をあっけらかんと暴露する娘に、
「平気だよ、うちそういうの慣れているから」
妙に明るい瞳をした青年は、さわやかな口調でこたえていた。
「ボク、父さんの子じゃないからね。父さんも知ってるけれど」
啓一郎は、夕べ長次郎が同じことを言っていたのを思い出した。「いったいどういうこと?」
「橋のたもとに掘っ立て小屋を建てて棲んでる爺さん、いるだろ?」
長次郎はこのかいわいに永年棲み着いている浮浪者のことを話題にした。
「雅江のやつが俺のところに嫁に来るすこし前に、あいつに犯されちまったんだ」

どっちかというと俺さ、変態だからドキドキしちまって。
弱みを握られた雅江がやつのところに呼び出されてあの掘っ立て小屋のなかで抱かれてるのをのぞき見して、愉しんじまっていたんだ。
たまたまさ、勤め帰りのスーツを着崩れさせて出てきた雅江と鉢合わせしちまって、
それからはさ、デートのあとに爺さんのところに立ち寄って雅江を抱かせて、そのあと二人で草むらで姦(や)るのが習慣になってたんだよな。
誠太はそのときの子。

「あら」
華子がちょっとびっくりしたような声をあげた。
「どうしたの、母さん」
長次郎小父さんの打ち明け話に興味津々で聞き入っていた華菜が母親をふり返ると、華子がいった。
「だってその人にあたしも、この人と結婚するちょっと前に襲われて犯されちゃったのよ。
 華菜はそのときの子。

・・・ってことは・・・。
父親ふたりは、顔を見合わせる。
誠太と華菜はじつの兄妹?
婚約者の純潔を同じ浮浪者に奪われた男ふたりは、「なあんだ」と、苦笑し合った。
華菜が真っ先に反応した。
「じゃああの小父さんも、あたしたちの結婚式に呼ぼうか」
だれもがいちように、頷き合っていた。
「あのじいちゃん、まだお盛んなんだよ。華菜の友だちも二人やられた」
「ボク、爺さんに逢いに行く時華菜のことを連れてってやる」
「実の娘でも抱くかな」
「関係ないんじゃない?ああいうひとは」
「雅代がやられたときには、勤め帰りのスーツ着ていた」
「あたしが啓一郎さんより先に犯されちゃったときも、新調したばかりのスーツ台無しにされたのよ」
「お友だちがやられちゃったときは2人とも、学校帰りだったんだって」
きちっとした服を着ている女を襲いたがるんだな・・・男たちはいちように、納得していた。
「ボクといっしょに爺さんのところに行く時には、制服着て来てね」という誠太に、華菜はあっさりと「ウンいいよ」と、こたえていた。

「チョウの家の人たちは、みんな強いな」
啓一郎がそういうと、
「華子さんも華菜ちゃんも、強くなったじゃん。俺の感化で」
と、長次郎は妙な自慢をした。
「どっちの父さんも さ」
誠太がいった。
「僕たちが結婚してからも、華菜ちゃんとつき合ってもいいからね。むしろそのほうが、まともな子が生まれたりして」
きらきらと虚ろに輝く瞳が、ひどくさわやかだと華菜はおもった。


あとがき
倫理観がかけ離れた家族の日常を淡々と描いてみたいな と思っていたら、
これでもかこれでもかというくらい、変なお話になってしまいました。 (^^ゞ
啓一郎の一人娘も、長次郎の一人息子も、お互いの妻が浮浪者に犯されてできた子・・・ということは、
どちらの男も子孫がいないことになるんですね。
ふたりが子孫を残すチャンスは、華菜に託されているみたいです。

奥さんを紹介してくれないか。

2017年05月22日(Mon) 07:54:55

奥さんを紹介してくれないか。

わたしの血をなん度も吸った吸血鬼に、そうねだられて。
断り切れなくなりかけていた。

ちょっと待ってくれ。
ひと晩だけでも、待ってくれ。
妻を説得してみせるから。

出来ないに決まっている約束をくり返すわたしに彼は、「無理はするなよ」と言ってくれた。
けれどもそのうちに、妻のほうでわたしの顔色を見て察してしまっていた。

あなた、吸血鬼に逢っているでしょ。
私のこと、紹介するの?
覚悟はできているわよ。だからあなた、無理しないでね。

この街に吸血鬼が出没することも。
都会で暮らせなくなったわたしたちがこの街に棲むことを受け容れてもらえたのは、
いずれこうなることを夫婦ながら同意したのと引き替えであることも。
妻もわたしも、忘れてはいなかった。

吸血鬼に妻を紹介する。
ということは、
吸血鬼が妻を襲うことを承知する。
というのと、同意義である。
そんなことはもちろん、わかっている。
わたしの知らないところで襲ってくれればいいのに。
ふとそう考えたこともある。
けれどもそういう考えは卑怯なのだと、心のどこかでそんな声も聞こえてくる。
自分の関係ないところで、物事が自分に都合のよいようにまわってくれる。
もしもそんな状況が訪れるとしたならば、それはだれかによほど感謝しなければならないレベルなのだから。

吸血鬼は、「紹介してほしい」と願っている。
妻もまた、「紹介を受ける覚悟はできている」と言っている。
吸血鬼は、「きみの妻を襲わせろ」と希望している。
妻もまた、「襲われてしまっても仕方がないと観念している。
ふたつの意思に、3つ目の意思が後追いをして、おなじ道をたどるのは、もう時間の問題だった。

いつもの公園で首すじを咬んでもらった後、
わたしは彼を伴って、帰宅する。
あらかじめ言い含められていた妻は、よそ行きのいい服を着て訪問客を待ち受けて、
ありあわせのお酒で、初対面のお祝いをして。
酔っ払ったから夜風に当たって来ると言い訳しながら玄関のドアを開ける背中越し、
吸血鬼が妻を押し倒すのを、気配で感じていた。

ちょっと出てくるとは、ポーズだけの話。
ゾクゾク昂る気持ちを抑えかね、わたしは自宅の庭先にまわり込んで、いちぶしじゅうを見届ける。
観念して首すじを咬まれた妻は、
ストッキングを穿いた足許にも唇を吸いつけられて、
相手の男がストッキングを咬み破るのを、顔をしかめて見守って。
もういちど、息荒くのしかかってくるのを防ぎかねて、
唇で唇をふさがれる直前、「あなたぁ!」とちいさく叫んで、
股を割られ、強引な腰の動きに支配されて、
歯を食いしばって耐えていたはずが、いつの間にか悩ましい吐息を洩らしはじめていた。

素知らぬ顔をして帰宅したとき。
ふたりはしれっとした顔つきで、お酒のつづきをやっていた。
「時々お誘いを受けるからね」
まんざらでもなさそうな妻の横顔を軽く睨んで、
今夜こいつが帰ったら、どうやって押し倒してやろうか?と、
久しぶりにそんなことを想い浮かべているわたしがいた。

奥さん、よくもつな。

2017年05月22日(Mon) 07:38:09

「奥さん、よくもつな」
同僚にふと声をかけられて。
そんなものかと思ってしまう。

妻がこの街に棲む吸血鬼に襲われて、はやひと月になる。
この街に転居してきたのがひと月半ほどまえのことだから、
たったの2週間で襲われたことになる。
もう――真人間として暮らすより、長い時間を過ごしてしまったことになる。

セックス経験のある女性を相手にするとき、吸血鬼はきまって肉体関係まで迫ってくるという。
「お願い。それだけはしないで」
妻の懇願を容れてくれたというのは、当地ではかなり珍しいことらしい。
「うちのやつなんか、ぼくのいる目の前でヤられちゃったんですよ」
若い社員のひとりはそんなことを、いともあっけらかんと口にする。
そう。
吸血鬼に妻を姦(や)られるという事態がふつうに存在するこの街では。
妻や娘を吸血鬼に犯されることは、必ずしも不名誉なことと見なされていない。

さいごまで気丈に振る舞った妻。
献血には理解を示し、相手の渇きを見定めると、過不足なく自分の血を与えるようになっていた。
「たまには、あなたに言わないで出かけることもあるけど、心配しないで」
吸血鬼と2人きりで逢っても吸い殺されることはない。
それはお互いが暗黙の裡に交わした、信頼感の賜物なのか。

相手の男は妻を襲った翌日、わびを入れにわが家を訪れ、
自分から首すじを与えて、妻の味わった貧血をわたしも味わってしまうと、
妻がこの男に狂わされた理由をすぐに察して、
貧血がさほどでもないことを良いことに、ほんの少しの間だけ、家を空けてやったのだった。
帰宅したとき、妻のスカートは透明な粘液に彩られ、裏地まで浸されていたけれど。
「そこから奥には入り込んでいないから」という説明を、わたしは全面的に信用することにした。

「奥さん、よくもつな」
そんなことがあってからひと月たって、言われた言葉。
そう――妻はいまだに、吸血鬼に身体を許していない。
貞淑ぶりを発揮した妻は、いまでは羨望と畏敬の念で、わたしの職場で語られる。

つい先週、2人きりで逢ったとき。
奮発して、インポートもののストッキングを穿いて出かけた妻。
ひざ小僧までまる見えになるほど咬み剥がれたストッキングもそのままに帰宅した妻は、
「いつものやつでも十分嬉しいって言われた」と、
ちょっと嬉しそうにそういった。
「ストッキング代くらい、わたしが稼いであげるから」
わたしがそう耳もとで囁くのを、まるで恋人同士だったころのように、ウットリと頷き返す妻。
嫉妬は昂ぶりを生むものなのか。
そのあと二人の身体がバランスを崩していったのは、理の当然というものだろう。

「ストッキングを破る行為は、セックスの代わりらしいね」
村の長老の老いらくの恋を好意的にかなえてやったという上役は、
おだやかな声色でそういった。
「だから奥さん、奮発して高いストッキング穿いて行ったんじゃないかな」
そうかもしれませんね、と相槌を打つわたし。
いまでは、妻の貞操をなんとしても守り抜こうとは、必ずしも思っていない。
なりゆき次第で、妻を犯されてしまっても。
彼はわたしのもとから妻を奪い去ろうとまではしないことも、
妻が彼に従って家を去ったりもしないことも、
十分に伝わってくるから。

必要とする血の量が、かせとなって。
ひとりの女だけを追い求めることのできない身。
それは男としても悲しいことだと彼はいう。
でも――そうした宿命だから、あんたから奥さんを奪えずにいて、
あんたの幸せをすべて壊してしまうことがないんだろうな。
いつだか彼は、そういっていた。

ある晩わたしは、出かけてゆく妻の耳もとで、そっと囁く。

好きにしていいんだよ。

妻ははっとしてわたしを見返ると、しんけんなまなざしをこめて、いった。
じゃああなた、今夜私についていらして。
初めて犯されるところ――夫として見届ける義務があるわ。

ジャケットを通すのにひどくまごついているわたしを見て、
「うろたえないで」と、たしなめるきみ。
そう、きみは今夜、最愛の夫の見守るまえで、二度目の恋を成就させる。


あとがき
コチラのお話と、ちょっとだぶっているかも。
「間もない同士」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3467.html
ストッキングを奮発するくだりが、どうも頭に残っていて。
このお話を描いてすぐ、こんなメモをとっていました。
「奥さん、よくもつな」
「奮発して、高いストッキングを穿いて行った」
「セックスの代わりになっている?」

たった3行のメモから作ったお話です。

気の強い女

2017年05月22日(Mon) 06:58:15

侮辱しないで。好き好んでストッキングを破ってもらってるわけじゃないのよ。
女は言葉で、抗った。
では、毎回真新しいのを穿いてきてくれるのは、どうして?
吸血鬼は舌なめずりをしながら、訊いた。
恥を掻きたくないからよ。
女はけんめいに抗いながら、答えた。
心意気はあっぱれだけど。俺はやっぱり愉しませてもらう。
男の言いぐさに、女は無言で目を瞑る。観念した――ということなのだろう。
好色な舌なめずりが足許の装いをいびつに皺寄せてしまうのを、
女は歯を食いしばって耐えていた。
許してほしい。
男は女の髪を撫で、それからおもむろに、ふくらはぎを咬んでいった。
すすり泣きの下、女の足許をしつような唇が這いまわり、ストッキングを剥ぎ破っていった。

抱きしめた女をちょっと放して、目と目を合わせると。
女は涙目で、「ばか」といった。
「たしかにばかです」
男は神妙な目で、女を見返した。
「まじめな顔しないで」
女はそういうと、目を背ける。
そむけられた首すじに魅入られるように、男の唇が女のうなじを這った。
至福のひと刻――
女は目を見開いたまま、男が自分の血を飲み耽るのに耐えていた。

一回だけぶっていい?
女の問いに男が頷くと。
女はばしぃん!と男に手ひどい平手打ちを食らわせて。
頬を抑える男に「これでおあいこね」と言い捨てて、きびすを返してゆく。
行きかけた女はふと立ち止まり、
「また来るから」
「明日」
「手かげんしてくれたしね」
思いつくたび切れ切れに追加される言葉は、言葉の主が意外にぶきっちょなのだと告げていた。
貧血がほどほどで済んだ証しに、女の頬はいつも以上にほてっている。

ひし形もようのハイソックス 2  ~相姦の巻~

2017年05月19日(Fri) 06:14:50

思いもかけない凌辱劇だった。
気がつくと姉さんは吸血鬼の猿臂に巻かれ、デニムのスカートをたくし上げられて、
明るい陽の光の下、白い太ももを露骨なまでにまる見えにさせて、押し拡げられていった。
「あああっ!京太あっ!見ちゃダメッ!」
姉の言いつけでも、素直に従うわけにはゆかなかった。
周りの草葉を揺らしながら犯されてゆく姉は、食いしばった白い歯を薄い唇から覗かせながら、激しくかぶりを振りつづける。
「見ちゃダメ!見ちゃダメ!お願い視ないでッ!」
はじき散らされた言葉とは裏腹に、姉の受難をじーっと見つめる弟は、
貧血で身体が痺れているのを良いことに、吸血鬼の呪わしい抱擁から姉の純潔を救い出す務めを放棄している。
「やだっ!やだっ!だめえっ!イヤ・・・厭・・・厭っ。お願いっ」
必死の懇願もむなしく、乱されたデニムのスカートの奥に、男の逞しい腰が沈み込んで、
激しい上下動に姉の細い腰が無理やりつき合わされて、
強引なその動きとひとつになってゆくいちぶしじゅうを、少年ははっきりと見届けてしまった。
姉は弟の視線を意識しながら、薄い唇を半開きにして、それでも歯がみをし続けていた。

気がつくと。
姉のうえにのしかかっているのが自分であるのを、京太は自覚した。
抑えつけた手首をはずそうとして身をよじる姉の面差しに激しくそそられて、
京太は自分が吸血鬼になったかのように、正美の首すじに唇を吸いつけていた。
吸血鬼が吸ったのとは、反対側の首すじだった。
女の匂いがムッと少年の鼻腔を満たし、目をくらませる。
視界の向こうには、脱ぎ捨てられた半ズボン。
ひし形もようのハイソックスを履いた正美の脚に、同じ柄のハイソックスの脚をからみつかせながら、
少年は激しく昂った股間を、自分の下で開かれた太ももの奥へ、押し当てようとしていった。
そうはさせまいと必死で抗う姉は、「京太やめて!」と叫びながらも、
急に身体の力を抜いて静かになって、
激しくぶつけられてくる弟の性欲のまえ、わが身をゆだねていった。
どちらが男、どちらが女。
ひし形もようのハイソックスの二対の脚たちは、いずれとも判別できないほど密にもつれ合って、
脚と脚とが重ね合わされもつれ合うにつれて、
ふたりきりで暮らしていた姉と弟との関係が、恋人同士のそれにすり替わっていった。

「きみは血に飢えたわしに同情して、生き血をくれるようになった。
 ハイソックスを履いた脚を咬みたがるわしの習性を知って、姉さんのハイソックスを履いてきてくれるようになった。
 処女の生き血を欲しがっているわしの願いを察して、姉さんをここまで連れてきてくれた」
「あんたは弟の身を気遣って、身代わりに血を吸わせようとしてここに来てくれた。
 処女の誇りを守り通そうとして、必死に公園じゅうを駆け回って、さいごまでわしに抵抗をし続けた。
 けれどももとより引き返すつもりはなくて、さいごのさいごまでわしのために尽くしてくれた」
「きみは姉さんに恋をしたわしの気持ちを察してくれて、わしが姉さんを誘惑するのを邪魔しようとはしなかった。
 そして姉さんを怖がらせないようにと自分からお手本を見せてわしに血を吸われて、
 あとはわしの自由にさせてくれた」
そういうことで構わないだろう?
男の勝手な言いぐさに、眼の輝きを失った姉弟は、うつろな表情でうなづき続けた。
「それに違いないよね?姉さん」
「そうね。これからもわたしたちの若い血で、小父様を助けてあげないとね」
お嫁入り前の純潔を守ろうとして抵抗し続けたあの張りのある叫び声はどこへやら、
姉は打って変わって低い声色で、弟にこたえる。

「ありがとう」
散々な乱暴狼藉の末勝ち得た快楽が吸血鬼の兇暴さを鎮めたものか、
姉弟のうら若い血をまだしたたらせている牙の持ち主の声さえ、低く落ち着いていた。
言葉少なに告げられる感謝の呟きに、意外なくらいの真実味が込められているのを、
姉も弟もなんとなくであるが感じ取っていた。

「じゃあこれからもきみは、姉さんをわしのために連れてきておくれ。
 お礼にきみのまえで、姉さんが悦ぶところを見せつけてあげるから」
「ウン、お願いね」
京太はいつもの少年言葉に戻っていて、
「いけない子ねぇ」
正美も弟の悪戯を優しくとがめるだけの姉に戻っていた。

「今度、べつの街に移ったときは、姉弟じゃなくて恋人同士で入居しようよ」
「そうね。私たち、きっと周りをだまし通せるわね」
風変わりな弟の求婚を、姉は風変わりな返事で受け入れる。
「それがいちばんよろしい」
若いふたりの証人になってくれた吸血鬼に、京太はぽつりとつぶやいた。
「きょうのボクは、自分のお嫁さんが処女を奪われるところを視ちゃったんだね」
「ウフフ。参った?」
突きあげる昂奮に、弟が不覚にもつつっと鼻血を滴らせるのを見て、姉は笑った。
「いつでも新居に遊びに来てね。そうしたら、ボクのお嫁さんを寝取らせてあげるから」
肯く吸血鬼に、京太は笑った。正美もほほ笑んでいた。

ひし形もようのハイソックス1  ~喪失の巻~

2017年05月19日(Fri) 05:50:36

半ズボンの下、にょっきり伸びた少年の足許を引き締めているのは、ひし形もようのハイソックス。
男の子のそれにしては派手なもように彩られた足許を、彼は自慢げに見せびらかした。
相手は、少年の血を吸っている吸血鬼。
ちょうど少年の父親くらいの年代の男だった。
「姉さんがいつも履いているやつなんだ」
丁寧に咬んでね・・・という少年の希望通り、彼の足許にかがみ込んだ男は、
ひし形もようのふくらはぎに、そうっと唇を忍びよらせる。
にゅるっと吸いつけられた唇に、少年は「うぅん・・・」と眉をあげ、顔をしかめる。
ひし形もようのハイソックスごしに刺し込まれた牙の周りを、少年の血潮がじわじわと浸していった。
整った目鼻立ちをイヤそうにしかめながらも、こみ上げてくる愉悦をガマンし切れない。

「ひどいなぁ」
貧血にあえぎながらも少年は、血をたっぷりしみ込まされて足首まで弛み堕ちたハイソックスの足許を見おろして、恨めし気に呟いた。
ククク・・・男はなおも少年を放さずに、こんどは首すじを狙っている。
ずぶり。
食いつかれた牙の鋭さに、「あぁ・・・」と、少年はふたたび随喜の呻きを洩らしてゆく。
「今度、きみの姉さんを紹介してくれ」
男はいった。
「なん足も持っているんだろ・・・?こんどは持ち主の足許から、咬み剥いでみたいんだ」
男の不埒な言いぐさに卑猥な意味が込められているのを知りながら、少年は激しくかぶりを振っていた。
ジェスチュアとは裏腹に、「連れてきてあげる」と心のなかで呟きながら。

「京太!なにやってんの!?あたしのハイソックスに悪戯してっ!!」
ピンと張り詰めた声を周りじゅうにまき散らしながら少年のあとを追いかけるのは、デニムのスカートの女。
ローズブラックのブラウスの襟元がどことなくなまめかしい彼女は、もう少女と呼ばれる世代を終わろうとしている。
齢は19、女子大生の正美は、気が強いけれどもまだ彼氏のいないおくての少女。
前を駈けてゆく弟の半ズボン姿の足許に、見慣れた柄のハイソックスが引き伸ばされているのを見つけると、
それが自分のものだとわかるのに半秒とかからなかった。
いつもはぐんぐんと引き離されてしまう弟の逃げ足はいつになく遅く、
公園の隅っこまでの姉弟のかけっこを、つかず離れずの距離感でつづけてゆく。
それが罠だとは知らないで、姉娘はひたすら悪戯な弟を罵りつづけ、追いかけつづけた。
おそろいのようにひし形もようのハイソックスをまとった脚たちが、爽やかな草原を駆け抜ける。
姉娘の駆け足が立ち止まり、足許をすくめた目のまえには――弟の血を吸い取ったあの男がいた。

「だあれ?あなた」
正美の問いには答えずに、男はフフフ・・・と不気味に笑うと、立ちすくんだ女の目の前にマントをひるがえした。
あきらかに吸血鬼という扮装の男。
それが真っ昼間から公園の隅に出没していたら、だれしもが思うに違いない言葉を正美は口走った。
「京太!ヘンなひとがいる!近寄らないでっ」
男の出現した場所をいちどは駈け去りかけた少年は、すぐにゆっくりと戻ってきて・・・
あろうことか吸血鬼の猿臂に、自分から巻かれていった。
「あああっ」
姉娘の絶叫するなかで、京太はいつものように男に首すじをあずけ、
Tシャツのえり首に血の帯を滴らせながら、血を吸い取られていった。
これから初めて犠牲になる姉に、まるで手本を見せるように。
「あああっ」
二度目の悲鳴の下、正美は自分の首すじを男の牙に抉られていた。

うひひひひひっ。
貧血に息も絶え絶えの正美の前、
男はいやらしいうめき声をあげながら、京太の足許をいたぶっていた。
弟のふくらはぎの周りを彩る自分のハイソックスが、巻きつく舌と、その舌が分泌する唾液とに、もてあそばれてゆく。
「これが愉しうてな、弟さんに履いてきていただいたのぢゃ」
ハイソックスのうえから突き立てた牙の周りに弟の若い血潮が滲むのを、正美はぼう然として見守った。
つぎは自分の番・・・わざわざ教えられなくてもわかっていた。
けれども、咬まれた傷口からしびれ薬でもそそぎ込まれたのか、正美は自分の身体が硬直するのを感じるばかり。
みるみるうちに這い寄った男の手に足首を握られて・・・
気がつくと、ずり落ちかけたひし形もようのハイソックスのうえから、弟と同じように咬みつかれていた。
あひいっ・・・
姉弟の血を飲み耽る吸血鬼を見とがめる人の姿はなく、
男は変態性欲の裏返しである食欲を、ひたすら若いふたりの身体にぶつけてゆくのだった。

間もない同士

2017年05月18日(Thu) 07:53:26

2人が初めて出会ったのは、夜の公園。
女は人妻で、夫の転職をきっかけにこの街に来たばかりだった。
男は吸血鬼で、自分たちに寛容と伝え聞いたこの街に、やはり来たばかりだった。
2人は出会った瞬間、狩りをするオオカミと狩られるウサギの関係になった。

ハイヒールの足ではほとんど逃げ切ることなど不可能で、
女はすぐに追い詰められて、
けんめいにいやいやをくり返しながら、
首すじをガブリとやられてしまった。

ちゅう~っと音をたてて生き血を吸いあげられたすぐあとに。
牙を引き抜いた男と合わせた視線と視線。
2人はすぐに恋に落ちた・・・となるはずもなく、
女は怯えに怯えきっていた。
それでも女はけんめいに言葉を放ちつづけていた。
相手と会話をすることが、自分の命綱でもあるかのように。
――全部吸い尽したりしないんですよね?死んじゃったりしないんですよね?
――献血だと思うことにしますから。ですから手かげんしてくださいね。
――あの・・・あの・・・それ以上は見逃して。主人を裏切るのは気が進まないの。

この街では、吸血鬼に出遭った女は無条件に首すじを許すことになっていて、
相手がセックス経験のある女なら、ほぼ例外なく犯すことになっていた。
けれども2人はこの街に来て間がなくて、その習慣に慣れ切ってはいなかった。
男は貧血になるまで女の生き血を吸いつづけ、
それでも女の願いを容れて、犯すことなく見逃してやった。

ベンチの上で貧血にあえぐ女のため、女が歩けるようになるまで付き添って、
立ち去らないでいる彼に恐怖の視線をおずおずと向けてくる女に、
自分の意図さえ伝えていた。
女を家まで送って行くと、家にいた夫はびっくりしたように2人を見、
自分の妻がなにをされたか、なにをされなかったかを、すぐにさとっていた。
夫もまた、この街に来て間もなかったので、この街の習慣に慣れ切ってはいなかった。
「どうぞ、すぐにお引き取り下さい」
そういって男を家にあげずに追い出すのが、精いっぱいだった。

夫婦だけになると妻は、この街がどういう街だかすぐに思い出していた。
もともと――ふつうの街ではやっていけない立場になって、
逃げるようにしてここに流れてきた夫婦だった。
「あの言い方はないわよね」と、妻は夫をたしなめた。
「どうすればよかったんだ」と惑う夫に、「私に任せて」と妻は言い、
「この街でよかったのよね?」ともういちど、夫に訊いた。
夫の応えしだいでは、窮死するまでいっしょでいるほどの気持ちを秘めて。

三日後の晩。
女は初めて襲われた公園の隅に独り佇んで、
案の定、血に飢えた吸血鬼が再び、目の前に佇んでいた。

二度目の逢瀬は、最初のときほど荒れ狂ったものにはならなかった。
2人とも大人だったから、言葉と態度で境界線を引いていて、
一定の節度を保った逢瀬になった。
けれども――素肌に擦りつけられてくる唇のただならぬ熱っぽさに、
女はなにかを感じずにはいられなかった。

「ストッキングを変えましたね」
ベンチに腰かけた女の足許から顔をあげると、男はいった。
もう、なん度めの逢瀬になるだろうか?
男が決まって、ストッキングを穿いた女の脚を好んでいたぶることに気がついて。
女はいつも男に逢う時には、真新しいストッキングを脚に通して出かけていった。
破れたストッキングの足許を見せまいと、夫の帰宅時間より早く家に戻るため、
まだ暗がりが拡がり切らないころから、男を待って公園に佇むようになっていた。
いつも穿いていた安物のストッキングでは申し訳なくなって、
たまには高級品をと奮発したら、敏感な反応がかえってきた。
「奥さんの心遣いには、いつも感謝しています。無理のないようになさってください。
 いままでのやつも、とても気に入っているのですよ」
所帯持ちの良い主婦でもある女にとって、いろいろな意味で優しい言葉だった。
「どうぞお好きなように」
差し伸べられた脚に加えられる凌辱を、女はいつもより居心地よく、耐え忍んだ。

「ご主人にあいさつをしたい。許してもらえるだろうか?」
そんな問いを持ち帰り、おずおずと夫に問いかけたとき。
「礼儀正しい方のようだね。向こうが会いたいというのなら、来てもらってもかまわない」
夫は意外にも饒舌だった。
いまの職場では、ほとんどの社員が妻を吸血鬼に襲われていて、
だれもが2人の関係を黙認したり、
妻の相手をすすんで家庭内に迎え入れたりしているのだという。
「この街に来ちゃった以上、わたしも寛大にならないとね」
これからは、逢うときには夕食を外で済ませてきても良い――そこまで言ってくれていた。
貧血を我慢しながら夕食の用意をする妻のことを、少しは見かねてくれていたらしい。
たまには外食できるくらいにはなったから――好転した経済状態が夫をそう仕向けてくれたのか。
この種の話題を意識的に避けていた夫婦のあいだに、黙契が生まれ始めていた。

お酒の入った男性2人の会話は、女の入っていけないところがかなりあった。
しかしそれだけ夫が相手に打ち解けてくれているのだと、女はそんなふうに思うことにした。
この街に棲み着いた吸血鬼は、すでに女以外にもなん人もの人妻を襲っているらしい。
吸血鬼同士の仲間内で紹介された、だれにでも献血する心優しい人妻もいれば、
女と同じように見ず知らず同士でいきなり出会った関係のものもいるという。
そのすべてとセックスをして愉しんでいる・・・そう訊いたとき、夫はいった。
――あんた、もしかしてうちの妻のことを本気で好きになったんじゃないのか?
男はまだ、女に懇願されるままに、女を辱める体験を持っていないと告げていた。
三人三様に、押し黙ってしまっていた。

やがて夫は立ち上がり、「ちょっと夜風に当たって来る」といった。
吸血鬼もそれに続いて立ち上がり、「今夜は寒いですよ」といった。
夫の後ろ姿に吸血鬼の影が重なって、女が受け入れたのと同じ牙が、夫の首すじに突き刺さった。
夫は薄ぼんやりとした目をさ迷わせながら、自分の意思で招いた客人が妻を相手に初夜を遂げるのを、見守りつづけていた――

「今夜も残業?」
「きみのストッキング代くらいにはなるだろう」
毎朝のように交わされる、夫婦の会話。
夕刻から真夜中まで、相手の望む刻限は。
自分の妻が吸血鬼夫人になることを許容してから、夫はなぜか、明るくなった。
ひところ途絶えがちだった夫婦の交情も、新婚のころのように復活していた。
喪われたもの――いや、許し与えたもの――の見返りに、
いちどすべてを失った男は、以前持っていたものよりも多くを、得たらしい。


あとがき
既存のルールにまだ慣れていない女と男が、
お互いに対する好意を織り交ぜながら、ひとつになっていく。
そんな風景を描いてみました。

婚前交渉

2017年05月18日(Thu) 07:49:54

婚約者の血を吸われるのって、ドキドキするよな。
デートの帰りに2人ながら襲われたのが、さいしょなんだ。
意識がもーろーとなったボクのまえで彼女が生き血を吸い取られて、
さいしょは痛そうに顔をしかめているのが、みるみるうちにウットリしてきて。

まだ処女のようだから犯さないって言いながら。
ストッキングを穿いた脚を咬むときの唇の這わせ方が、すごくいやらしかったんだ。

犯さない代わりに、時々処女の生き血を吸わせてほしいって、せがまれて。
思わず彼女と目を見合わせて。
彼女がなぜか、ウンと肯いて。
ボクもそれにつられて、ウンと肯いちゃっていた。

それからは。
デート帰りに、初めて襲われたのと同じ場所で。
ボクたちは代わる代わる、ヤツに咬まれるようになっていた。
意識がもーろーとなって尻もちをついたボクの前。
ウットリしながら血を吸い取られてゆく彼女の横顔に、なぜかドキドキと胸を震わせていた。

今ではたまに、ボクには内緒で2人きりで逢っているらしい。
でも、2人の間に芽ばえたそんな妖しい習慣を、ボクは咎めることもできないで。
あとを尾(つ)けていっては独りのぞき見をしながら、ウットリし合っている2人の横顔に、なぜかドキドキと胸を震わせているんだから。


あとがき
婚約者の純潔を吸血鬼に譲り渡してしまった彼にとっては、これが形を変えた婚前交渉なのかもしれません。

ある食物連鎖の風景

2017年05月15日(Mon) 07:34:30

学校から戻ると僕は、制服の半ズボンのまま、ハイソックスだけを履き替えて、小父さんの待つ公園に出かけていった。
小父さんは、ちょっとうらぶれた感じのする、サラリーマン。
ぼくの血を吸うために、仕事も早引けをしてくるらしかった。
きょうも小父さんは、ちょっとくたびれたような顔つきの下、同じくらいくたびれたようなネクタイを提げていた。
「ほら、履いてきてやったぜ。小父さんの好きなハイソックス」
僕はいつものように口を尖らせて、ぶっきら棒にそういった。
「どうせ吸うなら、自分の奥さんの血とか吸えばいいじゃん」
毒づく僕に、小父さんはぽつりといった。
「家内はぼくの血を吸った吸血鬼専属になっちゃったんだよ」
ええ~?
それって、まじかわいそうじゃん。
離婚しちゃったの?と訊く僕に、だいじょうぶ、離婚はしてないし夫婦仲もよくなってるから、と小父さんはこたえ、
そのうえで、でも喉をうるおすのはほかでしてくれって言われている、と、教えてくれた。
「ふーん、かわいそうなんだね」
僕の足許にかがみ込んで、ハイソックスをよだれで濡らすのを、僕はいつもより少しだけ長いこと、ガマンしてあげていた。

ハイソックスがずり落ちるまでしつっこく咬み破られながら、僕はふと思いついて、小父さんに提案した。
「今度、姉さんの制服着てきてやろうか?姉さん〇〇学園だから、学校指定のハイソックスを履いて通ってるんだ。
 それもいっしょに、くすねてきてやるから」
小父さんは僕と出会って初めて、活き活きと目を輝かせた。

初めての女装はぎこちなかったけれど。
公園で落ち合ってから別れるまで、さいしょからさいごまで、小父さんは僕のことを女子高生として扱ってくれた。
不思議な満足感を覚えた僕は、時々着てきてやるからって、約束してしまっていた。

制服を黙って借りていることは、姉さんにすぐにばれてしまった。
けれども姉さんは、もうじき卒業だしいいわよって、言ってくれた。
むしろ弟が自分の制服で女装して吸血鬼と逢っているというのが、面白くてならないようだった。

制服のスカートからにょっきり伸びた脚を大の字にして、ずり落ちたハイソックスもそのままに仰向けになっている僕の向こう、
勤め帰りの姉さんはスーツ姿を抱きすくめられ、小父さんに首すじを咬まれていた。
姉さん、処女だったのかな?って。吸血鬼の代わりに心配しながら、
僕は心地よい貧血に身をゆだね、姉さんを救い出す努力を意図的に怠っていた。

「裕子さんの献血、ぼくも認めることにしたよ」
姉婿になる人は、苦笑いしながらそういった。
「でもショックだったなー。処女まで献上する羽目になるとは」って、ただならぬことをさりげない口調でいい流しながら、
それをきき流そうとしている僕を横目に、さらに聞き捨てならないことを口にした。
「代わりに、きみに彼女ができたなら。ぼくに紹介してくれないか?」
首すじに僕と同じ咬み痕をつけたお兄さんに、僕はぶっきら棒に「いいよ」って、答えてしまっていた。

【タウン情報】 夫たちの血液提供は、「時間かせぎ」?

2017年05月15日(Mon) 06:28:18

昨年吸血鬼の受け入れを市が表明してから、夫婦ながら吸血鬼との交際を受け容れる家庭が増加している。
その実態は不明ながら、本誌はそうした家庭のいくつかから取材することができた。

町野元政さん(29、仮名)は、昨年秋に中学からの同級生だった章子(29、同)さんと結婚した。章子さんとは幼なじみで、十数年の交際を実らせた結婚だった。
その章子さんが吸血鬼に襲われたのは、結婚を間近に控えた去年の夏のこと。
デート帰りを襲われた元政さんはとっさに章子さんを逃がしているあいだに吸血されたという。
「彼女が逃げおおせるまでの時間かせぎのつもりだった」という元政さん。その場は章子さんを逃がすことに成功したものの、以後章子さんには告げずに吸血鬼との会合を重ねたという。
「わたし自身が病みつきになっちゃったんですね」そう苦笑いする元政さんはその1か月後、自分から章子さんを吸血鬼に紹介している。
「わたしの顔色が悪くなっていくのを、だいぶ心配してくれていたみたいなんです。
 ですから彼との面会を継続していると打ち明けたとき、”早く本当のことを言って欲しかった”と言われました」
生真面目な交際だったためそれまで処女だったという章子さんだったが、度重なる逢瀬から章子さんの魅力に目ざめた吸血鬼は、供血者に対する以上の好意を抱くようになる。
婚約者の純潔を求められた元政さんは、吸血鬼の希望を「好意的に受け容れた」という。
「最終的には、彼女と相談して決めました。処女を奪われても愛情は変わらないというのは、交際期間が長かったからかもしれませんね」
婚約者の供血行為は結局、恋人を救うことにはならなかった。しかし、と、元政さんはいう。
「妻は今でも、あの時わたしが身代わりになって血を吸われたことに感謝してくれています。やはり、最愛の女性を身をもって守るという行為は、むだにはなっていないと思うのです」。

高野常春さん(36、仮名)と妻の豊子さん(32)が吸血鬼に遭遇したのは、ちょうど結婚10年を迎えたころのこと。
「吸血鬼が夫のいる女の人を好きになった場合、まず夫にアプローチするんですね」と、常春さんはいう。
「なん度も妻を提供するよう求められました。でもわたしは断固として反対しました。妻を奪われたくなかったからです」
という常春さんは、その後十数回も吸血鬼との面会を遂げながらも、妻へのアプローチを拒み続けたという。
「でももちろん、それで彼があきらめてくれるわけがありません。とうとうわたしが貧血症になって倒れ、見舞いに来た妻を目のまえで襲われてしまいました」
豊子さんの首すじを咬んで、美味しそうに血を飲み耽る吸血鬼をまえに、さすがの常春さんもどうすることもできなかったという。
「結局、わたしが妻を襲われまいとして血を提供したのは、ただの一時しのぎにしかならなかったのです」
以後豊子さんは吸血鬼との交際を強いられたが、「本当は心惹かれるようになってからも、わたしのまえでは嫌々出かけてゆくそぶりを見せる妻のことを、潔く送り出すようにした」という。
「頼もしかったのは、妻が主婦としての務めを片時も忘れなかったことですね。
 浮気に出かけても、夕食の支度をするころにはちゃんと家に戻ってきてくれるんですよ」と、常春さんは明かす。
「”夫がいますので”と言っても、許してくれないんです。でも、御飯時になるからと言うと、ちゃんと帰宅を許してくれました。そういうときには、”夫がいますので”と言うとちゃんと聞いてくれるんですよ」と、豊子さんは笑う。
「自分自身が空腹で人を襲うから、でしょうか」とは、豊子さんの想像だが、「意外に相手のことを気にするんですよね。だから主人のことも思いやってくれたのかもしれません。」
もっとも、――どんなふうに思いやるのですか?――という記者の問いに豊子さんが
「エエ、私と逢っている時に、とても主人のことを気にするんです。
 ”いまごろご主人は悶々としているだろうね”とか、”夫がいるのにほかの男に股を開くのは屈辱なんだろう?”とか・・・」
と言いかけた豊子さんに、「それはからかわれているだけだよ」と、常春さんは突っ込んでいた。
しかし、御飯時や子供が帰宅する時間を気にする吸血鬼の習性は街の住民には広く知られており、豊子さんの理解もまんざら的はずれというわけではなさそうだ。
「いまでは、”結婚十周年を機に、妻に愛人をプレゼントした”って、割り切ることにしたんです」
そういって笑う常春さんに、重苦しい嫉妬の影はない。そういう豊子さんも、愛人との交際開始一周年を、間近に迎える。

取材に応じた二組の夫婦の共通点は、どちらの場合も夫が身代わりとなって、吸血鬼に自身の血を吸わせていること。
その動機は、自分が身代わりになって妻を守るという夫の務めを果たそうとしたことにある。
最終的には妻も襲われてしまうので、夫たちは「しょせん時間かせぎに過ぎなかった」といちように洩らす。
しかし、果たしてそれは、単なる時間かせぎに過ぎなかったのだろうか。
恋人の目の前で純潔を奪われてもなお婚約者への愛を失わなかったり、
浮気に出かける妻が夫の御飯支度を気にかけたり、
吸血鬼と不倫をつづける妻たちは、いちように「夫を一番愛している」と告げる。
時間かせぎで消費されたはずの夫たちの血は、きっと時間かせぎ以上の効用を持ち得たと感じるのは、記者だけだろうか。

【タウン情報】初体験の効果は絶大 処女で吸血された女性の回帰率は9割

2017年05月15日(Mon) 05:31:57

市が吸血鬼の受け入れを表明してから20年となるのを機に、本誌は当時処女であった女性80名を対象にアンケート調査を行った。
独自に入手したリストによれば、80名の女性の当時の年齢は、14歳から28歳。うち未成年は約2割であった。
初体験年齢が比較的高いのは、当時は市が吸血鬼を受け容れたばかりであったため、結婚間際の女性が多く狙われたためと思われる。

こんにちでは、吸血体験を遂げた処女の約8割が家族を介して初体験を遂げている。
つまり、すでに血液提供を経験している両親や兄弟姉妹といった家族の紹介で、血を吸われているのである。
一方、20年前に初めて血を吸われた処女たちは、うち6割が初対面の吸血鬼を相手に初体験を遂げていた。
当時はまだ血液提供行為が浸透し切っていなかったことから、親密な関係を築いた吸血鬼に処女の血液を提供するという行為も行きわたっていなかったことが窺えた。

また、初体験後1年未満で結婚した女性が4割を占めた。
学校が吸血鬼によって解放されているこんにちでは、初体験の年齢は低年齢化の一途をたどっており、
20代でしょ体験を遂げる女性の9割が、他市からの転入者である。
市に定住して間もない頃の吸血鬼たちが、結婚を控えた女性を性急に襲ったことが窺える。

初めて性的関係を結んだ相手が吸血鬼である割合は5割強と、昨年の調査とほぼ変わりがなかった。
そのうちの8割以上が、恋人・婚約者の同意を得て結ばれた関係であり、婚約者の純潔はいまもって吸血鬼に捧げられるグレードの高いプレゼントとして若い世代に認識されていることがわかる。
残り5割の女性は予定通り?吸血開始当時から交際していた人間の婚約者と初めての性的関係を結んでいることになる。
吸血鬼は女性の妊娠・出産を機に、一時関係を断つと言われている。育児による大きな負担を考慮しての対応と考えられているが、問題はその後である。
処女のうちに吸血された女性のうち吸血鬼と性的関係を結ばばなかった女性44名のうち、じつに41名が、婚姻後に同じ吸血鬼と性的関係を結んでいるのである。
夫の同意を得て(28名)、最初は気が進まないながら(25名)性的関係を遂げ、以後は夫婦円満に吸血鬼と共存している(41名)というパターンが一般的なようであるが、本人の意思で自発的に吸血鬼と再会している人妻も16名にのぼることから、処女のころの体験の影響力が深いことがわかる。

婚約者の純潔を守り通した世の夫諸君にとって油断ならない結果が判明したが、彼らの名誉のために言い添えると、どの家庭でも吸血鬼を円満に受け容れており、トラブルが皆無であるあたりはさすがであるといえよう。

母さんから

2017年05月12日(Fri) 07:59:45

ヨシくんへ

父さんから聞いたかもしれないけれど、母さんは父さん以外の男のひととお付き合いをすることになりました。
相手は、いつもヨシくんの血を吸っている吸血鬼の小父さんです。
ヨシくんの血を気に入ってくれて、よく血を吸わせてあげているんだよね。
このごろ毎日のようにハイソックスを汚して帰って来るから、変だなって思っていたの。
でも、理由がよくわかったから、母さん怒らないからね。

今度スーパーに行って、ヨシくんが小父さんのために履いてあげるハイソックスを、買いだめしておくわ。
ついでに母さんのストッキングも、買いだめしなくちゃいけないし。
ハイソックスを履いたヨシくんの脚を咬むのと同じくらい、
小父さんはストッキングを穿いた母さんの脚を咬むのが好きになっちゃったみたい。

ヨシくんが貧血になっちゃといけないって、父さんと2人で心配していたの。
でも小父さんと逢って、よくわかったわ。
小父さはヨシくんのことを想いやってくれていて、やっぱり心配していたんだって。
だから、父さんと母さんは、小父さんに献血するって約束したの。
でも母さん女だし、やっぱり怖いなって思っていたら、父さんが勇気を出して、さきにお手本を見せてくれたわ。
やっぱり父さん、えらいよね。
それから母さんも咬まれました。
吸血鬼は女の人を咬むとき、エッチなことをするの。
でも小父さんは、母さんのことを本気で好きになっちゃったみたい。
だから、母さんもあまり嫌な思いをしないで、相手をしてあげることができました。

ほんとを言うと、母さんも小父さんのことが、ちょっと好きになりました。
父さん以外の男の人を好きになっちゃうのは、ルール違反なんだけど。
父さんも小父さんと仲良くなったから、あの人とならいいよって、許してくれました。
お父さんに感謝♪

ですからこれからはときどき、おめかしをして小父さんのところに遊びに行ったり、デートしたりします。
父さんも母さんも小父さんに協力するから、
これからはヨシくんも、貧血にならなくて済むからね。
あと、どんなに楽しくても、2日に1回以上小父さん2逢ってはいけませんからね。
どうしても小父さんに逢いたくなったら、母さんもいっしょに行ってあげる。
そういうときには、ヨシくんが先に吸われていいからね。
母さんの番になったら、気絶しているふりをするのよ。
そのほうが男の人にとっては名誉を守れるからね。
(男の人は本当は、自分のお母さんや奥さんを守らなければいけないから!)
ちなみにきょうの場合、
母さんがエッチなことをされているときには、父さんも気絶した振りをしていました。 (笑)

そういうわけで、明日父さんとヨシくんがお勤めや学校に出かけた後、さっそく小父さんを家に呼んであげることにしました。
小父さんとの関係を、あんまり冷やかしたりしないでね。
あと、傷ついたりもしないでね。
学校でも、お友だちに自分から話しちゃダメよ。
父さんと2人で、母さんの2度目の青春・2度目の恋を、暖かく見守ってくださいね。

父さんから

2017年05月12日(Fri) 07:44:35

ヨシ坊へ

父さんと母さんはきのう、吸血鬼に血を吸わせてあげたんだ。
相手は、いつもヨシ坊の血を吸ってくれている小父さんだよ。
ヨシ坊の血を気に入ったからこれからも末永くお付き合いしたいって、ご挨拶に見えられたんだよ。
ヨシ坊のときもいつもそうだと言ってたけれど、仲良くお話をしながら2人で咬まれました。

さいしょに父さんが咬まれたんだよ。
母さんはちょっと怖がっていたから、お手本をみせてあげようと思ったからね。
ちょっとめまいがしたけれど、気持ちよくゴクゴクと飲んでもらったよ。
そのあと母さんのことを咬んだんだ。
さいしょのうちは母さんもちょっと顔をしかめていたけれど、すぐに仲良くなったからね。
ヨシ坊が父さんと母さんにナイショで咬んでもらったことも、もう叱られることはないからね。

それから、だいじなことなんだけど。
吸血鬼の小父さんは、女の人を咬んじゃうとき、エッチなことをするんだ。
でもね、母さんの相手をした小父さんは、女の人をあやすのがとっても上手で、母さんもすぐに打ち解けていたよ。
それで母さんも小父さんのことが気に入って、これからもお付き合いをしたいって言ったんだ。
嬉しいことに、小父さんも母さんのことが気に入って、時々でいいから片目をつぶってほしいってお願いされたんだ。
父さんはこころよく、OKしたからね。

本当は、男の人にとって、自分のお嫁さんが他の男の人と付き合うのって、あまり名誉なことじゃないんだ。
でも、小父さんが母さんのことをおもちゃにしたわけじゃなくって、本気で好きになっちゃったって、父さんにはすぐにわかったから、
ヨシ坊や父さんとの時間を、母さんも小父さんも大切にするって2人とも約束してくれたから、安心していいからね。
きっと小父さんも母さんも、約束を守ると思うよ。夫婦だから、よくわかるんだ。


だから母さんがおめかしをして小父さんのところに出かけていく時に、さわいだり冷やかしたりしては、いけないよ。
2人で母さんの恋を、しっかり見守ってあげようね。

気丈な姑 10  ~偽装される日常 解放される週末~

2017年05月11日(Thu) 08:27:04

帰宅した悠子は、ほとんど始終むっつりとしていて、無言を貫き通していた。
出迎えた夫は、顔色のよくないのを心配してくれたけれど、
「彼、私の血も気に入ったみたい」
と告げただけだった。
嫁をかばって身代わりに血を吸われた。
そんな意味を言外に含めたつもりだったが、果たして夫にどこまで通じたものか。

こちらの機嫌のよくないときには、努めて距離をおこうとする夫。
そんな夫婦の習慣が、じつにきまりのわるい苦境から、悠子を救っていた。

一刻も早くわれに返るために、悠子は家事のルーテンに戻っていった。
リビングでいつものように黙然と新聞を読んでいる夫をよそに、
晩ご飯の下ごしらえをし、お風呂の支度をし、洗濯機を回す。
あの咬み破かれたストッキングも、他の洗濯物のなかにまぎれ込ませるのを忘れずに――


一週間が過ぎた。
あの日したたかに味わわれることで喪われた血液は、とっくに回復していた。
土曜日曜がめぐってくるのが、久しぶりのような気がした。
昼下がりの息子からの電話が、夫婦の静穏な日常を破るまで。

「母さん?じつはあのひとが今、うちに来ているんだ。
 夫婦の寝室で、美那子とふたりきりになってる。
 様子、見に来るかい?」
話の内容の深刻さとはうらはらな、あっけらかんとしたのどかな口調に、悠子はあきれた。

ま あ っ !
なんてこと!
あなた!もっとしっかりなさいっ!
いま母さんも、そっち行くから!!
母親の顔に戻った悠子は、夢中になって受話器の向こうにありったけの言葉を流し込むと。
夫のほうに向きなおって、いった。
「あのひと、また美那子さんと逢っているらしいの。私説教してくるわ」
夫の眼を見返すいとまさえ惜しんでそそくさとそう言い捨てると、
悠子は部屋に戻って着替えを始めた。

よそ行きのキリッとしたスーツに、真新しいナチュラルカラーのストッキング。
サッとなでつけただけの髪を、こんどは鏡に向かって念入りに梳く。
気づいてみたら、口紅もいつもより濃いめに刷いていた。
そんな様子を、夫は遠くから注意深く眺めていたけれど。
ひとの顔色を読むのは夫の癖――と、割り切った。


息子の家までは、ごくわずかの距離だった。
気色ばんでピンポンを押し、出てきたのが美那子ではなく息子自身であることに、昔気質な悠子は憤然とする。
来客の応対をするのは、妻の役割ではなかったか。
主婦の役割をおざなりにして、あろうことか家に男を引き入れて情事に耽るとは何事か。
「ちょっと!美那子さんどこ!?」

気色ばんだ突進は、そこまでだった。
リビングに出てきたふたりを前に、悠子の威勢の良さは、みごとにぴたりと止まっていた。
美那子はともかく、ひとの魂まで引き入れてしまいそうな吸血鬼の瞳の奥深い輝きが、悠子をとらえた。
母親の変化に気づいてか気づかずにか、貴志は場の雰囲気を変えようとして、
「お茶淹れようか?」
とのたまわった。
気を利かせたつもりが、逆効果だ。お茶を淹れるのは、古風な近田家のしきたりでは、本来主人のやることではない。
それは嫁の役目!と、ふたたび悠子が怒りを盛り返すことを予期してか、
「それ、私やるから」と、美那子がなだらかに引き取ってゆく。
台所に立ってゆく美那子の後ろ姿は、どこか着崩れしていたし、露骨な乱れ髪ですらあったのだが、
貴志はそれについてなにも言わなかったし、悠子もあえて口にしなかった。
「お義母さん、こちらへ」
吸血鬼は悠子の目線を巧みにとらえると、さっきまで嫁と2人でいた夫婦の寝室とは別の奥の部屋へと、彼女を促した。

ドアを閉める時。
こちらを気づかわし気に見送っているらしい息子に、彼は抜け目なく声を投げる。
「貴志さん、入らないでね。美那子にもそう言っておいて」
うちの嫁をなれなれしく呼び捨てにして――そこだけが、悠子の気に食わなかったが。
背後から両肩に手を置かれ、その手が形相を変えて悠子を羽交い絞めにしたときに。
悠子の態度は、はっきりと変わっていた。
あ――
気がついたら姿勢を真向いに向きかえられて、唇で唇を、ふさがれていた。
「こうして息子さんに連絡させれば、きっと来てくれると思ってね」
男はにんまりと笑いかけ、悠子はそれにぎこちなく、こたえていった。

二度、三度とディープ・キッスを重ねたあと。
悠子は男から身を離して、足許に落ちたハンドバックを拾った。
そして男との約束どおり、丁寧に折りたたんだ薄地のナイロン製の衣類を、無言で手渡してゆく。
約束を守る律義さは、血を吸い取られて堕とされたあとも変わらない。
吸血鬼の眼に、この年配の主婦の横顔が、ひどく好ましく映った。
気丈で落ち着いたたたずまいに、落ち着きを知らない自分の魂を支えてくれるなにかを感じた。

「あちらは気にすることはない。私が用を済ませたあとは、ご夫婦で愉しむことにしているようだから」
男の言いぐさに、悠子はまたちょっとだけ腹を立てたが、なにもいわなかった。
そして、ふたたび重ねられてくる唇を、さっきよりは少しだけ優雅に受け容れる。
「よろしい。よくできました」
したり顔の男に、「何よ」と言いながら、女はネックレスをはずそうとした。
「いや、そのままに」
男は女が服を脱ぐのを制すると、耳元で囁いた。
「お姿のまま、愉しませてもらうから」
そういえば。
あの日も着衣のまま血を吸い取られ、抱かれたのだった。
「いけない趣味ですね」
わざと他人行儀に作った受け答えは、男の唇でまたもやふさがれる。
「正気じゃなくなりたい」
女はあえてそっぽを向いて、そうすることで首すじをあらわにする。
血を吸われて恍惚となってしまうことが、強いられた情事の免罪符になる。
女のずるい計算がそこにあった。
熱く湿った唇が、ヒルのように密着するのを感じ、女は柳眉をふるわせた。

スカートを大胆に腰までたくし上げられていきながら、
悠子はずっと、真っ赤なブラウスに撥ねた血を気にかけつづけた。
そうすることで、これから行われる悪事から、少しでもそっぽを向きたくて。
でも、そっぽを向こうと努めながら、ついふり返ってしまいそうな自分も、あきらかにいた。

男の唇が、スカートの下に這い込んだ。
さっきから。
しつように、それはしつように、這わされる舌は薄地のナイロン生地を、よだれでたっぷりと濡らしてゆく。
ストッキングの舌触りを愉しんでいるのだと、ありありとわかった。
けれども、やめさせることはもう、できなかった。
穿いてきたストッキングがおろしたてであることに、悠子は安堵を覚えた。
真新しいナイロン生地は、ふるいつけられてくる恥知らずな舌に愉しまれ、みるみるうちにいたぶり尽されていった。
気に入ってもらえて、うれしいわ――
悠子のささやきに吸血鬼は頷くと、鋭い牙を突き立てて、ブチブチと音をたてながら、女の装いを咬み破いてゆく。

無重力状態におちながらも。
ストッキングを片方だけ穿いた状態を、ひどくふしだらなものに感じたのは、きっと正しい感覚なのだろう。
けれども、冒された局部にびゅうびゅうと吐き散らされる熱い粘液の感覚は、悠子の理性をすでに大きく狂わせていた。
というよりも、気づいたらすでに娼婦になっていた というのが、正直なところだろう。
迫ってくる男の背中に腕を回し、夫のそれよりも逞しい胸板に、乳房を蹂躙し尽されていた。
はぁはぁというワイルドな息遣いは、さいしょ男だけのものだったはずなのに、
いまでは負けず劣らずのもの欲しげな呻きを、恥を忘れて重ね合わせてしまっている。
ふすまの向こうに息子の気配をありありと感じたのに、大胆な痴態に耽る女体を、もうどうすることもできなくなっていた。
「あなた・・・あなたぁ・・・」
と、夫に赦しを請う呟きは、
「もっと・・・もっとぉ・・・」
と、さらなる汚辱に焦がれる声になっていた。
もう、息子に聞かれたってかまわない。
そう、夫に聞かせてあげても、良いのかもしれない。
声をあからさまにあげることが、こんなにも快感だなんて。
どうやら息子夫婦が自分たちの寝室に引き上げたらしい気配まで敏感に感じ取りながら、
悠子はもっと汚して・・・と、はしたないおねだりをくり返していた。

まだ赤黒く猛り立っている一物がヌラヌラと光らせている精液を、スカートの裏地で拭き取る行為も。
ブラジャーをせしめられ乳首のかすかに透けた真っ赤なブラウスを、吸い取った血で濡らされる行為も。
破れ残ったストッキングに唇を当てられ、さらに凌辱し尽されてしまう行為も。
男の悦ぶことならなんでも応えてあげようという、女らしい寛大さで許しつづけていったのだ。


かえり道。
男に送られてたどる家路は、このあいだのそれよりも悠々と愉しむことができた。
さりげなく送られてくる好奇に満ちた盗み見の視線を、小気味よく受け流しながら。
穿き替えた真新しいストッキングに唾液をたっぷりとしみ込まされたのが、外気に触れてすーすーするのも、
ドキドキしながら、愉しんでしまっていた。

なにも知らない夫は、きょうもリビングで独り、新聞に読みふけっているのだろうか。
首すじにあからさまにつけられた咬み痕は、どうやらまだ咬まれていない人には見えないらしい。
いつか夫にも、見せつけてあげたい。
悠子は胸の奥に、密かに危険な焔(ほむら)をかきたてていた。

気丈な姑 9  ~堕落の刻 続~

2017年05月10日(Wed) 08:19:48

どれほどの時間。
男相手の淫靡な舞踏をつづけたことだろう?
度重なる情交に、ふと倦怠感と疲労感を覚えた悠子は、見つめ合った目にわれ知らず目くばせをしていた。
男はそれでも許してくれず、「もういちど」とねだり、
ねだれれた悠子は「はい」と小さな声でこたえると、
ふたたび身体を開いていった。

自分から。
男を受け容れてしまっている。
そんな自覚におののきながら。
悠子は交し合う情交がもたらす昂ぶりを、いつか抑えきれなくなっていた。
「いちど」の約束が、なん度にもなった。
けれども悠子はもう、相手を咎めようとはしなかった。
むしろすすんで身体を重ね、脚をからめていった。
脚に通したストッキングがみるかげもなく咬み破かれて、外気がじかに触れてすーすーするのを感じながら。

ひとしきり、愛の交歓が終わると。男はいった。
「身づくろいなさると良い。送ってあげる」
すばやい囁きを残してサッと身を離すと、男はもう隣室へと消えていた。
はだけたブラウス。
腰までたくし上げられたスカート。
みるかげもなく咬み破られたストッキング。
それらの衣装に身を包んだ自分だけが、その場に残された。
その情けないありさまをまじまじと見つめようとしなかったのは、「武士の情け」とでも、いうべきなのだろうか。

女は立ち直りが速いもの。
鏡に向かって紅をひき直しながら、悠子は自分の思い切りの良さを、浅ましく感じた。
浅ましく感じながらも、このあとどういう顔で夫と顔を合わせ、どんな言葉を交わしたものか・・・と、
このあとの展開を、したたかに計算しはじめていた。
ハンドバックから取り出した真新しいストッキングを脚に通して、破かれたほうのはくずかごに捨てた。
けれどもすぐに思い返して、それをくずかごから取り出すと、ハンドバックの中に収めた。
男の戦利品としてせしめられるのが、忍びなかったのだ。


悠子がリビングに出ていくと、吸血鬼は嫁を相手にお愉しみの真っ最中だった。
もはや咎めることさえできずにそのようすから目を背けていると、
ほどよいところで吸血鬼は美那子の身体を離し、「きょうはこれでおひらき」と、告げた。
「嫁姑の味比べ?趣味が悪いわね」
美那子がそういって毒づいたが、声色は言葉の意味を裏切って、ひどく嬉しげだった。
「下品なことを言いなさんな。お義母さんがお気の毒だ」
吸血鬼はあくまでも、ニューフェイスの姑をたてた。
美那子はそれ以上、逆らおうとしなかった。

嫁に弱みを握られて、どれほどつけあがられてもおかしくはなく、
実際美那子も露骨なくらい、そう振る舞おうとしていたのに、
男はたったひと言で、諍いが起こりそうな雰囲気を封じ込めてしまった。
美那子が男に対して従順なのは、それだけ支配されてしまっていることを意味していたけれど、
悠子はむしろ、美那子に示した影響力を頼もしいと感じた。
そんなこと、感じちゃいけないのに。
だって私、このひとの手で、夫に対して顔向けのできない身体にされちゃったんだから。
しきりに自戒を重ねながらも、知らず知らず悠子は、男のそばに寄り添っている。

「俺はお義母さんを送って行く。あんた独りで帰れるな?」
吸血鬼が美那子に投げたまなざしは、まさしく情婦に向けられた支配者の目。
吸血鬼が嫁を見返る視線をそんなふうに受け取った悠子は、ちょっとだけ眉をしかめ、すぐにその顔つきを平静に戻した。
ほかのふたりは悠子の表情の変化に気づいていたが、なにもいわなかった。
「お義母さまを送って行くの?」
美那子はちょっと咎めるような口調になったが、すぐに思い返したように妙な作り笑いを泛べると、それ以上抗議をしようとはしなかった。
「わかっているんだろうな?」
男は美那子に念を押した。
「わかっているわよ、だれにも言いやしないんだから」
「それならばよい」
男女二人の交わされる言葉が、たぶん自分に対する保険なのだろうと、悠子は漠然と感じた。
「じゃあ、お義母さま、またね♪」
美那子はわざとくだけた口調のあいさつを、さっきまで謹厳だった義母に投げると、
すぐに人が変わったように神妙な顔を作り、
「長々、お邪魔いたしました」
と、どちらへともなく深々と一礼した。

2人きりになると男はいった。
「おねだりがあるんだ」
「なあに?」
「破けたストッキング、記念に頂戴できないかな?」
無言でかぶりを振る悠子に、男はなおも囁いた。
「家に持ち帰って洗ったら、今度お土産に持ってきていただく」
有無を言わせない口調だった。
そんな羞ずかしいこと、できるわけがない。
心のなかでそう呟く一方で。
夫の目を盗んで破けたストッキングを洗濯機のなかに投げ入れている自分の姿を想像していた。


家路をたどる道々、男はなにも言わなかった。
通りすがりの人たちのなかは、悠子の顔見知りもいた。
彼らはいちように好奇の視線を一瞬投げるものの、男の目をはばかるようにして、すぐに視線を外してゆく。
そのまま家に着くと、彼は玄関のまえに悠子を置き去りにした。
「わしがいないほうが、良いだろう?」
悠子は無言でいたが、無言のうちに肯定をしていた。
「ダンナの顔を見たら、不機嫌そうに黙りこくっていることだ」
それが賢明な妻のする振る舞い・・・といわんばかりだったが、悠子もそれはもっともだ、と、思った。
いずれにしても。
ここから先は、妻としての自分が問われるところ。
一人きりの勝負になるのだ、と、悠子は改めて自覚した。
まだなにも知らない夫が憩うているはずのドアの向こうを、悠子は睨むように凝視する。


その時の悠子は、まだ知らなかった。
吸血鬼に見送られて家路をたどるということは、吸血鬼の女になったことを、周囲の人に伝えてしまう行為なのだと。
なにも知らない悠子は、自身が女の操を喪ったという事実を、じつにおおっぴらに触れ回ってしまったのだ。


あとがき
昨日時間切れであっぷできなかった後編です。
読み直して、よかった♪

気丈な姑 8  ~堕落の刻~

2017年05月10日(Wed) 07:33:53

「なっ、何をなさるんです・・・っ」
悠子が声をあげてうろたえたときにはもう、遅かった。
男は拡げた猿臂のなかに悠子を抱え込み、その首すじに唇を吸いつけていた。
チクリとかすかな痛みを感じて、悠子はうめいた。
刺し込まれた鋭い牙の切っ先が皮膚を破り、生温かい血がほとび散るのを感じた。
チュウッ・・・
血を吸いあげられる感触に、悠子の顔から血の気が引いた。
ほんのひとしきり悠子の血を吸うと、男は牙を引き抜いて、悠子を視た。
自分の血が刺し込まれた牙の切っ先を濡らし床にしたたるのを、悠子はぼう然と見つめている。
いま起こっていることをよく理解できないままに。
目を白黒させているうちに、悠子はふたたび唇をその素肌に這わされて、生き血を吸い取られていった。

そんな姑のようすを、美那子は薄っすらと笑いながら見つめている。
さっきまで包まれていた熱い抱擁から抜け出したあとの虚脱感が、彼女の心地よく五体を満たしていた。
  そうよ、お義母さま。このひとの魅力をたっぷりと味わうがいいわ。
  そうしたら、あたしが堕落した理由をきっと、わかってくださるもの。
若いだけに、意地悪な笑みはいっそう、凄みを増した。

気丈に踏ん張った脚からスッと力が抜けて、がくりとひざを突いた。
フローリングのうえにすんなりと伸びたふくらはぎに、吸血鬼の好色な唇がふたたび、吸いつけられてゆく。
押しつけられた唇の下、姑の穿いている肌色のストッキングに裂け目が走るのを、嫁の美那子は小気味よげに見守った。
  堕ちてしまった後でも、かっこいいこと言えるのかしら。
という目をしながら。

吸血鬼は顔をあげ、美那子にいった。
  すまないが、2人きりにしてくれないか。
美那子はにんまりと笑んで、同意した。
逢瀬を邪魔された怒りよりも、品行方正な姑を堕落させる愉しみのほうがまさったのだ。
「お義母さま、ごゆっくり~♪」
若い嫁は自らの愉しみの機会を、気前よく姑に譲り渡す。

もがけばもがくほど、抱擁の束縛はきつさを増した。
悠子はもはやこれまでだ・・・と、観念せざるを得なかった。
「お義母さま、ごゆっくり~♪」
まだ薄っすらと残る意識の彼方、嫁の愉し気な声が耳に響く。
とうとう2人きりにされてしまった。
もう逃げられない。
嫁はわたしの名誉を救う意思は持ち合わせていないようだし、
相手は獲物を逃がすまいと、悠子の二の腕を痛いほど抑えつけている。

絶体絶命だった。

男はいった。
「奥さん、観念して往生するんだな。あんまり暴れると、かえって恥を掻くよ」
隣の部屋に聞こえよがしにそういうと、こんどは悠子の耳もとに唇を近寄せ、彼女だけに聞こえるように囁いた。
「血をくれて感謝する。できるだけ恥をかかせないようにするから、少しの間目をつぶっていただけないか。
 あんたの気持ちはわかるから」
どうやら相手には、吸い取った血潮でこちらの気分を読み取るすべを心得ているらしい。悠子はそう直感した。
せめて辱めを受けるところまで嫁に視られまいと思った気持ちを、男は無にしまいというのだ。
「お手柔らかに・・・」
恥かしいのをこらえて、悠子はいった。

「では、失礼」
男のあしらいはじつに手慣れていた。
破けたストッキングをまとったままの脚を左右に開くと、そのすき間にためらいもなく分け入って来て、
逆立った肉塊を割り込ませ、あっという間に悠子の股間を冒したのだ。

あ・・・な・・・た・・・!

悠子は思わず声をあげ、あげた声が嫁を満足させるのを感じ取らずにはいられなかった。
自分の貞操があっけなく喪われたことを自覚しながら、
男の股間からほとび出る熱い粘液が自分の体内を満たすのを感じた。

染められる。染められてゆく・・・
夫しか識らなかった清い身体を、この齢になって汚す羽目になるとは。
さっきのさっきまで、想像すらしていなかった。
股間からそそぎ込まれた男の粘液が。
食い入った牙からしみ込まされた吸血鬼の毒液が。
自身の血管をめぐり、脳天に達し、皮膚の色さえ塗り替えてゆくのを。
悠子はもう、どうすることもできなかった。

悠子の理性を奪い尽した男は、女にディープ・キッスを迫ると、
応じてきた唇の奥に、男の匂いを充満させた。
そして、ドアを細目に開けてこちらのようすを覗いている嫁に見えるよう、激しく腰を上下動させた。
はじめはぎこちなく、やがて息をぴったり合わせて、貞淑だった細腰がこちらに動きを合わせてきた。
ふたたび女からディープ・キッスを奪うと、奪った唇さえもが激しく応えてきた。
飼い慣らすことに成功したとわかると、男の動きはさらに大胆になり、女の動きもそれに合わせて淫らになった。

堕ちた近田夫人の上にまたがって、吸血鬼は思うさま、想いを遂げてゆくのだった。

このところ。(作者の独り言)

2017年05月08日(Mon) 07:14:43

人妻ものが、多いですな。
柏木ワールドは平和な世界?なので、間男と夫とのあいだで諍いは起こりません。
三者三様の顔つきで、仲良く共存しています。

妻の浮気を寛容に受け容れる夫と、そんな夫を挑発する妻。
そんな風景をむしょうに描きたいときって・・・いったいどんな心理状態なんだか・・・自分でもよくわからないですね。
あっぷを始めて、かれこれ12年近くにもなるんですけどね。(笑)

スカートマニア  ~「それ、結婚記念日に買ったものなんだけど・・・」~

2017年05月08日(Mon) 07:12:37

妻の彼氏は、スカートマニア。
もともとわたしの親友で、ふとした行きがかりから、わたしの妻まで仲良くなった。
必要以上の仲の良さでも、なぜかとやかく言う気にならなかった。
妻との男女の仲がお盛んになったあとも。
男同士の関係が壊れることはなかったのだ。
人はそれを、「ヘンな関係」というけれど――

スカートマニア歴の長い彼。
けっきょくスカートと結婚しているようなもので、現実の結婚はまだしていない。
「俺は一人の女の枠にははまらない」というのは虚勢にしても、
どこをどうやってこんなに人妻を口説けるのか・・・というくらい、
わたしの周囲は彼の「被害者」で、満ちあふれている。

ふつう、友だちの妻には手を出さないよな?
わたしたちのそんな咎めもどこ吹く風で。
仲間うちの奥さん連中は、そのほとんどが、彼の支配を受け容れてしまっている。
その秘訣を妻に問いただしてみたら、「なに訊いてるのよ」と怪訝な顔をしながらも、
「エッチが上手で、親切ね。あと、いろいろわきまえてくれてるし」
と、簡潔なこたえが、かえってきた。
たしかにわたしには、真似できそうにない・・・
相手の都合のわるいときに無理強いをしないというけれど、それはスペアをたくさん抱えているからだろう
――といっても、それは負け犬の遠吠えにしかならない。

もっとも、わきまえているときにはわきまえているけれど、
わきまえていないときには、それはどうかということも、してくれちゃっている。
親類の法事のかえり道。
わたしたち夫婦をわざわざ待ち伏せて、妻だけをお持ち帰りされてしまったことも、あったっけ。
喪服のスカートの下に映える黒のストッキングがたまらなかったのだと、罰当たりな言い訳をあとからされたものだけど。
抜け目のない妻は、ハンドバックの中に履き替えをちゃんと用意していて、
お誘いを受けた何時間かあと、何事もなかったかのように、しれっとご帰還あそばしたのだった。

さて、前置きが長くなった。
「どうぞどうぞ」と家のなかに通されたのは、いつ以来のことだろう?
「たまには遊びに来いよ」といわれて、そういえば家にお邪魔するのは、いつ以来だろう?と思ったくらい?
妻のほうがよっぽどまめに、ここにはお邪魔しているはずだった。
「これ視て御覧」
来た来た・・・やっぱり、コレクション自慢か。

開け放たれたクローゼットのなかには、吊られたスカートたちが所狭しと居並んでいる。
「たまに取り出して、一着一着眺めるんだ。持ち主をモノにしたときのこととか思い出してね」
勝手なことを抜かしながら、一着一着手に取って、丁寧に折りたたんではたんすの引き出しに収めていって、
入れ代わりにたんすの引き出しの中から取り出した別のやつを、クローゼットの中に吊るしていく。
「時々選手交代するのさ」
と言いながら、彼は、クローゼットの中から取り出したスカートのうちのひとつを、これ見よがしに見せびらかした。
どうも見覚えのあるような・・・と、思ったら。
それは、妻のスカートだった。
わたしはちょっぴり気まずそうに、彼に打ち明けた。
「それ、結婚記念日に買ったものなんだけど・・・」

さすがにちょっとびっくりしたように、彼はスカートと自分との距離をとって、もういちど自分のコレクションを眺めた。
「お目が高いねー、ひと目惚れだったんだ。これ」
同好者に対するような称賛に、わたしのほうが気恥ずかしくなる。
齢に似ずに、真っ赤なスカート。妻は恥ずかしがっていたけれど、
「似合うから」といって、レストランのお食事の時には履いてもらったものだった。
「悪いけど、ゲットしたからね。奥さんのこと怒るなよ」
怒らないよ・・・というよりも、むしろあきれた二人の関係。
まあ、相手がお前だから、信用しているけどな。
そう。
ずっと仲良くしてきて、何もかもわかり過ぎている関係だったから。
得体のしれない悪い虫がつくよりは・・・と、二人の関係を認めてしまっているのだった。
「奥さんの名誉は俺が守る」と、彼はたいそうなことを言うけれど。
大丈夫――それ以前にきみは、わたしの名誉を汚している。

クローゼットとたんすの引き出しとの選手交代をしながらのご披露会のはずなのに。
妻のスカートだけは、クローゼットに逆戻り。
それだけではない。
よく見ると。
クローゼットのなかには見覚えのあるスカートが、いくつもぶら提げられているではないか。
「逢うたんびに、もらってきちゃうんだ」
悪びれもせずにいう彼に、いまさらとがめだてする気にもならないで。
「これじゃあ、いくら稼いでも追いつかないよ」
とこぼすわたし。
「でも、きみの奥さんからゲットしたのは、どれも一軍なんだぜ」
どうやらクローゼットの顔ぶれは、「一軍」という扱いらしかった。
「俺好みのスカートが多いんだよね」
そう。彼のコレクションにされたスカートたちは、そのほとんどがわたしが見立てたものだった。

「こんどから、妻にプレゼントするときには、きみの意見も聞こうかな」
冗談ごかしにそういうと、彼はそれを真に受けて、「いつでも乗るから」と身を乗り出した。
あんたが乗るのは、ひとの女房の身体のうえだろう?と下品な返しをかろうじて呑み込んだ。

一週間たったある日のこと。
「出かけてくるわね~」
よそ行きの服に着替えた妻が、ウキウキとした声をわたしに投げた。
「ああ、行ってらっしゃい――あいつによろしく」
妻の服装を見れば、行き先はどこだかよくわかるようになってから、もうどれくらい経つのだろう?
ふと見ると。
妻があの、真っ赤なスカートを穿いていた。
「やっぱ派手かなあ」
という妻に。
「そんなことない。よく似合うよ」
と相槌を打って。そのあと言い出さずにはいられなかった。
「そのスカート、あいつにやったんじゃなかったのか?」
「アラ、よくご存じね」
と、こともなげに問いを交わした妻はそれでも、
「返してくれたの。俺と逢うとき穿いてほしいって言われて」
と、教えてくれた。

あのひと、あなたのセンスに感心してたわ。
あたしのスカート、けっこう選んでくれてるものね。
それがことごとく、彼のツボにはまるらしいの。
あなたたち本当は、ウマが合うのね?
ねえ、きょうはあなたも来ない?
きょうのあたしは、ゴキゲンだから。
気に入りのスカートをめくられるところ、覗かせてあげてもいいわよ。


あとがき
奥さんが浮気の時に穿いて行くスカートを、夫が情夫といっしょに選ぶ――――なんて。
不道徳すぎますよね?^^

気丈な姑 7

2017年05月08日(Mon) 05:47:47

妻の献血相手の吸血鬼は、もとは息子の嫁の愛人だった。
首尾よく息子をたぶらかし、まだ婚約中に嫁の新床までゲットしてしまった男。
それでも息子は彼のことを憎んでいるようすは、さほどない。
むしろ、大切なものをプレゼントするほどの、大切な関係なのだと割り切っていて、
吸血鬼が嫁に手を出したことさえも、「うちの美那子がお目にかなって嬉しい」とまで、受け取っているようだった。

なにも知らずに二人の間を咎めに行った妻は、それまでの貞淑なレディとして帰宅することはできなかった。
ストッキングを穿いたご婦人の脚に好んで咬みつくというこの吸血鬼は、
嫁の浮気を咎めに来た姑の穿いているストッキングにまで、見境なく目の色を変えたのだった。
妻は四十代ぎりぎりの熟れた血潮をたっぷりと吸い取られ、
その見返りに、スカートの奥を濡れ濡れにするほどに、愛情のこもった淫らな粘液をたっぷりと、そそぎ込まれて戻ってきた。
「私の血まで、気に入ったみたい」
妻はきまり悪げに、そう言ったものだった。

気丈な妻はそれでもくじけることなく、新婚の息子のために、嫁と吸血鬼とを別れさせようとした。
けれどもそれは、空しい努力に終わってしまった。
そう、さいしょのときにもう、勝負はついていたのだから。
「きょうも叱ってやりますわ」
そういいながらウキウキとおめかしをして出かけていっては、吸血されて抱かれてしまう日常が、くり返されただけだった。
怒ったり嫉妬したりするいとまもなかったのは、夫のわたしまでもが、早い段階で仲間に引き入れられてしまったから。
滋養分補給のために私までもが献血を強いられて、
もーろーとなって居間の隅っこで横倒しになったまま、
息子が未来の花嫁の純潔をプレゼントしてしまったときと同じように、
妻が生き血を吸い取られ、あげくの果てに犯されてしまうのを、
そしてその行為が単なる凌辱行為にとどまらず、熱っぽい愛の劇場と化してしまうのを、
さいしょはばかみたいにぼう然としながら、
さいごのほうでは、不覚にも。
妻がヒロインのエロシーンを、ただの男として堪能し尽してしまっていた。

きょうも「あのひとを叱ってやるの」と言い残して、妻はウキウキと出かけていった。
「口にするのも恥ずかしいことだけど。彼、ストッキングフェチなのよ。
 美那子さんも、もう何足も破かれているんですって」
口では憤然としながらも、自身も真新しいストッキングを脚に通して、出かけていった。
さいしょにお逢いしたときは、穿き古しだったの。そういう恥は搔きたくないの。
あなたもヤでしょう?奥さんが恥掻くの。
そういいながら、すでに彼女が破らせたストッキングは、もう1ダースにもなっただろうか?

「美那子さんよりも罪は軽いわ。だって、私もう子供を産む齢ではないんだもの」
そういって、ご近所の評判になっても恥ずかしくないと公言していて。
いや、こっちのほうがよほど、恥ずかしいんだけど・・・
さいしょのうちこそそう言いたくてたまらなかったわたしさえ、いまでは彼女のペースに呑み込まれてしまっている。
世間では、わたしのようなのを、だらしのない夫と後ろ指を指すのだろうけれど。
むしろわたしは、わたしの倍くらいは齢をとっているらしい彼のため、
妻への老いらくの恋を好意的にかなえてやるほうに、心を傾けはじめていた。
近田家の名誉に多少の傷がついたとしても、
妻が若返ることのほうが、ずっと貴重な気がしてきたから。

「私は身代わりなのよ。貴志には早く、後継ぎをつくってもらわないとね」
女は自分を正当化する天才だ。
息子のために嫁の貞操を守るため、身をもって犠牲になろうというわけだ。
そんな姑の気遣いとは無関係に、浮気な嫁は姑のいない隙を狙って情夫と逢っているのをわたしまで知っているし、
息子さえもが、「彼の子だったら育てるよ」などと、のん気なことを口にする。
それに今では、妻のほうが。
彼のお召しの回数がじつは多いのだと、嫁はこっそり教えてくれた。

嫁がわたしにそんなことを囁いたのは、女ならではの悪意からかもしれないけれど。
「どうせなら、深く愛してもらったほうが良いじゃないですか」
と答えたわたしに、口をぽかんと開けて、あっけに取られているようだった。
「返り討ちにしたのね。あなた、やるじゃない」
帰宅してきた妻にそのやり取りを利かせると、ティーカップ片手に小気味よさそうに彼女は笑った。
ひざがまる見えになるほど伝線しているストッキングと、ぬらぬらした粘液を光らせたスカートのほうが、
わたしにはよほど、気になっていたのだけれど。

姑の気遣いも空しく、嫁の行動はエスカレートしていった。
吸血鬼の愛人の座を降りた彼女は、法事の手伝いと称して、お寺通いを始めていた。
そのお寺に集まるのは、街に出没する吸血鬼たちに妻を寝取られた、数多くの夫たち。
彼らの気をまぎらわせるために、吸血鬼が用意した気晴らしの場。
彼が希望者を募ったとき、嫁は真っ先に手を挙げたという。
「新婚妻は貴重だって言われたの」
息子の貴志にそう告げたときにはもう、なん人もの男に抱かれた後帰宅してからのことだった。
妻が嫁の身代わりにと潔(きよ)かった貞操を捧げつづけているあいだ、
嫁は大勢の男性にかしずかれる愉しみに耽ることで、その好意を浪費したのだった。

妻はきょうも、お誘いを受けて出かけてゆく。
わたしはそれを、「彼によろしくね」といいながら、送り出してゆく。
「私――美那子さんから、彼を奪っちゃったのかしら?」
そんなことを口にしながらも、嫁のことも夫のことも、さして気には留めていないようだった。
妻は、新婚の息子のために嫁のことを身をもってかばおうとした、淑女のかがみ。
わたしは、吸血鬼が人妻に寄せた老いらくの恋を好意的にかなえてやった、夫のかがみ。
このごろはどうやら、そういうことになっているらしい。

吸血鬼の呼び出しに応じる日でも。
それが平日ならば、勤めに出かけるわたしを送り出してから、出かけることにしているようだ。
けれどもこちらは、エプロンの下に着ている服がきちんとしていれば、彼女の意図が容易にわかる。
今朝のエプロンの下は、結婚記念日のプレゼントにしたワンピース。
わたしの稼ぎで買った衣装に包まれて、その衣装もろとも愉しまれてくる妻を送り出すわたしは、
きょうも彼女のストッキング代を稼ぐため、何食わぬ顔で出勤してゆく。
「あなた、行ってらっしゃい」
「あとをよろしくね」
どこの夫婦も交し合うような、そんな言葉を口にしながら。


あとがき

ちょっと前にあっぷをした、「気丈な姑」シリーズです。
息子の嫁の身代わりにと貞操を差し出した悠子さん。
そんな悠子さんのちょっと片意地でひたむきな恋に理解を示すご主人。
前々作では、吸血鬼と連れ立って歩くところを目撃された知人の女性の嫌味を軽く受け流した悠子さん。
「でももう、何も怖くない。私は平気」
と開き直っています。
(「気丈な姑 5」 http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3439.html
かたや嫁の情夫との奇妙な恋を穏やかに受け容れている夫さん。
できてしまった事後ではあるけれど、
「末永い交際を」と、吸血鬼と奥さんとの仲を自ら取り持とうとしています。
(「気丈な姑 2」 http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3435.html
「私よりもよほど逢っている」と告げ口をしたお嫁さんに対しても、「深く愛されたほうが良いと思う」なんて、お応えになっています。
夫唱婦随(婦唱夫随?)というべきか。「どっちもどっち」というべきか。
なんにせよ。
仲の良いのは、なによりであります。

回帰。

2017年05月06日(Sat) 09:32:29

今朝の夜明けも、迎えたのは他人の家。
おなじ寝床にいるのは、他人の妻だった。
スーツ姿のまま転がった女は、俺に弄ばれるままに衣装を乱して、
上品なタイつきブラウスのえり首のすき間から、おっぱいをだらしなくまる見えにさせている。
夜明けのことだから、旦那はとっくに帰宅しているはず。
それでも気配さえみせないのは、すべてを察して別室で寝(やす)んでいるからなのだろう。
あるいは案外、俺たちがまぐわう様子を、隣の部屋からのぞき見して愉しんでいたのか。
そういえば。
ふすまが細めに開いているのは、女が大雑把なためではないのかもしれない。
大雑把な女はあそこの締まりも悪く、その旦那は寝取られマゾ。
いや、彼らを責める資格など、俺にはない。
俺も夫婦にとりついた吸血鬼の欲望のまま、妻を諦めざるを得なかったのだから。

夫婦ながら血を吸われた俺は、妻に真剣に惚れたという相手の言いぐさを話半分に聞きながらも、
妻が俺の側ではなく愛人の傍らに恋人然として腰をおろした現実に、ちょっとだけショックを受けていた。
これからは、妻を邸に迎え入れ、住み込みのメイドとして雇い入れるという。
だから今、妻は家にはいない。
出勤の支度のために戻る家は、がらんどうの空間。
その見返りに俺は、おおぜいの女をあてがわれた。
よりどりみどりだぞ。
吸血鬼は好色な男という、俺と同じ高さの目線を俺に注いできた。
人から妻を奪いながらも、ヤツは妻のことを賞賛し尽して、そんな妻を勝ち得たきみを尊敬する、とまでいった。
そして、妻以外の女を相手にするのは妻が貧血を起こさないためだと弁解した。
尊敬も弁解も話半分に聞き流したが、ヤツに悪気がないのだけは、認めてやってもいいような気がした。
いいじゃないか。人妻熟女、よりどりみどり。それ、ちょっと面白そう。
あんたが飽きたら女房をうちに帰してやる。
捨て台詞のように用意された逃げ道に知らん顔をしながらも納得をして、俺は新しい環境を受け容れた。

訪ねていった家では、つねに歓待された。
なかには、亭主まで歓待する側に回っていた。
ある家では亭主自ら自慢の手料理でもてなしてくれて、
自分は自分で用意した上質のワインで酔っ払ってぐーすか寝てしまい、
その間にこちらが奥さんを押し倒す・・・という段取りまで用意してくれたりするのだった。
今朝目ざめたこの家の旦那は、堅い勤め先のサラリーマンのせいか、さほど人好きはしなかったけれど。
自分の妻が他の男と寝るときには、決して邪魔だてしない節度を持ち合わせていた。

だれもいない自宅をそそくさと後にして、勤務先に向かう。
いつもどおりのおざなりな会議、ミーティング。そのあとは得意先への訪問。
きょうの行き先は、地元の名門校だった。

この学校は吸血鬼の受け入れを表明していて、校内には生徒の生き血を求めてなん人もの吸血鬼が出没するという。
そう聞くとひどくブッソウなところのように聞こえるけれど、なんのことはない、一見した限りはふつうの学校で、
いやむしろ、ふつうの学校よりも清潔感があふれていた。校舎にも、生徒たちにも。
窓口をつとめる数学の先生も、妻と年頃の娘とを、吸血鬼に奉公させているという。
いや、そればかりか、先生の奥さんとはなん度か、寝たことがある。
銀ぶちメガネの似合うカッチリとした顔だちのこの先生と、どうやって知り合ったものか、
奥さんはお目目ぱっちりの色白女で、むっちりとしたおっぱいや太ももがたまらない、セクシー人妻。
この顔で40かよ?という雰囲気で、俺はいっぺんに魅了された。
当然希望者も多く、ひと晩に2~3人相手をすることもあるという。
「本命の吸血鬼さんがモテてモテて、なかなか相手してくれないの。
 だからあたしも、いろんな男にかしずかれるの」
輪姦もOKよ、と、あっけらかんと語る能天気な笑顔が、
目の前でこまごまとした商談をつめているその夫の几帳面な顔に、二重写しになった。
いかん、いかん。もっと仕事に集中しよう。

先生は俺と奥さんの関係を知っている。
だって毎晩、妻の痴態を覗いているんだから。
でもお互いにそんなことは、もちろんおくびにも出さない。とくに仕事中は。
それでも俺は帰り際、意外に酒好きな先生の好みの銘柄を確かめるのを忘れなかった。
せいぜい、贈り物くらいは奮発しないとな。

その晩の奥さんは、真向いに住んでいるご一家の主婦。
吸血鬼に魅入られる前から、きれいな奥さんだな、とは思っていた。
いや、妻に気取られ冷やかされる程度の関心を持っていた。
隣家の奥さんと浮気するというのは、男のロマン・・・と、勝手な理屈をつけてあがり込んだのは、
うちに続いて向かいのお宅も吸血鬼を受け容れたと知ったから。
もちろん、妻を預けっぱなしにしている吸血鬼に仁義を切ったうえでの話だが。
隣家は便利だ。
夜明けを迎えたらすぐ、出勤の支度に戻れるのだから。
奥さんのきれいな家は来たがる人も多いから、そうそう入りびたりになるわけにはいかないけれど。

「ゴメンね。外でできないかな」
まだぎりぎり20代の奥さんは、ちょっと恥ずかしそうにそういった。
折よく、隣家のそのまた隣は、空き地になっていた。
放置された空き地は恥ずかしくなるほどオープンで、周りの家からもまる見えになるはず。
ちょっとスリルがあって、良いかも。
俺は即座に承知をすると、スーツからふだん着に着替える手ももどかしく、
自宅の玄関前に佇んで俺を待つ奥さんの手をひいて、裏の空き地にまわった。

もうちょっと暗くなるまで、待とうよ・・・
まだ夕闇がじゅうぶん濃くなっていないのを気にした奥さんが、うろたえたような顔をして、周りをきょろきょろと見回している。
自分から言い出したことなのに、なにをいまさら小娘みたいにためらっているのか。
せめて、エプロン取らせてください。
精いっぱいのそんな時間稼ぎすら、俺にとってはもどかしい。
だって股間はもうギンギンに逆立ちをしているのだから。
いいじゃないか。俺もいちど、エプロン妻を犯してみたかったんだ。
こんなの、旦那が見たらはらはらするだろうな・・・と思いつつ、
しきりにご近所の視線を気にかける奥さんの手や肩をつかまえて、強いてその場に寝転がさせた。
やだ・・・みんな視てる・・・
もう、あんたの言いぐさなんか、俺をそそる効果しかないんだよ。
重ね合わせた唇は、本人のためらいとは無関係に、熱くほてっていた。
俺は余裕しゃくしゃく、パンツを脱ぐと、女の穿いているパンストを脱がせにかかった。

「そろそろいいかな?」
俺の下で女が囁いたころには、あたりは真っ暗になっていた。
1時間、いや、2時間くらいいっしょにいただろうか?
周囲の家々からの視線も、もう感じられない。
さいしょのうちは好奇の視線を送っていても、夕刻はどの家も忙しい時間帯。
そんなことばかりにかまけてはいられないのだ。
人のことなどに構っている暇もない日常が、どの家庭にも待ち受けている。
案外その日常とやらも、そのうちの何軒かでは、吸血鬼を交えた日常かも知れないけれど。

女のくぐもった声が、もういちど俺の欲情に火をつけた。
「もう一回だけ、いいかな?」
女は俺に、逆らわなかった。
むしろ進んで受け入れて、熱っぽいほとびを俺が吐き尽してしまうまで、積極的に腰を振って応えてきた。
だんなともいつもこんなふうにしているのかな。
俺のたわごとには答えずに、女は言った。

そろそろいいかな?じつは主人、熱を出して寝ているの。


それから長いこと、俺はひとり残った空き地で大の字になって、星空を見あげていた。
女はとっくに家に戻って、いまごろ主婦の日常に戻って夫の看護をしているらしい。
家から洩れてくる細々とした灯が、そんな想像を容易にさせた。
さいごにあんなに腰を振ったのも、決して男好きな人妻だからではない。
手っ取り早く俺にフィニッシュさせて、旦那のつききりの看護に一刻も早く戻りたかったからなのだと、
いくらぼんくらな俺にもすぐにわかった。
なんだか、ただたんに女の身体と身体を重ね合わせているだけの日々が、むなしくなってきた。
さてと、帰るか。
だれもいなくて灯もついていない、自分の家に。


家のなかは真っ暗で、いつものようにがらんどうな感じがした。
妻が置いていった読み止しの女性雑誌が、そのときのままにマガジンラックに突き刺してあった。
家を出ていく時、羽織っていた緑のカーディガンを脱ぎ捨てて、
ソファに畳んで置いていったのが、まだそのまんま置きっぱなしになっている。
テレビの台には観ないまま行ってしまったDVDが積み重ねられ、
キッチンには俺のためにまとわれることのなくなったエプロンが、抜け殻のようにぶら提げられている。
きょうにかぎってどういうわけか、妻のものばかりが、目につくのは、どうしてだろう。

リビングの隣の和室に並べてあるのも、妻ゆかりのコレクション。
初めて襲われたときに着ていた、襟首に血のついたままのブラウス。
その時に妻の脚から抜き取っのだと自慢をしながら、ヤツが俺に手渡してくれたストッキング。
俺に隠れて逢いに行っていたとき、好んで身につけて行ったよそ行きのスーツたち。
結婚記念日に買ったスーツも例外ではなかったし、喪服なんかも着ていきやがったんだ。
玄関には、きちんとそろえられた黒のパンプス。
外出先から戻ると決まって置く癖になっていたイスには、気に入りのハンドバッグ。
台所仕事をする前には、いつも身に着けている結婚指輪を必ず外して、テレビの上の小皿に、こんなふうに入れていた。
―――?
ふとわれに返って、傍らを観ると。
真っ暗な部屋でひとり、出ていったはずの女が無言で佇んでいた。
「さっき戻ったのよ。ただいま」
妻はリビングの灯りをつけて、いった。
「遅くなったけど、晩御飯作るわね」
そして、ソファに置かれた緑のカーディガンをいつものように羽織って、台所に向かおうとした。

どういうことなんだ?
愚問と知りながら、訊かないわけにはいかなかった。
帰ってきてあげたのよ。しょうがないから。
強がりの時にはいつもそんなふうに言いっ放す、投げやりな調子。
ああ、そういうことか。
飽きられたんだよな?
面と向かって投げつけた言葉に、妻は口をへの字に曲げて、フンとふて腐れた顔をして、
それでもいつものように口ごたえしないで台所に向かってゆく。

蛇口からひねった水が勢いよく流れる音をたてながら、妻はいった。

捨てられたんじゃ、なくってよ。
そろそろ帰ってやれって、言われたのよ。あのひとああ見えて、案外気を回すのよね。
こんどから、通いで来いって。
でも、気が向いたらまた戻るかもしれないわあ。
メイドさんって言ってもたいしてやることなくて、うちのほうがよっぽど忙しいんだもの。
それに、旦那に追い出されたらまた戻って来いって言われているの。
私・・・悪い奥さんだし・・・追い出されちゃうよね・・・?

いや、いてもいい。
俺はとっさにそう返した後、すぐに言い直す。

いてくれ・・・・・・いて下さい。

気がつくと、俺の腕のなかに妻がいた。
どうして抱きしめてなど、しまったのだろう?
ちょっと不安げな面差しが、ちょっぴりいつもらしくなかったから?
いやきっかけというのはしょせん、引き金でしかないのだろう。
抱きしめると抱き返してくるその女は、まだ愛し合っていたころの妻そのものだった。
やっと戻って来てくれるまで。
やっと戻ってくるまで。
この夫婦は、入り組んだ迷路を遠回りしなければならなかったのだろう。

かん違いしないで。
私、あのひとの愛人なんだから。
気が向いたらお誘いに乗るし、抱かれてくるわ。
それでもあなた、私のこと愛してくれる―――?

言葉の代わりに重ね合わせた熱い接吻は、さっき空き地でしたそれとは、まったくちがうのものだった。
妻は「ずるい」と言いながらも、いちど離れた唇をもういちど、重ね合わせてきた。


あとがき
思わず長くなっちゃいました。 (^^ゞ
描いている最中に、「杜子春」みたいなお話だなあと思いましたが、いかがなものか。 (⁻_⁻)
今朝のお話はすべて、入力画面にじか打ちで描きました。
こういうスタイルで描いているときは、ノッているときなんですね。

ひとりを耐える。

2017年05月06日(Sat) 08:03:04

妻が、吸血鬼に犯された。
相手は、わたしのことをなん度も咬んだ男だった。
顔色を悪くしているわたしを気遣って、あとを尾(つ)けてきて、巻き添えのように難に遭ったのだ。
貧血でくらくらしてしまっていたわたしは、卑猥な猿臂から妻を救い出すことができなかった。
血を吸い取られてぐったりとなった妻がスカートをたくし上げられ、ストッキングをずり降ろされてゆくのを、
なすすべもなく、見せつけられてしまっていた。

つぎの日の夜から、妻は真夜中になるのを見はからって、わたしに黙ってひっそりと出かけていった。
スカートを着けるのは、裏地に淫らな粘液で濡らされるため。
ストッキングを脚に通すのは、卑猥な唇で舐め心地を愉しませるため。
そうと知りつつも、よそ行きの装いに身を整えて、しっかりとメイクまでして出かけていった。
あとを尾(つ)けたわたしは、ふたりの逢瀬を遠くから見守るだけだった。
血を吸う相手に過ぎなかったわたしの身体を気遣っていた吸血鬼は、妻にも親切だったから。
妻の身を気遣って血を吸う量を手かげんする愛人を、妻はさらに気遣って、「もっと吸って」と懇願していた。

吸血鬼が妻を誘うのは、週一の頻度だった。わたしのときで、懲りたのだろう。
毎日呼び出されていたわたしの機会はめっきり減って、妻と同じ週一に「格下げ」されていた。
健康を取り戻したころ、勘定が合わない理由にやっと気づく。
ご近所の主婦たちがなん人も、妻と同じ目に遭っているとわかったから。

彼はほかの女を大勢、相手にしている。
お前は彼だけでもいいの?
はしたないと思いながら、妻に訊いた。
隣の奥さんは、それが嫌だといって、ご主人の了解を取り付けたうえで、なん人もの男性を交際相手に選んでいた。
彼の話題になると、いつも目を伏せながら本音を語る妻。
そのときも羞じらいながら、口ごもりながら、直截な問いにたどたどしい答えを返してきた。

私はひとりで、いいんです。
だって、真剣交際のつもりなんですもの。

そのいじらしさを相手に伝えたわたしは、思い切ってつけ加える。

妻が自分の意思で始めた交際だから、わたしは咎めようとは思わない。
けれども、どうか妻を粗略に扱わないでもらいたい。
わたしにとっても、たった一人の妻なのだから。

それ以来。
妻の命がけの恋の逢瀬は、週一から週二に、格上げになった。
週に三度の逢瀬は貧血をもたらすもの。
時にはそれが三度訪れることに、いまでは夫婦ともに満足を感じてしまっている。


あとがき
前作との関連作です。
吸血鬼との交際を、晴れて夫に認めてもらった妻たちの身の処しかたを描いてみました。
相手は人の生き血を欲する身。
ひとりの女を守ろうとすれば、必然的に相手を吸い尽さなければならないことになるという宿命。
だから吸血鬼は、毎晩女を取り替えます。
けれどもひとりひとりの女には、女それぞれに意思を持っています。
命がけでもある交際をつづけるほどの真剣さを、相手にわかってほしいと願い、
あるものは大勢の男にかしずかれることを選び、
あるものはそれでも耐えて男の招待を待ち続けます。

本作では、そうした妻のいじらしさを、夫みずからが妻の愛人に伝えています。
妻が吸血鬼の目に留まって召されるということは、妻の生命を危険にさらすことでもあります。
同時に、本作のように吸血行為に愛の好意が伴う場合、夫が妻の願いをかなえようとするということは、
妻をほかの男にみすみす抱かせるという意味にすらなってしまいます。
そういう意味で本作の夫の行動は、あり得ない設定かもしれません。
でもそのいっぽうで、「妻のしんけんさを相手に伝えたい」という部分は、夫としてはまっとうな部分のような気がしないでもありません。

「夫ですらかなえてやりたくなるほどの、妻の真剣交際」
やっぱり、あり得ない設定ですね。 (^^ゞ


「一体多数の関係。」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3443.html

「はしたないですよ。」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3452.html

はしたないですよ。

2017年05月06日(Sat) 07:34:37

はしたないですよ。
貧血をこらえながら、わたしはやっとの思いでそういった。
愛人を作ったらしい妻。
真夜中になってからおめかしをして出かける妻の後をそっと尾(つ)けていって、
相手の男の邸を突き止めて。
施錠されていないのをよいことになかにあがりこんで、二人のいる現場を抑えてみたら。
相手は、吸血鬼だった。
その場で血を吸われたわたしは、尻もちをついたまま。
くり広げられるふたりの愛の劇場を、否応なく見せつけられるハメになった。
夫のまえでヒィヒィ喘ぎながら、お尻を突き出す妻を見て。
わたしがそうたしなめたのは、むしろとうぜんのことだろう。

はしたないですよ。
吸血鬼の愛人は移り気で、始終ほかの女の尻を追いかける。
待ちぼうけを食わされた妻は不満そうだったが、
とことんつき合いつづけたら吸い尽されてしまうという現実だけは、よく理解していた。
相手もそれを慮って、相手を多数確保しているのだ。
「私一人を見てほしい。それが無理なら、せめて私も大勢にかしずかれたい」
思わず本音を口走った妻に、わたしはまたも同じ言葉をくり返すだけだった。
きっとまた・・・上の空で受け流されてしまうだろうことを、承知のうえで。

はしたないですよ。
望みどおり、なん人もの男をあてがわれた妻は、きょうも夫以外の男を夫婦のベッドに引き入れている。
自宅の玄関の前、夜這いの男がひっそりと佇むと。
妻は男を家にあげて、男にわたしを縛り上げさせて。
わたしは間男の欲求を遂げさせてやるために、夫婦のベッドを否応なく明け渡させられる。
そんな境遇にガマンできたのは。相手の境遇を知ってしまったから。
彼らもまた、吸血鬼に妻を寝取られたもの同士だったから。
たしなめたのは、妻のほう。
たしなめられたのは、わたしのほう。
奥さんを目のまえで犯されているのに、あなた勃っちゃっているのね。
ことさら眉を顰めて非難を向けるそのまなざしは、むしろ楽しげだった。

はしたなくは、ないかもね・・・
大勢の男が自分の身体を通り過ぎて。
妻はひとつのことを学んだらしい。
女に群がって来る男の大半は、たんに身体目あてなのだと。
いまでも、吸血鬼の犠牲となった人妻の夫たちのため、妻は週一でお勤めに励んではいるけれど。
昼間をいっしょにすごすのは、さいしょに作った愛人と、そして夫であるわたしだけ。
真剣交際なんだね。
吸血鬼との仲を冷やかすと、妻は「そういう言い方は、はしたない」と、言葉を切って断言したけれど。
「あなたと同じくらいにね」と、向こうを向いて呟いた。
「はしたないって、言うんでしょう?」
恐る恐る問いかけをした妻に、わたしは呟きかえしていた。

はしたなくは、ないかもね・・・


あとがき
ちょっと前に描いた「一体多数の関係。」の関連作です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3443.html

【映画】呪いの館 血を吸う眼

2017年05月05日(Fri) 14:42:00

たまたま観る機会があったので、映画の感想を描いてみます。
レビューなんてたいしたものではございません。
映画は嫌いではないけれど、知識はほとんどありません。
よって、観たまんまのかんそうになると思います。
あ かんそうなので、ネタバレ注意はお約束ですね。(笑)

知る人ぞ知る映画なので、映画の来歴については私が描くよりも、もっと詳しい別サイトさんを御覧になっていただいたほうが良いと思いますが、1971年にできた映画です。
「血を吸うシリーズ」というのが三作あって、これはその第二作め。
ほんとうは一作目から観るべきなのでしょうが、たまたまのご縁で第二作を先に観ることになりました。

ヒロインにはイカす恋人と、可愛い妹がいます。
姉はおっとりしていて引っ込み思案。妹は活発で、挑発的な「現代美人」です。
姉は20代前半でも、働いているようにはみえません。
妹は姉より3歳年下なので、学生であってもおかしくない世代ですが、これまたなにをしている人かわかりません。
両親はどうやら、他界しているみたいです。
裕福な家に育ったお嬢さん姉妹が、なに不自由なく暮らしている というところでしょうか。

ヒロインには恐怖の過去があって、幼い頃に吸血鬼と恐怖の邂逅をしたようです。
ただし、記憶は薄ぼんやりとしていて、よく思い出せない。
どうやら親たちが忘れさせようとしたらしいです。
真実は、珍しく飼い主を振り切った愛犬を追いかけて海辺の洋館に迷い込み、
そこでピアノの前に腰かけたまま死んでいる美女と、その女性の血を吸った吸血鬼を視てしまった というわけです。
その吸血鬼が16年の時を経て、またヒロインの前に姿を現し・・・というのがストーリーの骨格です。

【怖い姉妹】
ヒロインと準ヒロイン(しばしば姉と妹)がいて、二人とも狙われて、
準ヒロインは血を吸われて死亡。
でもヒロインは危ういところを助かる――という筋書きは、結構多いです。
古くはブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」がそうです。
「血を吸う眼」とくしくも同時期に放送された「仮面ライダーV3」にも、吸血鬼ではありませんが、同工異曲の設定のものがあります。
(第42話 「カタツムリ人間の人体実験!」)
どちらの場合も、くしくも、というべきか、ヒロインはおっとりしていて、準ヒロインは勝気な性格。
「吸血鬼ドラキュラ」では準ヒロインが食われてしまい、「カタツムリ人間」では姉のほうがやられてしまいます。
観る側としては、「どちらがやられてしまうのだろう」と、ドキドキしながら観ることになります。
そうそう。未見ですが、
「ドラキュラ 血の味」というとても気になる映画(これも古いです)があるのですが、やはりヒロインは姉妹のようです。
やっぱり、ドキドキしながら観ることになりそうです。

先に行きましょう。
裕福な姉妹、と描きました。
でも、「血を吸う眼」の設定はかなりしっかりとしていて、
姉は怯えやすく両親の愛を一身に受けた立場。
妹はそんな姉にとても嫉妬している。そんな関係がある場面で浮き彫りになります。
妹は(もしかすると積極的に)吸血鬼に身をゆだね、姉を狙う(ないしは、襲われるように仕向ける)ようになるのです。
吸血鬼そのものももちろん怖いのですが、むしろこうした妹の歪んだ感情が、じつは一番怖いかも。
ブラム・ストーカーもそうですが、ヒロインに負の感情を抱えた準ヒロインは、血を吸われて滅びるのがルールのようです。

血を吸い尽された妹は、病院に向かう車の中で絶命。
さいごには自分の所行を後悔したらしく、姉には「私が死んだら身体をすぐに焼いて」と言い残します。
ヒロインの恋人は常識的な医者なので、「だびに付す前に解剖を」ということを始める。
霊安室で蘇生した妹は、たまたまツーショットになった看護婦に襲いかかり、脱走します。

【犠牲者の群像】
吸血鬼が血を吸ったのは、ヒロインの妹だけではありません。
最初に襲ったのが、自分自身の恋人。(後述)
それから、実の父親。
それから、ヒロイン姉妹に身近な年配男性。(吸血鬼の下僕となってヒロインの恋人を殺そうとするが、落雷のため感電死)
それから、その年配男性を手中にするために使わされた運送業の男。(終盤で死体となって発見。たぶん失血死)
それから、妹がおかしくなる前に恋人の勤務する病院に運び込まれた、正体不明の若い美女。(病室をさ迷い出て転落死)
みんな、死んじゃってるんですね。。。
特に父親は、長期にわたって息子に血を吸われ続けて死んだようです。
一回吸われただけで死ぬわけではなさそうですが、父親以外は精神的に支配されてしまっています。
父親だけが例外なのは、意思が強かったからか、吸血鬼の血統の一員だったからか。
どちらにしても、周囲と共存することが難しそうな吸血鬼です。

ちょっと見ただけではかなり意味不明なのが、病院に担ぎ込まれた美女。
病室からさ迷い出るシーンで明らかになりますが、超ミニ丈のネグリジェ姿という、今観てもセクシーなカッコ。
いかにもミステリアスな存在としてえがかれますが、病院から逃げようとして誤って転落死してしまうという、あっけない最期を遂げます。
存在感があり過ぎるのに最期があっけなさ過ぎて、「なにこの人?」という感じなのですが、
ちょっと気になったのがセリフの中だけで登場する遺族の言いぐさです。
「これ以上恥をさらしたくない」として、解剖を拒否して遺体を引き取り、すぐに火葬にしたというのです。
「恥をさらしたくない」というのは、吸血鬼の餌食になったことだと察しがつきますが、
処置が早すぎないか??
きっとこの遺族は、娘が吸血鬼に襲われたことも、一刻も早く焼かないと吸血鬼として覚醒することも知っていたのかもしれません。
だとすると・・・姿を現さないだけに・・・謎の一族ですね・・・

【ラストシーン】
この吸血鬼は代々呪われた血を持つ家系の出で、代々必ずしも吸血鬼になるというものではなかったようです。
げんに、父親は吸血鬼にならなかった。
本人は突然発症して、恋人を襲い血を吸って、吸血鬼として覚醒したようです。(それが、ピアノの女性)
この父親は最後のシーンで登場するのですが、とても不可思議な存在です。
ヒロインと恋人が洋館の中で発見したときにはすでに、イスに腰かけたまま死んでいる状態。
グラッと崩れ落ちるとき、掌が脱落してそのまま机の表面にへばりつくシーンは、かなーり怖いです。

そこに吸血鬼登場!
お約束どおり、ヒロインに襲いかかろうとして、恋人と格闘になります。
痩せ身で顔色が真っ蒼なくせに腕っぷしは凄くって、恋人のほうが形勢不利。
ヒロインはなん度もつかまえられて、血を吸われそうになります。
さいごはなぜか生き返ったお父さんが吸血鬼と化した息子の足を引っ張り、二階の吹き抜けからあえなく転落。
都合よく置かれていた杭に串刺しになって、悲惨な最期を遂げます。
生き返ったお父さんが吸血鬼として覚醒したのだとしたら、映画が終わったあとにヒロインは結局襲われちゃうところですが、
どうやらそのまま息絶えたみたいです。
哀れ。

【ふろく いささかフェチな感想】
この映画では、ヒロインは咬まれずに終わります。
ヒロインが追いかけまわされて、なん度も咬まれそうになった挙句、無傷で助かる。
めでたいには違いないのですが、こういう「寸止め」な処置は、けっこう欲求不満がたまりますね。(笑)
昭和40年代にはやった女の子向けの「恐怖まんが」でも、この手合いが多いです。

ブラム・ストーカーは、「咬まれても吸血鬼が滅びたので人間に戻った」という処理をします。
当然のことながら、ヒロインが咬まれるシーンが映画での見どころになります。
(観客というのは、残酷なものですね)
ほとんどの映画や小説が、咬まれたときにヒロインが恐怖や苦痛、屈辱以外の感情を持ちます。
いわゆる、うっとり、恍惚・・・というやつです。
ブラム・ストーカーのヒロインは、若妻です。
その若妻が、吸血鬼相手にほんの一瞬にせよロマンチックな感情を抱いてしまう。
その禁忌性が、ひとつの魅力だったりもします。

こんなふうに、「さんざん気を持たせたあげく寸止め」よりも、咬まれてしまったほうがお話としては深みが増すこともあるようです。
でも「血を吸う眼」の場合には、ヒロインがおっかなびっくりのおぼこ娘で、恋人も品行方正なインテリさんですから、
却ってそういう妖しい体験をしてしまうと、観終わった後味があまりよろしくないかもしれませんね。


したがって、それらしい吸血シーンは、妹のものだけとなります。
夜中に湖畔にさ迷い出て、吸血鬼に抱かれ、首すじを伝い落ちる血のすじが胸元に吸い込まれてゆく――というシーン。
これはこれでドキドキするのですが、欲を言えば牙でググッとやるところを観たかったなあ。
(^0^)


さいごに、冒頭に出てくるトラウマシーン。
ヒロインがまだ幼い頃に吸血鬼と邂逅するシーンなのですが、これもなかなかです。
真っ赤なミニスカートに、タイツを穿いているんです。
当時のタイツと言うと、もっさりとしたものが主流だったはずですが、
彼女の穿いているタイツはオトナっぽい薄地のもののようです。
いかにも両家の子女・・・という雰囲気を感じます。
終盤、大人になったヒロインと16年ぶりに邂逅を遂げた吸血鬼が、「お前は私の花嫁になるはずだった」と告げます。
自分の牙の犠牲になることを「花嫁になる」という表現でくるんでいるようです。
16年前は、吸血鬼のお父さんが彼女を逃がしてくれたのですが、
もしも運悪くこの場で花嫁になってしまったとしたら・・・
タイツを穿いた少女の脚に舌なめずりをくり返して・・・なわけは、ないですよね。^^;

お下品な話はさておいて、
この映画を観ての恐怖感は、それほど強くはありません。
ただ、いかにも昭和な空気が画面全体に漂っていること、
昔の乙女の話し口調、ものごしはこんなだったのだなと、
映画全体を包む雰囲気にこそ、魅了されるべきなのかもしれません。

イラストはイメージですが、ちっとも似ておりません。
すでに描いたように、ヒロインは咬まれておりません。
ここは吸血鬼に同情して、ちょっとだけいい思いをさせてやることにしました。^^

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問題があるようなら、削除しますので、いまのうちに御覧下さい。

「感染源」は、夫か息子  吸血開放家庭の知られざる日常

2017年05月05日(Fri) 11:54:08

市内の名門男子校が吸血鬼受入れ宣言を出してから、約1年が経過しようとしている。
すでに教職員は全員、特定ないし不特定の吸血鬼をその家庭に受け容れており、
同様の傾向は生徒や父兄にも拡がりつつあるようだ。

この学園の実態を密着取材している本誌は先日、生徒の家庭を任意で抽出、意識調査を行った。
その結果、すでに半数程度の家庭が吸血鬼を受け容れており、吸血鬼を受け容れた家庭のほとんどが家族全員で献血行為に応じていることが分かった。
既婚女性が吸血の対象となった場合、相手の吸血鬼と性的関係を迫られるので、男子生徒の母親の約半数は貞操を喪失していることになる。
調査の結果によると、アンケート対象となった300家庭のうち256家庭から回答を得、そのうち123家庭において吸血鬼の侵入が確認された。
うち98家庭はすでに全員が献血に応じており、残り25家庭はすべて、家族の誰かが献血に応じるようになってまだ1か月以内と回答されていたため、早晩この123家庭すべてにおいて、家族全員が献血要員となることがほぼ確実である。
家族の誰かが献血に応じるようになってから、献血者が家族全員に広まるようになるのに必要な期間は、おおむね約2週間から1か月。
最も速いもので「ひと晩」というものもあった。
いずれにしても、家族のうち誰か一人でも血を吸われてしまうと、一家の運命はおおむね一か月以内に大きく変わってしまうようだ。

吸血鬼を受け容れた123家庭のうち、一番早く吸われたのは「長男」と回答する家庭が68家庭。
次男以下を含め、息子が初めての犠牲者と回答する家は合計で88家庭にのぼる。
これは、息子の通う学校が吸血鬼の受け入れ先となっているので、むしろ当然の結果であろう。
その他の回答は、「夫」が27家庭、「妻」が5家庭、「娘」が3家庭と、「夫」の比率が圧倒的に高い。
基本的にひとつの家庭を征服するのは単独の吸血鬼である場合が多く(110家庭)、彼らが吸血の対象として最初から家族全員を想定していることがわかる。

「ある家族を吸血の対象として狙った場合、キーパーソンは多くの場合夫です」
と証言するのは、記者が懇意にしている吸血鬼のAさん(48)。
Aさんは根っからの吸血鬼ではなく、もともとこの街に共住していた一般人で、妻子ともども咬まれた後A氏だけが吸血の習慣を持っている。
「妻や娘を狙う場合、最も手ごわい障害となり得るのが夫です。
 逆に言えば、夫を仲間に引き入れてしまえば、家族全員を征服するのはかなり容易になります」
と、Aさんは説く。
Aさん自身、家族の中で真っ先に襲われた経験を持っている。
当時30代後半だったAさんには、同世代の妻、十代前半の娘がいた。
「人妻熟女とまだ男を識らない少女。吸血鬼にとってはもっともねらい目な家族構成だったんですね」
時には笑いを交えながらたんたんと語るAさんだったが、当時はむろん葛藤もあった。
「家族を守らなければならないという意識が高いのが、夫という立場。
 だから、自身が献血に応じることはあっても、家族の手引きまでするのは、ふつうの神経では無理」だという。
事実、相手の吸血鬼に、妻や娘に逢わせて欲しいと懇願されながら、何回も断っている。

「夫が、吸血鬼に家族を紹介する動機は、大きく二つ。
 ひとつは、献血の頻度が高すぎて身体に変調をきたし、家族に気づかれてしまう場合。
 もうひとつは、献血の際に伴う快感に理性を忘れて、相手の吸血鬼に身も心も信服してしまう場合です」
多くの場合は動機の両方が作用し合って、次のステージに移行するという。
「わたしの場合もそうでした。生き血を吸い取られるのが、どうにも気持ちよくなってしまって・・・
 家族にも同じ経験をさせたくなりましたし、若い女性の血で彼のことも十分満足させてあげたいと真剣に考えたのです」
思い切ってすべてを妻に打ち明けたとき、Aさんの顔色が悪くなったのを心配していた妻は、意外なくらいあっさりと面会を承諾したという。
「妻を犯されてしまうのは、夫としてはもちろん抵抗がありました。
 でもそれ以上に、妻がわたしと同じ境遇を受け容れてくれたという歓びのほうが大きかった」
と、Aさんは証言する。
いまほうぼうで侵蝕されつつある生徒たちの家庭でも、同様の事態が進行しているのであろうか。

「娘の場合は、さらに抵抗がありました。まだ将来のある若い人ですからね。
 でもこちらは家内のほうが乗り気で、さっさと主導権を握ると、娘によく言い含めて、差し出してしまいました」
相手の吸血鬼がもっとも好むのは処女の生き血。
でもすでに結婚している身では、自身でその望みをかなえてあげることはできない。
だから、自分の果たせなかった役割を、娘に期待するのではないか――と、Aさんは考えている。
「同性同士は、けっこう残酷なんですよ」
と、娘の行く末についてAさんはいまでも未練があるらしい。

息子を持たないAさんであるが、「息子が窓口になり得るという見解は、十分理解できる」と断言する。
校内でユニセックス化が進んでいるなか、生徒と男性教諭とが一種の疑似恋愛関係に陥るケースがよくあるという。
「純粋な年代なので、自分の尊敬する男性に人の生き血をあてがうことに最善を尽くそうとするんです。
 それに、母親が犯されているのを見て性に目ざめる子もいます。
 母親や姉妹の手引きをすることで、大人の入り口に一歩踏み込んだと感じるのだと思います」
「こうした男性は、結婚をする際にも、吸血鬼に紹介することを前提に相手を選びます。
 本人だけではなく、魅力的な母親や姉妹、兄嫁のいる女性を探そうとしますし、
 そうした女性を魅き寄せるための努力も怠らない。手ごわい若者になるんですよ」

吸血鬼生活を10年送った人ならではのコメントだろうか。

拡がる女装熱 吸血鬼に門戸を開放した男子校、女子制服を採用

2017年05月05日(Fri) 10:40:13

市内の名門男子校の生徒たちに、女装熱が拡がっている。
同校では昨年10月、吸血鬼受入れを宣言している。
現在ではすべての教諭が家庭内に吸血鬼を受け入れており、同様の傾向は生徒やその家庭にも広がっているという。
先月、有志の生徒による任意のアンケートが実施されたが、その結果、約7割の生徒が献血体験を経験済みだとう結果が出た。
生徒の間で女装熱が高まったのは、生徒の献血体験率が増加の一途をたどり始めてからだといわれている。
校内に出没する吸血鬼は女性の生き血を好むといわれており、一部の生徒が彼らの好みに合わせて女装して吸血に応じるようになったのがきっかけといわれている。

同校の制服は夏冬一貫して半ズボンにハイソックスのスタイルであるが、昨年10月の衣替え以後、女性用のストッキングの着用が解禁となると、
生徒の間でストッキングの着用率が急伸。11月からは、校内の購買部でも生徒向けに黒のストッキングの販売を開始した。
さらに4月からは、男子校としては初めて、女性の制服が正式に採用された。

「僕の相手の吸血鬼はいい齢の小父さんなんですが、女好きなんです。
それで、血を吸われるときくらい女の子になってあげることにしたんです。
はじめは姉のお古の洋服を黙って借りていたんです。
でも、血がついてすぐにばれてしまって・・・親には一応怒られましたけど、
姉が着なくなった服を2、3着誕生祝いにとプレゼントしてくれて、一件落着です。
僕の好きそうな服ばかりだったのに驚きましたが、『あんたのわたしを見る目つきを気にしていればすぐわかる』って言われてしまいました。
家族はごまかせませんね(笑)。
制服が解禁になったので、両親に頼んで買ってもらいました。いまは毎日女子として通学しています」
そう証言するのは、同校高等部二年の竹野六郎くん(仮名)。
「最初は僕がうろたえたり、彼が目を血走らせたりして服を汚してしまいがちでしたが、
いまではお互い慣れてきて、めったに服を汚したりはしません。
姉の服を黙って借りる癖は結局治りませんでしたが、けっきょくそれでよかったみたいです。
その後彼が僕の着てあげている服の持ち主に興味をもっちゃって・・・姉貴まで襲われちゃったんです。
それ以来、姉の服はごく一部の気に入り以外は自由に着させてもらっています」
いまでは首すじから吸われても、セーラー服の襟首にシミひとつ付けないと彼氏の自慢をする竹野君。
セーラー服姿の彼が吸血男の自慢話をしているのを目にすると、ふつうに女子高生が彼氏の自慢をする姿と重なってしまう
場合によっては命にかかわるはずの吸血行為を、奉仕活動として受け取っているという竹野君は、「このまま卒業まで、女子で通します」と、爽やかに笑う。

5月末現在、女子制服の着用率は2~3割程度と言われているが、今後「衣替えを機に一段と伸びそう(学校関係者)」というのが大方の予想である。
GW明けには女装教諭が初めて教壇に立ったこともあり、生徒の女装への意識が一段と高まりを見せそうだ。

祥太の母

2017年04月23日(Sun) 08:12:40

祥太が女子の制服で登校するようになって、さらにひと月が過ぎた。
初めてセーラー服でくぐった教室の玄関の向こうからは、予期した通り「おお~」という声があがったけれど。
冷やかすような声はひとつもなくて、「よく思い切ったね」という無言の称賛さえ伝えてくるものもいた。
男子校なのに、女子の制服も採用したこの学校で。
数はまだ少なかったけれど、自分の内面に目ざめた子たちがクラスで決まってなん人か、
半ズボンばかりだった教室のなかに、スカート姿を交えるようになっている。

ユウヤとの関係は、すでにクラス内で無言の承認を受けていた。
もちろん、育ち盛りで大量の血液を必要とするユウヤは、ほかの生徒を相手にすることも多かったけれど、
祥太は嫉妬しなかったし、それが祥太の身体を気遣うユウヤの形を変えた愛情だということも自覚していた。
そんな祥太をある日の放課後、ユウヤはやはり放課後の教室の片隅で抑えつけていた。
セーラー服の襟首に血が撥ねないようにするのは、相手が取り乱さないという前提あってのこと。
すんなりと伸びた首すじに、ユウヤは深々と牙を食い入れて、
その深さが自分に対する執着の深さだと察した祥太は、本物の女子のような淑やかさで、ユウヤの狂態を受け止めてゆく。

「あのさ、頼みがあるんだけど」
「なあに?」
祥太の問いにユウヤは、直截にこたえた。
「きみのお母さんと、仲良くなりたい」
飛び火するって、ほんとうなんだ――祥太は素直にそう思った。
だれかの血を吸って気に入ると、血を分けた親族のことも気になっていくという、ユウヤから教わった彼らの習性。
そういえば、ユウヤは自分の母親の血を好んで吸うといっていたっけ。
それに、こんなことも言っていた。
襲った女性がセックス経験者の場合、ほぼ例外なく性交渉も遂げてしまうと。
みなまで言わなかったけれど、ユウヤは自分のお母さんまで姦っちゃってるんだ。
そのユウヤが、母さんのことを狙っている――
ふつうなら嫌悪しなければならないユウヤの感情に、祥太はなぜかゾクリと胸を震わせた。
「か・・・考えてみる」
「いい返事を期待しているよ」
「そうだね」
「それとさ」
ユウヤはなおも、油断ならないことを言った。
「きみの母さんには、うちのパパもご執心なんだ」

どうしようか?悩む家路は短くて、けれども祥太の結論も速かった。
本人にそのまま、訊いてしまおう。
そんなふうに思えたのは、彼が母親のサバサバトした性格をよく知っていたから。

「アラ、そんなこと言われたの?」
いちぶしじゅうを告げられた母さんは、大きな瞳を見開いて、さすがに驚いていたけれど。
祥太の話を、意外にまじめに受け取ってくれた。
「父さんに相談しようかな――でも、いいって言うわけ、ないよね?祥太が父さんならどうする?
 男ってこういうとき、どういう行動取るものなのかな・・・」
母さんもさすがに、すぐには決めかねたらしい。ちょっと言葉を途切らすとすぐに、
「ちょっと考えとく」とだけ、いった。
息子のまえでそれ以上の動揺を見せるのは適切じゃないと、きっとそう思ったんだろう。
でも、そこははっきりとした母さんのこと、「返事は必ずするから」と付け加えることも忘れなかった。

「ユウやくんだけなら、遊びに連れてきてもいいよ」
母さんが祥太にそう告げたのは、ある日の登校前の事だった。
「えっ?そうなの?」
出勤前の父さんに声が届かないよう、とっさに声をひそめると。
「父さんのことは気にしないでいいから」とだけ、母さんはいった。
気にしないでいい・・・って、どういうこと?
こんどは祥太が悩む番だった。
父さんは母さんが吸血鬼に咬まれるのを認めてくれた?
それとも、母さんは自分のなかだけで、物事を処理しようとしているの?
考えもまとまらないままに、祥太はその日の放課後、ユウヤを家に誘っていた。

ごくり。
生唾を呑み込みながら、つい覗き込んでしまっている。
祥太の勉強部屋のなか、母さんと2人きりにしてあげたユウヤは、
いつもクラスの子たちにするように、母さんのこぎれいなワンピース姿にも、衝動的に抱きついていった。
首すじを咬まれる時、母さんが声をこらえながら立ちすくむのがみえた。
チューッと音をたてて吸い出される、母さんの血――
忌まわしい光景のはずなのに。スカートのなかで一物を逆立ててしまっているのはなぜ?
ふさん着のデニムのスカートのなか、昂ぶり逆立つものが暴れるのを、祥太は抑えることができなくなっていた。
貧血で堪えられなくなった母さんが畳のうえに突っ伏して、
うつ伏せになった母さんにのしかかったユウヤが、母さんのふくらはぎに咬みついて、
肌色のストッキングをむぞうさに咬み破ってしまったところで、祥太の昂ぶりは頂点に達してしまった。
スカートの裏地に生温かい粘液をほとび散らしてしまいながら。
自分の醜態さえも気にかけないで。
祥太はただただ熱い視線で、吸血鬼のクラスメイトの腕のなかで悶えつづける母さんの横顔を、見つめ続けていた。

女の生き血を欲しがる吸血鬼の親友に、自分の母親を差し出してしまった。
禁断の領域を一歩踏み越えてしまったところに、もはや罪悪感も自己嫌悪も雲散霧消してしまっていた。
新調したばかりの母さんのワンピースを、「祥太のお母さんを初めて汚した記念に」と、戦利品としてせしめていったユウヤ。
さすがに下着は恥ずかしいからと回収した母さんは、ブラやスリップ、ショーツにストッキングを洗濯すると、次の日祥太に持たせていった。
「これ、ユウヤくんに渡してあげて」
汚れものを外に出すのだけは嫌だという主婦らしい感覚を母さんが捨てずにいるのが、むしょうに嬉しかった。
その翌日、ユウヤはもっと刺激的なことを、祥太に囁いていた。
「ちょっと小さかったけど、お母さんのワンピース俺でも着れるんだよね」
祥太の母親に執着していた父親のため、ユウヤは「身代わりになってあげる」といって、祥太の母親の服を身にまとい、父親の相手をしたという。
「母さん、ユウヤのお父さんに、もう間接的に犯されちゃっているんだね」
そういうことになるね・・・ユウヤの宣告に、祥太はくすぐったそうに笑い返した。

いよいよ母さんを、ユウヤの家に連れ出す日。
祥太は唖然として、母さんを見つめていた。
若いころ着ていたという超ミニのワンピース姿もさることながら、
もっとびっくりだったのは、母さんの隣に父さんまで立っていたから。
「いちど、ごあいさつをしなくちゃって、父さんも仰るの。あなた、ちゃんと紹介して頂戴ね」
いつものしつけに厳しい母さんの顔が、そこにあった。

1時間後。
ユウヤの家は、たいへんなことになっていた。
自分の妻が襲われるのを見るに忍びなかったらしい父さんは、さきに私の血を吸って意識をなくさせてほしいと願い、
ユウヤの父さんはまず、祥太の父親を咬んでいた。
けれども祥太の父親の希望は半分しかかなえてもらえなかった。
人妻を犯すシーンを夫に見せつけたがるという、けしからぬ趣味を彼は持っていたから。
倒れた父さんの首すじを、ユウヤの母さんがチロチロと舐めつづけながら、囁きかけていた。
「奥さま、きれいなショーツをお召しになっていらっしゃるのね。お洒落なひとは、そういうところから心がけが違うわ。
 えっ?いつもはそんなことないんですって?だとしたら・・・主人のために特別なのかしら。ありがたいことですわ。
 お肌も白くて綺麗・・・主人が執着するわけだわ。いつもああやって、人妻を狂わせてしまうんですのよ。
 いちど狂っちゃうともう、大変・・・お留守の時はお宅にかけるより、うちに電話するほうが奥さまつかまると思うわ。
 私ひとりで主人の面倒を見れるわけではないですから、むしろ助かるんですけどね」
祥太とユウヤは、そんな親たちのようすをかいま見ながら、ユウヤは祥太のスカートの奥に手を這わせてゆき、
祥太はそんなユウヤの欲望に応えるために、あらわになった素肌を彼の逞しい肢体へとすり寄せていった。

ともだち。

2017年04月22日(Sat) 15:23:35

この学園に潜入して、ひと月ちょっとが経った。
ミサキユウヤは、吸血鬼。
生まれつきではないはずなのだが、吸血鬼になる前のことは、あまりよく憶えてはいない。
記憶というものにあまり重きを置かなくなったのは、血を吸う性のせいだとは、なんとなく感じている。
身近な人間の脚や首すじを咬んで血を吸うなどというおぞましい行為など、いくら克明に憶えていたって仕方ないから。
それでも忘れられないのは、親たちからこの学校に転校になると告げられた時、
「安心をし。こんどの学校、吸血鬼を受け入れる宣言をしているんだって。
 クラスのお友だちの血を、好きなだけ吸えるんだよ」
と言われたこと。
ずっと人目を忍んでしてきた行為を、これからはもうおおっぴらにすることができる。
子どもらしい素直な歓びがある一方で、なにかにつけ疑いをさしはさむことを忘れない本能も、捨て去ることができずにいた。
――まてよ、そんなうまい話あるのか?
というわけで、当分は自分の正体を隠して、目立たない存在として新しいクラスにとけ込むことに腐心した。

転校生が注目を浴びるのは、最初の1~2カ月である。
目新しいうちこそいろんな人に声をかけられるけど、
もともとそんなに取り柄のあるわけではなくスポーツマンでもない彼が、人から忘れられるのは早かった。
意図してそう心がけた結果とはいえ、本人が寂しがるほどに。
――どこに行っても、居場所は教室の隅か日陰の廊下なんだな。
そのほうが、居心地はいいんだけど、と、自らを慰める。

その代わり――放課後の、だれかと2人きりになるほど遅い時間の教室は、彼の支配下に入ることになる。
その日の獲物に選ばれた少年は、なにも知らずに彼といっしょに2人きりになって、
むき出された飢えた牙を目のまえに、どうすることもできなくなって、咬まれていった。
軽度のマインドコントロールを心得ていたユウヤは、標的と決めた男子1人だけが教室に残るよう、周囲を仕向けることができたのだ。

――どうして親は、わざわざ男子校など選んだのだ?
吸い取ったばかりの血で口許をネットリさせながら、ユウヤはほんの少しだけ心で愚痴る。
それはやっぱり、どうせ支配するのなら、可愛い女の子のほうが良いに決まっているではないか。
ああ、そうだった。
ここは、吸血鬼を受け入れてくれるって宣言した学校だったっけ。
用心深くいまだに正体を隠している彼にとって、それはまだあまり実感できるありがた味を伴わないメリットだったけど。

血を吸った同級生の記憶は、その場で消すことにした。
うわさが広まるのを防ぎたかったのだ。
口封じに血を吸い尽してしまうという発想は、彼にも彼の家族にもない。
そこまですることはないじゃないか――そんな発想の持ち主である彼らにとっては、吸血鬼を受けれる街は、別天地のはずだった。
記憶を消された同級生は、翌日ほんのちょっと蒼い顔をして登校してきて、
でも仲間に向かってユウヤの存在に対して警告を発することはなかった。
そしてその日は、貧血気味の「お得意様」を除いた別のだれかと、帰りは2人きりになるよう仕向けていく。

咬まれた痕は咬まれた者にしか見えないから、彼が同級生たちに加えた犯罪の痕は、まだ当面気づかれることはないだろう。
濃紺の半ズボンに同色のハイソックスという、男子としてはマイナーなスタイルの制服も幸いした。
首すじでは目立つので、ハイソックスを引き降ろしたふくらはぎに咬みつくことで、
彼の痕跡はさらにしばらく長く、人目に触れずに済むはずだ。
もっとも――ハイソックスに独特な嗜好を持っていた彼はしばしば、衝動のおもむくままにそのまま咬みついて、
よだれをたっぷりしみ込ませながら痕を残してしまうのだが。

その日はしまった――と思った。
体育大会の翌日の事だった。
クラス一丸でがんばったすがすがしい記憶を振り払うことができなくて、その日はだれにも咬みつくことなく家に帰ったのだ。
貧血気味で迎えたその日、彼はだれかひとりを教室に残すためのマインドコントロールを取ることができなかった。

――母さんに頼んで、血を吸わせてもらおう。
脳裏に拡がりつつある眩暈を抱えながら、ユウヤはひっそりとそう思った。
母さんも吸血の習慣を持っていたが、同時にまだ体内にいくらかの血を残していた。
その点はユウヤも同じだったから、彼らは外部で獲物にありつけなかったときには、
お互いの血を吸い合いうことで当座の飢えをしのいでいたのだ。
この学校に来てから、しばらく母さんの血を飲んでいない。
女の柔肌に牙を突き立てるのは、実の母親が相手でも、ちょっとドキドキする。
ユウヤもまた、本来は青春真っただ中の中学生なのだ。

ふと顔をあげると、教室の入り口から中を覗き込んでくる生徒の姿が目に入った。
同級生の越川翔太だった。
「忘れ物?」
ぞんざいに投げた言葉に、祥太はううん・・・とかぶりを振って応えてきた。
そしてこちらに歩み寄って来ると、信じられない言葉を口にした。

もしかして、喉渇いてるんじゃない?

え・・・?
空とぼけようとして外した視線を、祥太は追いかけるようにまわり込んだ。
「朝からずっと具合悪そうにしてたけど、血が欲しいんだよね?」
祥太の質問は真正面過ぎて、応えを躊躇して黙りこくってしまった。
陰にこもった態度は相手を警戒させるから、よくない。
父から教わったことは、まだまだ付け焼刃に過ぎなかったと、いやというほど自覚する。
「だいじょうぶだから。知ってるだろ?ここは吸血鬼を受け入れているって」

祥太のことは、つい3日ほど前に一度、咬んだはず。
ほかの少年たちと同じように、ちょっと戸惑って、なんなく金縛りにかかって、唯々諾々と首すじを咬まれていったはず。
そのあと靴下を引きずりおろすつもりが、性急な衝動のままに舌を這わせて、ハイソックスをよだれまみれにしてしまったのが、いつもと違うところだった。
「ハイソックス咬み破るのが好きなんだよね?
 きょうはなんとなくきみに咬まれそうな気がしたから、新しいのおろして履いてきたんだ」
スッと差し伸べられた脚は、男子にしてはなだらか過ぎる、すらりとしたシルエット。
ひざ小僧のすぐ下までお行儀よく引き伸ばされた濃紺のハイソックスが、教室の窓から射し込む陽射しを照り返して、
真新しいリブをツヤツヤと輝かせている。
しぜんと口許を近寄せてしまい、気がついたら祥太のハイソックスに、じわじわとよだれをしみ込ませてしまっていた。
祥太はクスクスと笑いながらも、彼の行為を受け容れてくれた。
「なんか、くすぐったいな。あと、なんか、やらしいよね?」
行為の本質が伝わるのだろうか?
ユウヤはもういちど舌を這わせて、ナイロン生地のしなやかな舌触りを愉しむと、おもむろに咬みついていった。
牙の切っ先にまでよだれが伝い落ちるほど、喉の奥がはぜるほど、人の生き血に欲情していた。

あー・・・
祥太のあげるうめき声もかえりみず、ひとしきり血を吸い取ったあと顔をあげると、祥太は額を抑えて机に突っ伏していた。
だいじょうぶか?と声をかけ気づかうつもりが、もうどうしようもない衝動のまま、
座った姿勢を崩しそうになる祥太にのしかかって、教室の床の上に引きずり倒す。
そのまま身体を重ねていって、牙の切っ先で長髪になかば覆われた首すじをさぐっていった。
あ・・・
ユウヤの下で、祥太が再び声をあげた。
祥太はユウヤの邪魔をしないよう彼の二の腕に手を添えながら、いった。
「勃(た)ってるね?」
え・・・
ふとわれにかえると、おそろいの半ズボンのなかで、股間の一物が勃起しているのに気づいた。
そうなんだ。こうしているときにいつも感じるのは、この羞ずかしい劣情なのだ。
でも、待てよ。
身体を重ねた相手の変化を感じ取ったユウヤは、ニッと笑ってこたえていた。
「きみだって、勃ってるじゃないか」

「いいから咬んで」
言われるままに牙を埋めた首すじから、十代の少年の新鮮な血液を、じゅうぶんに摂取していく。
胸の奥の空しいすき間を暖かなものが埋めていくのを感じながら、
一方で股間の昂ぶりが一層熱を帯びるのも、感じないわけにはいかなかった。
2人の少年は、かたや血を吸う行為に、かたや吸われる行為に、しばらくの間熱中し続けていた。

きみ、血を吸った子の記憶を消そうとしたよね?
ぼくもだから、危うく忘れかけそうになったんだ。
でも・・・きみに咬まれるのがなぜか、ひどく愉しく思えて・・・忘れることができなかったんだ。
忘れちゃいけないって、そう思って、きみの行動に注意してたら、いつも違う子を狙って2人きりになろうとしているのに気がついて。
目をつけた子だけじゃなくって、順番に咬んでいるのは、弱らせちゃいけないって思っているんだなって思ったら、なんか怖くなくなっちゃって。
体育大会の帰り、だれにも声をかけないで帰ったから、ちょっと心配であとを追いかけたんだけど、
きみはいい顔をしていてさばさばと帰っていったから、みんなと頑張れていい気分でいるのを壊しちゃいけないと思ってあきらめたんだ。
ぼくで良かったら、時々声かけてね。獲物をつかまえられなかった時なんか特に・・・

血を吸われるのが快感で、記憶を抱え続けた子。
そんな子が、クラスにいたんだな。
ユウヤはいままでにない安ど感を、覚え始めていた。けれどもまだ、1日のブランクは埋め切れていない。
浅ましいと思いながらも、ユウヤはいった。
「もう少し、きみの血を吸ってもいい?」
祥太はくすぐったそうに笑って、いいよ、と、こたえた。
屈託のない、眩しいような笑みだった。
ユウヤは祥太の顔に唇を近づけて――気がついたら唇を重ね合わせていた。


かなりの貧血で緩慢になった足取りは、親に気づかれるほどだった。
「ショウ、疲れてるみたいだよ。早く寝たら」
気づかう母親がかけてきた声さえ、「憑かれている」って聞こえちゃうほどに。
ユウヤの支配を受け入れることにした少年は、思い切って口火を切った。
「うちのクラスに吸血鬼がいるんだ。ボク、今度から彼に血を吸わせてあげることにしたから」
母親は大きく目を見開いて息子を見、そして張りつめた視線をフッと、意図的にゆるめた。
「学校が開放されるって、そういうことなんだね」
あなたはそれでいいの?と問いかける母親に、ウン、と応えたときの顔つきを見て、
母親はちょっとだけ逡巡し、それから仕方ないかな、という笑みを浮かべて、いった。
「自分で決めたんなら、そうすればいいよ」

もうひとつ、お願いがあるんだけど・・・
祥太はちょっとだけおずおずとした声色になって、母親の顔色を窺った。
なにか出費を伴うおねだりをするとき、この子はいつもこうだから。
そう思いながら促す母親に、祥太はいった。
「うちの学校さ、四月から女子の制服も採用したでしょ?ボクこんどから、女子の制服で登校したいんだ」
ユウヤの彼女になってあげたくて・・・
うつむきながら、新たに自覚した欲求を告げると、母親は「わかった」とだけ、いった。
「父さんには私から、話をしておく」

その週の週末、祥太は母親に伴われて、入学の時制服を作ったお店に、採寸に出かけていった。

受け容れた吸血鬼の感化? 女装教諭、教壇に立つ

2017年04月21日(Fri) 07:51:28

吸血鬼受入れ宣言を出した市内の名門男子校で、このほど女装の教諭が登場し話題となっている。
同校の教諭たちのほとんどが吸血鬼を受け入れ、そのほとんどが夫人ともども吸血行為に応じていることは本誌でも折々報じてきたが、こうした傾向が同行の風紀を崩壊させる作用を持つ一方で、「一種不可思議な解放感(同校高等部3年生)」を生み出しているのもまた、確かなようである。
女装して教壇に立つようになった教諭は、3名同時に登場した。
この3名の教諭は、一時過剰な献血行為による死亡が伝えられたもののほどなく蘇生、帰宅のうえ復職を果たしている。
3名はGW明けから女装して教壇に立つことを予告、学校側はこれを受け容れ、校内の集会で生徒全員に告知された。
予告通り3名の男性教諭は爽やかなワンピース姿で登校、生徒の注目を浴びた。
生徒たちの反応はいちように好意的で、「種々の障害を乗り越えて長年の欲求を果たした先生は、尊敬に値する」「とにかく理屈抜きで、カッコイイ。夢を実現する力をもらえた」「生死の境目を乗り越えたかいがありましたね」(いずれも学園の裏掲示板より転記)と、肯定的な書き込みが目立っている。
3名はいずれも、「吸血に応じる時には、いつも女装している」と回答。吸血鬼と女装との関係は十分に明らかにされていないが、女装教師の誕生が吸血鬼の希望によるものとも、3名が自発的に希望し、学校側に吸血鬼の口添えが伝達されたともいわれている。

「このストッキング、妻とおそろいなんですよ」つややかな光沢を帯びたストッキングの足許を自慢げに披露するのは、谷口都教諭。(校内では女性風に美彌子と改名済み)
自身の血を吸った吸血鬼がストッキング・フェチだったと明かす谷口教諭は、「それがわたしにも伝染ったんです」と明かす。
やがて夫人の奈々枝さんを紹介する仲となり、親密さは一層増したという。
「わたし抜きで妻だけがデートに誘われることもありますが、むしろ誇らしい気分」という美彌子さん。「でも、女装しているときだと、女同士のような嫉妬を感じることも」と、複雑な胸中もかいま見られた。
「男性として勤務したときの習慣を徐々に忘れつつある」というのは、永村涼介教諭。教諭の事務机には教科書や参考書、出席簿などとともに、数々の香水や化粧セットが並ぶ。「女子生徒から最新の口紅を教わることもあるんです。エエ、もちろん校内でお化粧は禁止で、みんな校則は厳守しています。みんないい子ですからね」教諭によると、「学校を出たときの生徒たちのお洒落のセンスは、ここ最近ですごく進歩している」という。受け持ちのクラスの生徒の3割は吸血体験を済ませているというが、センスの向上は彼女たちの存在が大きいらしい。
しかし、ここは男子校のはず――と記者が水を向けると、永村教諭は明るく笑った。「ご存知のうえでわざわざ、お尋ねになるんですね?当校は先月から生徒たちの女装が解禁になりました。女子の制服も正式に採用され、生徒のうちまだ約2~3割ですが、女子の制服で登校するようになりました」放課後の女子率は、さらに高いという。
男性時代の記憶が薄れつつ問いいながらも、その一方で無類の愛妻家と呼ばれる谷口教諭。校内では奥さんの元美さんと似通った名前の「里美」で通しているという。
「勤務を終えると家内を伴って、お邸に伺うんです」と明かすのは、二村祥太教諭。まだお嬢さんが小さい家庭内では、夫婦ともどもの献血は子供の眼の刺激が強すぎると、「儀式」の時には必ず相手方を訪問するという。
相手方は、受け持ちのクラスの男子生徒の家庭。早い段階から吸血鬼化した一家で、二村教諭の血を最初に吸ったのも教え子だったという。
「一種の家庭訪問ですかネ」と、二村教諭はイタズラっぽく笑った。
「彼がわたしの血を吸うときには、いつも女装するようにしています。そのせいか、さいしょのうちは同性のクラスメイトだけに性的関心を示す子だったのが、女性にも関心を向けるようになったんです。女性体験も、このほど済ませました。家内が相手をして満足してもらったのです。先にお父さんが、“お手本”を見せつけてくれましたけどね」
「いまではどうやら、お父さんのほうが家内にご執心で。(笑)時々二人きりでデートしているんですよ。私の化粧の仕方や服装のセンスは家内の伝授です。だから息子さんが家内を放さないときには、わたしがお父さんとデートすることもあります。あっ、ここは書かないでね」
教室では語ることのできない、奥さんを交えた“良好”な関係をたんたんと語ってくれた。
奥さんを教え子やその父親に犯されてしまうのに、悔しくはないの?という記者の問いには、笑って答えなかった。しかし、その表情からは両家の間に流れる空気の穏やかさを感じずにはいられなかった。